梅原猛さんを悼む

テーマ:

 梅原さんが1月12日亡くなった。93歳だった。

 

 私は若い頃には、梅原さんという理論家をえらく右寄りのイデオローグとして警戒していた。

しかし、90年代以降、梅原さんが、有事法制に反対し、諫早干拓に反対し、イラク戦争勃発時、日本ペンクラブ会長として開戦に賛成した日本政府を激しく批判し、教育基本法改悪に反対し、「九条の会」の共同呼びかけ人に、井上ひさし、大江健三郎、小田実、奥平康弘、加藤周一、澤地久枝、鶴見俊輔、三木睦子各氏とともになったことなどから、すっかり好きになっていた。

 

 私が梅原さんの著作で最後に読んだのは、「歓喜する円空」(新潮社、2006年)。江戸時代の仏師・円空。梅原さんは、この本で、仏像の種類・格式・配置、神々との関係、円空の生涯、彫った神仏像(ほとんどが木彫であり、木に神が宿るとの思想)の全容と地域分布、作品の変化(白山信仰に基づく真面目な神仏像から歓喜、大笑しあるいはエロスを感じさせる彫刻へ)、その背景にある思想の変化などを教えてくれた。これらすべてにおいて、梅原さんの学識が動員されている。写真も豊富で図録として楽しんでも良い。円空の漫画のような絵と和歌も紹介される。我が国における神仏習合の円空における現れと前衛彫刻とも見まがう作品の面白さに最も感銘を受けた。梅原さんは最後に言っている。日本の神々のすべてが護法神(この像を円空はたくさん彫っている)となって仏法を護るという円空の願いと逆に、明治政府は国家と言う新しい神を作って神仏分離・廃仏毀釈を押し進め、仏と古き神々をも滅ぼした、神仏を滅ぼした祟りを今受けていると。

 

 私はこの本を持って、2017年の連休に円空仏を訪ねて、岐阜と愛知を車でひとり旅した。旅館で温泉に浸かりながら、この本を読んだ。梅原さんと一緒に旅をしたような気がしている。

 

 安らかに眠られたい。        

 

 斎藤浩