小説を読んでいると、音楽が主題になっている事に気づく。あるいは、脇役として出てくる。
どんなシーンにどんな音楽がでてくるのかは作家の腕次第。
ピアノをやっていなかったら、読み飛ばしてしまいそうであるが。
たとえば、モームの『女ごころ』はじつに微妙に移り変わる心模様を描いている作品だが、いうまでもなくリゴレットのオペラが主題であろうか。
それに『雨』という短編では宣教師ディヴィッドソンの夫人が自殺した夫に会いに行こうとして通りを出て死体安置所から聞こえて来たのがラグタイムだった。品のない音楽として描かれ、罪深い女ミス・トムスンが改心するどころか逆に元のあばずれに戻っているという描写に続くシーンに使われている。
宣教師の夫が救おうとしていた女の家に夜に行った後、海岸で自殺体が発見されるまで誰も知らなかったのだ。女は一度改心するかのようにみえ服装も地味になっていたのに、結局それはムダになったようだった。