今回のUFC306は、メキシコ独立記念日を祝して、ラスベガスに新設された巨大エンターテイメントシアター、「スフィア」で開催されました。
スフィアは会場の外壁と内壁がLEDスクリーンとなっていて、通常のナンバーシリーズの制作費200万ドルに対し、10倍以上の予算をかけた演出がされたとの事です。
いわば、VR映像で特殊なゴーグルを付けて360°体感型映像として観れていたものが、スフィアでは全画面LEDスクリーンで映し出される事によって、肉眼で体感できるという仕様になっているわけですね。これからは映画館も徐々にそういう仕様になっていくのかもしれません。
メキシコ独立記念日を祝う大会、Noche UFCだけに、メキシコ出身の選手が多く出場する事もあり、加えてスフィアでの演出費用に多額の予算を掛けている事から、一部のUFCマニアの間では通常のナンバリング大会よりもカードが少し物足りないのでは❓という声もあるようですが、まぁメインイベントの👑🇺🇸ショーン・オマリーVS🇬🇪メラブ・ドヴァレシビリ、このカード一本だけでも武尊VS天心レベルに説得力が大きく、オマリー好きなライトファンも、10連勝中のメラブに勝って欲しい通好みなひねくれたマニアなファンも楽しめる生粋のカードではあるので、まぁ良しとしたいところです。
更にセミでは女子フライ級タイトルマッチとして、👑🇲🇽アレクサ・グラッソに、前王者🇰🇬ヴァレンティーナ・シェフチェンコが3たび挑むトリロジーファイトが行われました。
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⚪️🇲🇽ラウル・ロハスjr VSアオリ・チロン🇨🇳⚫️(3R判定)※バンタム級
1R、ロングレンジからサウスポーに構えて左ミドル、インローを蹴るロハスjrに対し、踏み込んで右ストレートを打ち込みたいアオリチロン。
中盤、ロハスjrがシングルレッグからTDに成功すると、パスガードでサイドポジション→マウントポジションを取ってバックを奪い、そのままバックコントロールしたところでラウンドが終わります。
2R、蹴りを放ちながら時折タックルを仕掛けるロハスjrに対し、タックルに対応するアオリチロン。
途中、近い距離での打ち合いが見られ、右ストレートをクリーンヒットさせたアオリチロンがやや優勢でラウンドを取り返します。
3R、ダブルレッグからTD、更に立ち上がったところへリフトして再度TDを奪ったロハスjr。トップポジョンからパウンドを打ちつつ、コントロールで押さえ込んだところで試合終了。
判定は19歳のロハスjrが勝利。フィニッシュはなりませんでしたが、今の持てる実力をフル稼働させて、勢い任せには頼らず自分の試合運びを堅実に実行した、そんな内容でした。
⚪️🇦🇷エステバン・リボビクスVSダニエル・ゼフーバー🇲🇽⚫️(3R判定)※ライト級
初回からK-1最高😝‼️的な手数の多い打撃戦を繰り広げる両者。
左ジャブを主体に左フック、右ストレート、上下の打ち分けとサウスポー構えの左ミドルで中間距離を組み立てていくゼフーバーに対し、身長、リーチでリボビクスは一歩踏み込んでのワンツースリー、そして対角線の右ローキックをヒットさせてゆくという、まるでK-1😝💓の試合を観ているかのような拮抗した打撃戦となります。
3R、ショートレンジからの右エルボーでダウンを奪ったゼフーバーですが、リボビクスも右のオーバーハンドクロスを効かせてケージ際で追い詰め、左右のコンビネーションで一気に畳み掛けていきます。
被弾してフラフラになりながらも、ボディワークとブロッキングで何とか凌いだゼフーバー。ゼフーバーも左フックをヒットさせ、両者K-1最高😝‼️的な打ち合いで会場が盛り上がったところで判定へ。
競った内容ではありましたが、3Rに右クロスからのコンビネーションでフィニッシュ寸前にまで追い込んでビッグラウンドを作った、エステバン・リボビクスに軍配が上がりました。
⚪️🇧🇷ディエゴ・ロペスVSブライアン・オルテガ🇺🇸⚫️(3R判定)※フェザー級
1R、序盤からキレのある右フック→返しの左フックでダウンを奪ったロペス。
下がるオルテガに対しコンビネーションで一気に畳み掛け、グラウンドに雪崩れ込んで強烈なパウンドを打ち落とし、オルテガの下からの三角もディフェンスしていきますが、下からの蹴り上げをヒットさせたオルテガも何とか猛攻を凌ぎ切り、ロペスも引き込み狙いには応じずスタンドに戻ります。
スタンドでは左右フック系のパンチ、オルテガが前足に重心が掛かったところへの右ローキックをヒットさせて試合を優位に進めてゆくロペス。
2Rは一転して深追いはせず中間距離での打撃戦に徹しましたが、それでも右ハイキックをヒットさせつつラウンドを取り、スタミナの温存にも成功。
3R、フック系のパンチに反応出来ていなかった感のあったオルテガもようやく対応し始め、ジャブやストレート系のパンチをヒットさせる場面が目立ってきましたが、反撃するための決定的なダメージを与えるまでには至らず、逆にロペスは終盤に左フックでダウンを奪い、そのままRNCを狙ってオルテガがこれを外し、最後は両者打ち合ったところで判定へ。
判定は3者がディエゴ・ロペスを支持。
初回にダウンを奪われたオルテガは、長年の激闘の代償もあり、打撃に対する反応が鈍くなっているように見えました。
⚪️👑🇰🇬ヴァレンティーナ・シェフチェンコVSアレクサ・グラッソ🇲🇽⚫️(5R判定)※UFC女子フライ級タイトルマッチ
シェフチェンコはサウスポーに構え、スタンドでは右フックやコンビネーションをヒットさせつつ、グラッソがパンチを打ってきたところへ鮮やかにカウンタータックルでTDを奪い、グラウンドではトップキープに徹していきます。
下になったグラッソも三角腕十字やキムラロックを狙っていったり、4Rにはタックルカウンターのギロチンでマウントポジションを取り、あわやという場面を見せて会場が盛り上がりましたが、シェフチェンコにディフェンスされてしまい、こうなってくるとポイント的にはグラウンドで上を取っていたシェフチェンコ優位の展開に。
今日のシェフチェンコは勝ちに徹していて手堅かった。ヴァレンティーナ・シェフチェンコが3度目の対戦で初のリベンジに成功し、王座奪還を果たしました。
⚪️👑🇬🇪メラブ・ドヴァレシビリVSショーン・オマリー🇺🇸⚫️(5R判定)※UFCバンタム級タイトルマッチ
1R、ワイドスタンスで構え、ロングレンジからサウスポー構えに左ミドル、オーソドックスで左ジャブ、右ボディストレートを伸ばしてゆくオマリー。
メラブも初回から深追いはせず様子を見ながら中盤に先制のTDに成功、オマリーも直ぐに立ち上がりますが、メラブもパンチをヒットさせてからレベルチェンジで2度目のTDに成功し、ギロチンを狙ってオマリーが外し、初回はメラブが取ります。
スタンド打撃は時折ヒットするも距離が遠く、入りが浅いオマリー。メラブは2RにもTDに成功すると、そのままトップキープ+パウンドでコントロールし、オマリーも下から蹴り上げていきますが三角狙いはディフェンスされ、このラウンドもメラブが取ります。
3R、オマリーも中盤から徐々にタックルに対応し始め、ラストには膝蹴りを顎にヒットさせてポイントを取り、4Rには右のカウンターを効かせて反撃の気配もありましたが、プレスを強めてきたメラブが絶妙なタイミングでまたもTDに成功、トップキープとパウンドでオマリーを更に削っていきます。
ポイント的に優位のメラブは、5Rはロングレンジでサークリングし徹底的に打ち合わない姿勢か。ここでもメラブはTDに成功しますが、オマリーも何とか立ち上がり、終盤には前蹴りを鳩尾に効かせてメラブを下がらせ、逆転と行きたいところでしたが、疲れからか畳み掛けも出来ず、反撃もここまで。
判定は3者がメラブ・ドヴァレシビリを支持。新チャンピオンに戴冠しました。
うーん、オマリーファンでK-1ファン😝💓の自分としましては残念な結果に終わってしまいました。
かねてからオマリーのウイークポイントはTDされてからのグラウンドにある、というのは言われてきたわけですが、オマリーがパンチを打つタイミングだったり、パンチをヒットさせた後だったりといった絶妙なタイミングでメラブが上手くTDを決め、試合をコントロールしていった印象でした。
オマリーも割と良くリカバリーはしていましたが、いかんせん打撃の間合いが遠く、ヒットさせても明確なダメージが与えられず、近い距離でカウンターをヒットさせてKOするにしても、メラブのTDとグラウンドを警戒してかタイミング的に実行できなかった部分はあったと思います。
最終5R、オマリーが三日月蹴りを鳩尾にヒットさせた後、効かされたメラブが下がる場面がありましたが、オマリーはポイント的にも後はKOするしか逆転の手段が無かったのですから、あそこは全出力をフル稼働させて一気に畳み掛けるべきでした。
オマリーは負けず嫌いな選手なので、敗戦を糧に再起に期待したいところです。
ああ、、、今年は推しのアデサンヤとオマリーが負けて、コナー・マクレガーの今期の復帰も無くなったみたいですし、まーた格ヲタとしての熱が一つ冷めていった感じだな、って、何だか朝倉キッズみたいな事言ってんな(笑)。
ただオマリーとしても、マクレガーに続くMMA界のスーパースターとなるためには、メラブがいくら強い相手とはいえ、この試合は落としたくはなかった。
やっぱり競技レベルが上がって選手の実力が平均化してくると、華のあるスター選手が「絶対王者」として君臨し続ける事は難しくなっていくわけです。
2010年代中盤にコナー・マクレガーやロンダ・ラウジーがUFCでスーパースターになれたのは、UFCにおけるフェザー級と女子バンタム級という階級自体がまだ創成期だったというのもあったのでしょうし、実力は勿論の事ですが、時代に恵まれた部分はあったかとは思います。
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今回のUFC306は、大画面スクリーンスタジアムであるスフィアで行われたという事もあり、通常のUFCの大会では見られないような凝ったCG演出が行われていました。内壁に映しだされた映像も、メキシコ記念大会にちなんでメキシコの文化や歴史建造物を描いたCGやアニメが会場を彩り、モニター越しにも映像が迫ってくるかのような体感を感じられる作りとなっていました。
我らがタニー😝💓ことサダハルンバ谷川サンが手掛けた、背景をバーチャル映像にした「巌流島バーチャルファイト」なるものがあるようですが、あれを100倍豪華にしたものです(笑)。
試合前のオリジナル映像はテーマとしては統一されていて、ハリウッドのようなCGで迫力がありましたが、反面選手の入場シーンに関しては、旧K-1やPRIDEなど日本国内メジャー団体のような、選手の個性やパーソナリティやお国柄を強調させるような演出は抑え気味になっている印象でした。これでも凄いと言えば凄いですけどね。
ちなみにこれがUFC306の会場で映し出されたCG映像です。
あと、会場に映し出される試合映像も、大画面で映し出されると思いきや、CG映像からTV画面が切り取られたサイズで、通常のアリーナ興行で見られるのと同じ大きさ(と思われる)くらいの画面でした。せっかく内壁が巨大スクリーンになっているのですから、試合映像も全画面で見られたほうが、選手たちの息づかいや飛び散る汗や血がダイレクトで飛び込んできて、観客にとってもより迫力が感じられるんじゃないかとは思うのですが、その辺りは次回に向けての課題ですかね。
まぁ、肝心なのは選手の試合なので、神試合が多く見られて神大会になったらド派手な演出とかは別に関係ないわけですし、演出が試合を喰ってしまうと逆に困ります。
最も、一番贅沢な会場観戦は後楽園ホールのような狭い会場の最前列で、肉眼で選手達の激闘を見届ける、と観戦マニアの方は主張すると思いますが、アリーナ規模の会場ともなると、どうしてもモニター越しでないと選手が何をやってるのか把握できないですからね。グラウンドの攻防になったら尚更です。
ほろ苦さが感じられながらも一応の成功に終わったスフィアでのUFC306。来年も再来年もスフィアで興行を開催しつつ、色々と試行錯誤していって欲しいものです。