🍀偶然だね
こんな日もあるんだな。
僕は帰りの名鉄電車の中で、独り、ほくそ笑んだ。
午前の《すみれ気功の会/熱田神宮前教室》が終わり、帰りの電車、名鉄に乗るためにμプラットに足を踏み入れた時だった。
「先生ー!」
と、一人の女性が僕の目の前、本当に目の前で手を振った。
近所に住んでいらっしゃる生徒さんだった。
一階にあるスーパーに買い物に来られたということで、彼女はスーパーに消えていった。
僕は名鉄に通じる渡り廊下のある二階に行く為にエスカレーターに乗った。
二階には幾つかの店があり僕はその中の一つであるマツキヨに入った。
防腐剤の入っていない目薬を買う為である。
僕は商品棚にあるものはなんとなくは見えていても、個別の商品を探すことは出来ない。
従って、レジのお姉さんに訊くようにしているのだが、その為にレジの列に並んだ時だった。
「あらっ!」
と、後ろに並んだ女性が声を掛けてきた。
「○○です。みちくさの…。」
〔みちくさ〕というのは、去年の2月まで《すみれ気功の会/熱田神宮前教室》を開かせて頂いていたレンタルスペースで、彼女は、言わばオーナーだった人だ。
僕のイメージでは、おかっぱ頭の丸顔の女性だったのに、声を掛けてこられた人は、長い髪でポニーテールに結んだ、割りとほっそりした人だった。
「髪の毛、伸びたんですよ。
ずーっとマスクしてましたしね。」
僕の目が見えないことを知らない彼女は、僕が判らないという顔をしていた為に、そんな言葉を付け加えたのだ。
更に、帰宅した後、赤旗日曜版の集金に来て頂いたYさんに丸々膨らんだレモンを戴いたり、介護じぎょうしょのMさんが、市が発行する被介護者用の手帳を持って来てくれたりと、めったに会わない四人もの人に出会った1日になった。
こんな日もあるんだな。