おにぎり山ふもとの畑日記(31)

 

 毎年、8月の終わり頃、なぜか1日だけ、たくさんのトンボが、家の果樹園を飛び交う。 トンボは群れをなしていても、皆そろって同じ方向に飛ぶようなことはない。それぞれが、思い思いに、ゆったりと宙を漂う。

 

 解き放たれた喜びを、堪能するかのように飛び交うトンボたちは、残念ながら、翌日になると、ほとんどいなくなってしまう。鳥たちの格好のえさとなっているのかもしれない。

 

 思えば、細くて長いトンボの羽根は、映画『紅の豚』のポルコ・ロッソが乗る飛行艇の翼に似ている。「ひとたび、宙に浮けば、粘りのある良い翼だ」という台詞があったけれど、その細身の翼は、すぐれたパイロットでないと乗りこなせないもので、時流からはかけ離れた設計とされていた。

 

 優美なトンボの姿もまた、生存競争のなかで消えていってしまうのか!

がんばれ、トンボ。

 

夏空を泳ぐがごとく舞うトンボ