2025年11月に92歳で死去した仲代達矢を偲んで、その最後の映像作品(2020年1月公開。藤澤周平原作、杉田成道監督)を、ビデオで観た。87歳の時の作品である。原作も読んだ(全集1巻)。
藤沢の重厚な自然描写が、映像では目が覚めるような美として、また荒々しい風雨として転置されている。
勇壮な磐梯山が、一人の重要人物のように何度も登場し、作品の風格を定めている。
股旅ものであり、それ自体どうでも良いものだが、真のテーマは、老いと、人生における悔いの収束の仕方、死に様である。
藤沢作品のあらゆる作品にある暗さが、ここにもしっかりと映像化されている。たまらないほどの暗さの中で、一条の光を心に染み込ませる物語である。
仲代の芝居は、くさみがなく爽やかで、役者の透徹した優しさが作品にドバーッと流入している。
藤沢が45歳で、この作品のような境地に立っていたことに感嘆するとともに、90歳になろうとする仲代が、藤沢の死生観を豊かに受け入れ、それを輝かせている。
常盤貴子も巧い、木枯し紋次郎を思い起こさせる中村惇夫の起用もベストチョイスである。主人公の若い時代を北村一輝が演ずる。
秀作と言えるであろう。
(斎藤浩)