K-1 WORLD MAX感想その2(2024.3.20) | 銀玉戦士のアトリエ

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今回も、先月開催された「K-1 WORLD  MAX」についてのエントリーです。

 

前回はリアルタイムで視聴した第2部の70kg級トーナメント開幕戦について語っていきましたが、今回はK-1VSRISEの対抗戦をメインテーマに据えた第1部の試合を後追いで視聴しての全体的な感想であります。

いわゆる日本人ファイター主体の新生K-1保守本流路線のカードが出揃ったラインナップで、旧Kヲタの自分としましてはこれまであまり食指が動かなかったカテゴリーではありますが、とりあえずは主要な試合だけチェックしておきました。

 

 

 

⚪️🇯🇵朝久裕貴VSレミー・パラ🇫🇷⚫️(3R判定)

 

 

⚪️🇯🇵玖村将史VSルカ・チェケッティ🇮🇹⚫️(3R判定)

 

 

現状の新生K-1日本人トップ選手に、外国人選手が挑んだ試合。

朝久の相手のレミー・パラは、前回の試合で王者のレオナ・ペタス相手にまさかの金星を上げた選手で、玖村の相手のルカ・チェケッティは、過去にONE championshipに出場し1勝を上げている選手です。

 

結果的にはレミー、チェケッティ両選手共に判定で敗れてしまいましたが、今まで新生K-1が呼んできた噛ませ外国人選手たちとは違い、ダウンを奪われずやや互角に近い内容で朝久、玖村と渡り合っていました。

一応K-1は1つのラウンドがダウン無しで僅差の内容だった場合、10-10のポイントを付ける形式となっているので、試合を見てみるとドローという見方になってもおかしくはない内容ではありました。

ただラウンドマストシステムで採点した場合だと若干のダメージと有効打の差で朝久、玖村の日本人選手側のほうが上回っていたかな❓という内容ではあったので、新生お得意の日本人贔屓判定も多少はあれど、あのジャッジは許容の範囲内かなぁとは思っております。

 

新生K-1が旗揚げされた10年前くらいは、キックボクシングの65kg級以下は日本とタイだけが突出して強い選手が集まっていて、逆に中量級以上の階級とは違ってヨーロッパや北米、南米地区では強い選手が出てきていませんでしたが、現在ONE  championshipのキックボクシング部門2階級制覇王者である🇬🇧ジョナサン・ハガティを筆頭に、近年は軽量級キックボクシングの舞台においても、日本人やタイ人のトップ選手と互角に渡り合えるヨーロッパの選手がぼちぼちと出てきています。

 

日本の軽量級キックボクシングにおいては、「対世界」の指標となる強豪選手が実質タイ人しか居なかったので、その辺りが中量級以上のキックボクシングや、ワールドワイドに普及したMMAと違って、「世界」のスケール感に欠けていた印象ではあったのですが、今回のレミーやチェケッティの試合を見ると、これからは軽量級キックボクシングにおいても様々な国籍のファイターが日本人トップ選手と互角以上に渡り合う未来になっていくだろうと思っております。

 

ただ一つ懸念されるのは、朝久と戦ったレミー・パラは現在23歳で、まだまだ伸び代のある選手ではあるのですが、レオナ→朝久と比較的ハードなマッチメイクを組んでいて、打たれ強さがあるが故にダメージの蓄積が心配されるところです。

まぁK-1自体も、3分3Rの短時間で決着を付けなければいけないルールなので、いわゆる様子見や牽制も兼ねた「休む」時間帯というものが殆どなく、初回からフルスロットルで行くような選手が多いので、興行的な事情を鑑みてもどうしても打ち合い重視で行かなければいけないわけですが、太く長く現役を続けていきたいのであればオフェンスだけでなくディフェンスも磨いておく事が必要ではありますね。

あとは、全ての格闘技団体に言える事ですが、KO負けしたりとか激しい試合をした選手にショートノーティスで試合のオファーを出すのだけは辞めて貰いたいものです。

 

 

 

 

⚪️🇯🇵宇佐美秀メイソンVS白須康仁🇯🇵⚫️(1RKO)

 

 

 

今回のK-1MAXで「魔裟斗が認めた本物の逸材」と煽られていたのが、1RKO勝利を上げた宇佐美秀メイソンという選手です。

ちなみにあのHIROYAも(ブレイキンダウンのほうではなく旧K-1甲子園のほうね。いつぞやの大晦日RIZINで、シバターのバックダンサーで踊ってた人)、高校時代は「魔裟斗が認めた天才」と称されていて、結局プロではキャッチフレーズ程には大きく大成しなかったわけですが、魔裟斗が認めた逸材って果たしてどれ程のステータスなのでしょうか。

 

一応試合を観てみると、身体能力が高く攻撃にキレとスピードがあり、特にサウスポースタイルから繰り出される右ボディ、ダウンを奪った左ストレートと飛び込みワンツーには目を見張ります。

通常は中距離で右ジャブや前蹴り、ローキックを主体に攻撃を組み立てて、隙あらば一気にコンビネーションで畳み掛けていく倒しっぷりの良さがあります。確かに魔裟斗が太鼓判を押すのも頷けます。

 

ただこの選手がこれから重点的に磨いていかなければいけないのは、さっきの繰り返しになってしまいますがオフェンスよりもむしろディフェンスです。

彼が主戦場として戦っていく70kg級は、65kg級以下のキックボクシング界と違い、世界的に選手層が突出して分厚い階級である事は、今回のK-1MAX70kg級トーナメントで日本人選手が全滅したという結果や、ONE  championshipキックボクシング部門のトップ選手の面々や、THE MATCHで野扖正明を破った海人を完封したGLORYライト級王者🇲🇦ティジャニー・ベスタティの強さを見ても分かる通り、化け物揃いの階級であると言えます。

ちょっと攻撃力があって倒しっぷりがあるからと言ってそれが世界レベルで簡単に通用するような階級ではありません。

そういえば昔、70kg級でオクスリまで使って攻撃力に全振りした木村フィリップミノルさんという選手が居ましたが、RIZINのブアカーオ戦で弱点のボディを効かされてKO負けを喰らったようで、かつて新生K-1旗揚げ当初は武尊との二枚看板としてスター候補生の一人でもあったフィリップさんの二の舞にならないよう、段階を踏んだマッチメイクで大切に育てて欲しいです。

 

 

 

 

 

⚪️🇯🇵軍司泰斗VS門口佳佑🇯🇵⚫️(延長判定)

 

⚪️🇯🇵兼田将暉VS戸井田大輝🇯🇵⚫️(2RKO)

 

 

 

K-1とRISEの対抗戦です。

この2試合だけフルで観て、あとは結果だけチェックしました。

 

というわけでTwitterを辞めてしまった自分としましては、他の試合の詳細な内容に関しては「令和のK-1心中」ことジャンクさんのブログでチェック。

するとどうも微妙な判定の試合が多かったようで、RISEの伊藤代表も言っていましたがその辺の違和感が例の「対抗戦はしばらくお預け」発言に繋がっていったのかもしれませんね。

まぁK-1採点における10-10と10-9にする線引きって未だに曖昧な部分がある上に、勘繰りたくなるような採点もたまにあるので、仕方がないところではあるのですが。

 

Twitterでは一部の新生信者とRISE信者がイキり散らしてはヒートアップしていたようですが、そもそも旧Kヲタの自分からしてみたら、かつては旧K-1MAX日本トーナメントの一枠に過ぎなかったRISEと「対抗戦」で張り合うまでにK-1は落ちぶれてしまったのか、という認識しか無いので、RISEとの対抗戦はいまいちピンと来ないわけです。

K-1ってこんなにスケールの小さい枠の中で盛り上がっていた団体だったっけ❓と、ついつい老害発言をしてしまいましたが、新生ファンとのジェネレーションギャップの溝が深くなってしまうのも致し方ないところです。

 

「THE MATCH」の対抗戦ではRISE側が勝ち越していましたが、今回はK-1側がRISEに出向いた試合も含めて、K-1勢が勝ち越したみたいですし、とりあえずリベンジは果たしたという事で、今後はトーナメントとかのスポット参戦はありにせよ、RISEとの対抗戦を頻発して行う必要はもう無いかと思います。

それよりも原点に立ち返って、タイトル戦線を回していってKrushから上がってきた選手をタイトルマッチにどんどん挑戦させていくという、新生K-1が本来掲げていたコンセプトに戻していったほうが、下から這い上がってくるKrushやアマチュアK-1の選手たちにとっても良い循環になるでしょう。

今回はK-1側が勝ち越しましたが、マッチメイク次第ではRISE側が勝ち越す結果にもなっていたでしょうし、どっちの団体が上とか下とかではなく結局はマッチメイクの相性次第で対抗戦の結果なんていくらでも変わる、ただそれだけの話なんですよ(笑)。

 

K-1もRISEも最近は良い外国人選手を呼んでくるようになりましたし、わざわざ日本人同士のチャンピオンクラスで対抗戦を行う必要はもう無いと思います。

 

 

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

 

 

 

1ヶ月前のニュースになってしまいましたが、野扖正明がK-1を離脱、フリーエージェントとなりました。

野扖に関しては以前から「強い外国人選手と戦いたい」と言っていて、チンギス・アラゾフやマラット・グレゴリアンのような70kg級の強豪外国人選手とK-1の舞台で戦えない事に不満を抱くのも自然の流れかとは思うのですが、今回のK-1MAXトーナメントで今の野扖と互角以上の試合をするであろう、ゾーラ・アカピャンやカスペル・ムジンスキーのような、将来的には世界トップクラスのキックボクサーとなるであろう逸材を投入してきたタイミングでK-1を離脱するというのも、何とも皮肉なものです。

 

野扖の移籍先はほぼONE championship一択になるでしょうが、王者のチンギス・アラゾフは次の契約が未定の状態で、もしかしたらONEを離脱するかもしれないという噂があります。

ジョルジオ・ペトロシアン、シッティチャイ、マラット・グレゴリアンを金の力で総獲りし、キックボクシング70kg級に関しては世界最高峰の舞台を築き上げたONE  championshipですが、ここ最近は選手の離脱だったり経営難の噂が立ち込めていて、アラゾフとの交渉が難航しているという事は、今後は以前のようにカネの力で70kg級の強豪選手を囲い込む事は難しくなるだろうな、と予想しております。

 

GLORYも70kg級を休止するという話があるようですし、今回のK-1MAXトーナメントの外国人選手のクオリティを見ると、再びK-1が世界のキックボクシング70kg級の頂点を決める舞台になる可能性は冗談ではなく大いにありえる話だと思っています。

 

それだけに、今回のK-1MAXトーナメントに参戦したら文句なしの日本人エースになっていただろう野扖正明の離脱というのは、実に勿体無い気がしますね。

まぁ、新天地でも頑張って貰いたいものです。

 

 

カルロス政権に変わっての唐突な路線変更に戸惑っている新生K-1保守本流ファンも多いようですが、元々新生K-1を離脱した選手らを観ていると、知名度だったりギャラだったり、世界最強を求めていきたいという部分において、新生K-1が掲げる国内鎖国路線の限界を感じていたというのが主な理由である事は間違いありません。

なので、遅かれ早かれそうならざるを得なかったところはあったでしょう。

国内鎖国路線を堅持したまま後楽園ホール辺りでチマチマと興行を開催していたら、一応は身の丈に合った存続が出来ていたでしょうし、RISEやノックアウト辺りだったらそれでも良いとは思いますが、やはり「K-1」の看板を掲げている以上、団体そのものがローカル化してしまうのでは、もはや「K-1」の名を冠する必要性など無くなります。

以前も言いましたが、旧K-1的な世界観を日本で受け入れられるとするならば、これが最後のチャンスだと思っております。

 

 

 

最後になりましたが、大相撲で横綱として活躍し、引退後はK-1やプロレスのリングで戦ってきた曙さんがお亡くなりになりました。

曙がK-1に転向を表明した当時は、90年代に大相撲で若貴兄弟らと凌ぎを削り合い、横綱にまで登り詰めた逸材が格闘技に転向したら、果たしてどれだけのポテンシャルを発揮できるのか❓という「相撲最強幻想」に、当時ライトな格闘技ファンだった自分は無知ゆえにワクワクさせられました。

2003年の大晦日に行われたボブ・サップ戦は、ミルコ戦で心を折られたボブ・サップの復活劇というストーリーも相まって、レベルはともあれ大衆の注目を集めるには完璧なマッチメイクだったと思います。

この試合は裏番組の紅白歌合戦を超える瞬間最高視聴率45%を記録。

MMAもキックボクシングも階級が細分化されて、競技的な視点で観るのが当たり前になった今の時代では考えられない熱狂だったのでしょうが、あの時代は異種格闘技思想が根強かったからこそ熱くなれた部分があったのかなぁと思っています。

曙さんのその後のK-1の戦績は残念な結果に終わりましたが、お茶の間に格闘技、K-1というジャンルを注目させてくれた立役者の一人でした。

ご冥福をお祈り致します。