桜の花が咲き、お花見の頃となった。先月3月27日は「利休忌」ということで、先生は先生同志の集まりでお茶会をされて来たというお話だった。
「お茶会へ行ってきたからというわけではありませんが、今日はお茶席で、お濃茶とお薄の間に”後炭”と言って、お炭を足すお点前がありますが、それをしましょう」
と先生が言われた。
「風炉の場合は、初炭となんら変わりないのですが、炉の場合お香合の運び方が違ってきます」
と言われた。
「じゃぁ、美雨さんからですね」
と声を掛けられ、美雨は袱紗を腰に付けた。
「灰匙ですが、初炭では炭斗に入れて運びますが、後炭では灰器に灰匙を仰向けに置いてその上にお香合を乗せて運びます。まず、炭斗から灰匙とお香合をはすしたものを運び入れて、それから灰匙、お香合を仕組んだ灰器を持ってきます。
もう、仕組んでありますから、それを美雨さんは順番に持って来て下さいね」
と言われた。
美雨は、先生や部員たちに挨拶をして水屋へ入り、棚を見て、先生が言われた炭斗を確認して、それをヒザ前に置いて障子を開け挨拶をして入室した。
そして、炉の右12目ほど空けたところに置いた。次いで、灰匙・香合を仕組んだ灰器を持って入った。
「炉に対して、外向きに斜めに座って、そう背を向けて座って下さい。灰器をヒザ前に置いて、お香合を取り出して灰器の左横に置いて、そう、それから灰匙を上から取って、左手寄せて、右手をスプーン持ちに持ち替えて、灰を整えて下さい。
崩れを直したら、灰匙を灰器に置いて、来た道を戻りますよ。置いたら、右手で灰器を持って、勝手口に置いて下さい、位置はいつもと同じですよ」
「はい、そうしたらお香合を右手で取って、左手のひらに乗せて、炉正面に向いてから、炭斗の下ヘリ中、ヘリから3目下に置いて下さい」
と言われた。
「火箸に掛かった鐶を炭斗の下に出して、羽箒、火箸も炭斗の左に出して並べたら、袱紗さばきをしてお釜のフタを閉めます。閉めたら袱紗は腰に」
と言われ、美雨が袱紗を腰に付けるのを見てから、先生が
「お釜に鐶を付けて、預けます。預けたら、釜敷きを取り出して、左ヒザ横斜め前に置いて下さい」
と言われた。
「はい、釜を炉から出して下さい、重いですから気を付けて」
と言われ、美雨は釜を釜敷きに置いて、鐶を釜に預けた。
「体をお釜正面に回して、お釜の座りはどうですか?良ければ、お棚の右前まで、ズーと移動させて下さい。慌てずに、釜敷きが残されないようにね」
と言われた。
美雨が移動させ、落ち着くのを確認すると、
「はい、鐶を外して、お釜の左に置いて下さい」
と言われた。
「体を炉正面に戻して、羽箒を取って、炉縁・炉壇を拭いて下さい」
と言われ、美雨は一つ一つ呼吸を合わせるようにして動き、苦手の羽箒も掃いた。
「そうね、そんなものね、また練習しましょう」
と先生が言われ、次に移った。
「羽箒を持って体を回してお香合の右へ置いて、正面に戻って火箸を取ったら右ひざ横で突いて、持ち替えて、はい、下火を胴炭よりに上に集めて下さい」
と言われ、先生が指差すところへ小さくなった炭を集めた。もちろん練習なので火は着いていない。
「灰を撒きます」
と言われ、美雨は、火箸を炭斗に戻して、体を回して灰器を取って、また回って炉正面に戻り灰器を炉縁右角横へ置いた。
先生は、美雨の傍に座り、美雨の手をガシっとつかみ灰を撒かせた。
灰を撒いたあと、灰器はそのままで、羽箒で炉縁と炉壇と五徳の爪を掃いてお香の横に戻した。
「そうしたら、ここが初炭と違ってきます」
と先生が言われ、皆が注目した。
「初炭では、最後にお香をくべますが、後炭では先にお香をくべます」
と言われた。
香合を取って、左手のひらに乗せて火箸を取って、突いて持ち替えて、握り込んだら香合のフタを開けて、と美雨が進めると、先生が、
「下火の傍に置いて下さい」
と言われた。香をくべて香合のフタを閉め元に戻した。
「そしたら、三本枝の枝炭を灰器に移して、右手の火箸を、左手に握らせます。」
と言われて、さらに、
「ここも後炭ならではですが、胴炭は燃え残っているでしょうから、そのまま使います、炭斗の中の胴炭は使わないので灰匙に預けます。灰器の中の灰匙を仰向けにして、そこへ胴炭を置きます」
と言われたので、美雨は手で胴炭を灰器に避けた。
「炭斗を炉(灰器)に近づけて、炭をついでいきます。ここからは初炭と同じです」
と言われ、先生に炭や入れる場所を指さしで示されるところへ美雨は炭を置いて行き、先生は指で手直しをされた。
もちろん、火は着いていない。
炭を一通り入れ終えると、灰器に預けていた枝炭を火箸で、胴炭は手で炭斗へ戻した。
「火箸を炭斗の中左側へ入れて、炭斗を炉から左へ離して元の位置へ戻します。それから、灰器を持って、ヒザを右にくって、勝手付けに戻して下さい」
と言われて、灰器を勝手口に置いた。
「はい、体を正面に戻して、炉縁を羽箒で掃きます」
と言われ、掃いた。先生が、
「掃き終わったら、羽箒を炭斗に乗せて、お香合を手に取って、待ってて」
と言われるのに合わせて、美雨が動いていると、
「正客さん、お香の拝見のお声を掛けて下さい」
と続けて言われて、正客が、
「お香合の拝見をお願いいたします」
と言った。
「ここも、後炭ならではですが、初炭と同じお香合だと、先ほどと同じものでございますのでご辞退させて頂きます、と言って炭斗に戻します。違うものなら出します。今日は、同じなのでしまって下さい」
と言われた。
「そうしたら、灰器を持って出て下さい。入るときには、薬缶を仕組んでいますから、それを持って来て下さい」
と先生に言われた。
美雨は水屋で一息吐いたけれど、もちろんこれで終わりではない。