私たち産業動物獣医師が担っているもの | サンドーのブログ 

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鹿大産業動物獣医学研究室OBのブログ
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私たち産業動物獣医師が担っているもの

 

沢山あると思いますが、治療に関して言えば

小治療、中治療、大治療 この三本立てで行いたい、と常々思っています。

 

小治療:個体診療

中治療:群疾病対策

大治療:発表や論文作成など

 

小治療:個体診療を馬鹿にする人もいますが、これは獣医師としての基本だと思いますし、命に関わる仕事である以上、一つの命を疎かにする事は出来ません。また、個体診療は農場との信頼関係構築であったり、その農場での傾向を掴むための調査行為にもなるため、個体の治療は真剣に、そして何故だろう?を忘れずに行う事が重要だと考えます。

 

中治療:個体診療に傾倒するあまり、毎日同じ病気で困っている農場に対して、根本の原因を探るという事は忘れてはいけないと思います。個体診療と同時に、その農場の疾病発生傾向を掴み、時には個体診療データを利用し、時には繁殖検診や乳検のデータを利用して、その農場全体の利益を上げて行くというのが中治療になるかと思います。

 

大治療:上記の治療は1人の力で成せるのには限界があります。その点、私たちはチームプレーで仲間も沢山いますし、次々に入社してくれる若い獣医さん達に代々技術の引き継ぎが行われます。もちろん、他社も含めてオープンな姿勢で日本全体に技術を広めて利益を共有する、そういった作業が大治療になると思います。それは、良かったという知見をまとめて発表したり、論文を書いたりです。

一つ勘違いしてはいけないのは、自分が有名になったり、名誉を得るために発表や研究をするという事では無いという点です。

今年ご逝去された我が母校、鹿児島大学の英雄、稲盛和夫さんの名言の一つに

「動機善なりや、私心なかりしか」 という言葉がありますが研究についても周りの協力を得て続けるにはこれが必要だと思います。

 

以前、3学会で発表し、いつか形にしたいと思っていた論文がついに出来上がりました。先輩の方々と、実際に理解してもらうためのディベートを重ね、10年もの歳月をかけて世に出ました。少しでも皆様の日々の診療に役立つ事を願って。