街角ウォッチング「チェロケース」。

目立ちたがり屋のケースは、人混みの中での、とあるステージの予告編。
その中で眠る音は、知らない街角での出番へと向かう。

派手派手しい赤、うるさい程のステッカー、はみ出る大きさ、ハードなカーボンケースだろうか、とにかく周りの目を引くことは確かだ。

しかしこれにはどうもいちいち理由がある。

ステッカーが大量に貼られているのは、クラシック系の大型楽器ケースとしてもよく見られる文化らしく、音大の学生、アマチュアオーケストラ、プロ奏者は旅や演奏旅行が多く、フェスティバル、コンクール、音楽祭などの「参加証」としてステッカーを貼る、いわば ミュージシャン版のトランク・ステッカーカルチャーだそうだ。

又、空港、ホール、リハ室などで多数のチェロが並ぶと、黒か白のケースが多くて見分けにくいので、ステッカーや赤は 識別性を高める実用目的 も兼ねている。

そもそもチェロケースは高価で長く使うもので、自分の楽器・音楽観・好みを反映する「パーソナルキャンバス」として扱っているのだ。
チェロは個人所有であることが多く、楽器価値も数百万円〜数千万円に及ぶため、基本ほとんど自分で運ぶそう。
だから飛行機に乗る場合、チェロは「エクストラシート(追加座席購入)」が一般的だとか。

ギター一つ運ぶのも面倒くさいド素人とは、音楽に対するその才能や愛情や姿勢が、そもそも違うのである。
チェリスト憧れる、弾いてみたい。
(通りすがりのワンシーンを、ここまで引っ張れるのもある種才能ということにしておこう、傍迷惑ともいうが…)