九龍妖魔学園紀 | Trashy Discovery

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Going my wayなゲームプレイ日記&感想がメインです。

九龍妖魔学園紀・再装填では、章の終わりに登場キャラに食べ物系のアイテムを渡すことが出来ます。その中でアロマカレーなんて物がある訳ですが、皆守にそれを渡すと極上の微笑で喜んでくれます。「ホントにそれ貰って嬉しいのか?皆守クン」と疑問に思いこんな物を書いた次第です。



九龍妖魔学園紀SS


眠りにつく前の一時、俺はいつも通りアロマパイプに火を点ける。

ラベンダーの香りがゆっくりと俺の身体を包み、見えない膜を張る。

音が遮断される。

停滞。

過去への郷愁も、未来への渇望も無い。

多分、俺の時間はあの時から止まったままだ。


『バァン!!』

 勢い良くドアが開けられ、静寂が破られる。

「コータロ、起きてる~?コンコン☆」

「ぉい。ノックを口で言ってどうする。ていうか開ける前にやれ」

 大きく溜息をついて言ってやったが、九龍は聞いていない。

「甲太郎にプレゼント持って来たんだ~」

 と、はにかみながらタッパーを差し出す。

「何だ?これ」

「甲太郎の大好きな物だよ。開けてみて」

 開けなくても、カレー臭が充満している。まぁ、とりあえず開けてやるか。

「うぅっ」

 耐え切れずに、高速で蓋を閉める。開ける前はカレーの臭いしかしなかったのに、何か別の異臭が絡み合っている。

「何だよぉ。その態度」

「こっちのセリフだ!ていうか何でカレーが紫なんだよ!!」

 九龍は得意げに腰に手を当て、

「アロマカレーだもん。甲太郎の大好きなカレーとラベンダー、夢のコラボレーション!って痛ぇ!!」

 とりあえず、九龍の頭に軽く回し蹴りをくらわす。

「バカか。変なコラボさせてんじゃねぇよ」

「甲太郎の為に、一所懸命作ったんだよぉ。最近元気無いからさ~」

 一所懸命のベクトルが曲がっている気がする・・・・

「各種スパイスにあらゆる漢方薬を加えたこだわりのカレー。滋養強壮、食欲不振にバッチリ効果あるんだよん。ラベンダーは温室から盗ん・・じゃなくて摘みたてをギュッと絞った新鮮そのもののエキスだし、隠し味は俺の愛だし☆」

 隠し味云々はツッコむ気にもならないが、この臭いとこの色は・・・

「それはどうでもいいが、九龍、お前それ味見したのか?」

 九龍は初めて聞く単語だとでも言う様に、小首を傾げる。

「味見?」

「食いモンである以上、味は最重要課題だろうが」

「でも、せっかく甲太郎の為に一所懸命作ったのに~」

 九龍は悲しそうに顔を伏せ、時折ちらちらと俺を見る。

「ったく・・・。とりあえず、朱堂に食わしてみれば?それ」

 俺は、入り口側に寄り、素早くドアを開けた。


「ぐへっ!!」

 奇声を発し、朱堂が顔面から倒れこむ。こいつの気配は分かり易過ぎ。

「あれ?スドリン」

「違うのよ!ダーリン!これは、たまたま通りかかっただけなの!決して盗み聞きしようとした訳じゃないの!信じて!!」

 そう叫ぶ朱堂の右耳は、色が変わっていた。よほど強くドアに押し付けていたらしい。

「ふぅん?ま、いいや☆スドリンこれ食べてみる?」

 九龍はタッパーの蓋を開け、朱堂の顔面にアロマカレーを突き出す。

「これは・・・・・・・・・」

 流石の朱堂も及び腰になっているようだ。

「やっぱり、イヤ?」

 九龍は悲しげに目を伏せる。

「そ・・・そんな事無いわ!!ダーリンの作った物ですもの!!」

 朱堂は鼻息を荒くすると、俺を睨みつけた。

「勝負よ!!皆守甲太郎!!ダーリンへの愛、格の違いを見せてあげるわ!!」

「勝負になんねーよ。お前の圧勝だ」

 朱堂は、更に鼻息を荒げ、タッパーから直接カレーをすすり上げる。

「ぐぶふぉぉ~~!!!」

 吐き出しはしないものの、朱堂の顔はみるみるドス黒くなっていく。

「おぃ。朱堂、大丈夫か?」

 俺の部屋で死なれたら堪らない。


『グゥゥ~ギュルルルル~~』


 朱堂の腹からおぞましい音が鳴り響く。

「ぐぅおおおおお~!!」

 朱堂は、両腕で腹を押さえ前屈みになりながら、ウツロな目で俺を睨みつけた。

 怖ぇよ・・・。

「覚えてらっしゃぃ・・皆守甲太郎・・・。この借りは・・・必ず・・返・・すわ・・」

『ギュルルルルゥ』

 朱堂は、前屈みのまま去っていった。


「何で俺なんだよ・・・」

 力が抜けた。

 九龍を見ると、顎に手を当てて何やら考え込んでいた。

「う~ん。課題はやっぱり味か~」

「いや、そういう問題じゃ無いだろ。あれは」

 九龍は俺に向かって微笑むと、

「今度はちゃんと味も考えるから、そしたら食べてね」

「いらん。やめろ。迷惑だ」

「そんな、三段構えで拒否ら無くても・・・」

 口を尖らせ、ぶぅ~っとむくれた九龍を見ると、知らず笑いが込み上げてきた。


俺の周囲の空気が前に流れた気がした。時が動いている。

「悪くないかもな・・」

 そう呟いていた。


Fin