「大丈夫か?」

今日何度目かの言葉を口にすると誠人は汗で張り付いた麻琴の前髪をかき分けた。

欲望を放った麻琴はぐったりとして壁に持たれかかったまま呟くように言った。

「……ごめん。俺っ…こんなこと………速川に…」

涙がポロリと溢れた。

「俺がっ…ちゃんとしてれば……こん…な…ことに……ならな…かっ……た…」

誠人に自分の欲望を処理させてしまった自己嫌悪と羞恥が麻琴の心を独占していた。


俺、オトコノコなのに―


「薬のせいだ。川本は何も悪くない。」

そう言って麻琴の頬を撫でる。

その手の温もりに心地よさを感じ麻琴は目を閉じるとまた涙が溢れた。

「大丈夫だ。大丈夫だから。」

誠人は無言で麻琴を優しく抱き寄せると言い聞かせるように言った。

「……………うん。」

麻琴は誠人の袖を控え目に掴んで小さく頷いた。




その腕の中で麻琴はかっこよくて優しくて男らしい誠人に少しでも近付きたいと思った。

それは今朝の時のようなヒーローを思う気持ちと少しだけ違う気がしたが麻琴にはその気持ちが何なのかわからなかった。