フランシス・ガヌーのUFC離脱について考える。 | 銀玉戦士のアトリエ

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今年1月中旬にUFCヘビー級王者、フランシス・ガヌーとUFCとの契約更新が成立せずにガヌーはUFCを離脱、同時にヘビー級王座が返上された件について色々ブログで書いていこうかなぁと思っていたら、あれよあれよと言う間にもう2月になってしまいました。

 

誰しもが思っている事ではありますがSNS・サブスク全盛時代になってからは情報や流行のサイクルがとにかく速く感じます。

Twitterやってた頃は特に顕著でしたが、格ヲタや選手界隈で炎上騒ぎが度々起きたりすると火の粉が一気にブワっと上がって沢山のネットイナゴ達がそこに群がるわけですが、沈静化して半月もすればみんなその事について忘れていたりします。

こういう風潮だからこそ逆に数多の不祥事もスルーできて突っ走れちゃうのかなぁとも思うわけですが。

 

それはさておき、ガヌー離脱後のその間にもブラジルで開催されたUFC283が神大会に終わりましたし、ライトヘビー級新王者のジャマール・ヒルやフライ級新王者のブランドン・モレノについて色々調べたりして記事をアップしていたら既に10日が経過してしまいました。ジョゼ・アルドのUFC殿堂入りの発表や、マウリシオ・ショーグン、グローバー・テイシェイラの現役引退、コナー・マクレガーが次回のジ・アルティメットファイターのコーチ役に内定、そしてアレックス・ペレイラVSイスラエル・アデサンヤのリマッチやマックス・ホロウェイVSアーノルド・アレン、更にはジェラルド・マーシャートVSジョー・パイファーといった激シブカードまで発表された上に、2月3月とPPV大会含め楽しみなカードが目白押しであります。

 

UFCはほぼ毎週のように大会が開催されるわけですから、ここまでサイクルが速いとつい半月前の出来事だったガヌーのUFC離脱に関しても、既にファンの中では過去のものとして処理されているように感じます。

それに代わるカードとして用意されたジョン・ジョーンズVSシリル・ガーヌによるUFCヘビー級王座決定戦のマッチアップも、マニアックな観点での勝負論的に面白い好カードではありますし、やはりこう言っては何だけどUFCの選手層の分厚さからして、例えフランシス・ガヌーが離脱したところで運営的にそこまで痛手ではないな、むしろ問題はあのビンタ大会のゴリ押しだろうな、と思ってしまうわけです。

 

 

この手のギャラの交渉問題になるといつも選手側が正義で、ギャラを渋るプロモーター側は金儲けの事しか考えない悪の組織だ‼️と単純な二元論で捉えてしまうような意見ばかりが目立ってしまっていて、ぶっちゃけそれも選手や団体の都合によりけりでケースバイケースになってしまうわけですけど、ガヌーの場合だとそもそも日本円にして10億円以上のギャラを蹴った挙げ句、UFCの所属全選手のスポンサーの権利獲得とか医療保険の加入とか、運営に直接関わるような事を契約交渉の場で言う事かよ‼️って話ですし、本気でそれをやりたいのであればファイターではなくUFCの社員になって「ビジネスマン」として内部から変えていくしか方法は無いんじゃないかなと思います。

正直UFC側からしてみたらここまで金銭面で譲歩したのに更に運営の部分にまで要求してくるんじゃもうお手上げだよ‼️後は好きにしろよ‼️って感じですね。

 

今回のエントリーではフランシス・ガヌーのUFC離脱の内幕と、UFCの現在のファイトマネー事情について、格ヲタ歴20年のワタクシがゼロ年代格闘技バブル期の隆盛とその後の凋落の時期を生き抜いた事で培われたフォースの力と(←どこかで聞いたフレーズだ)、旧K-1ファン時代に理不尽な谷川マッチメイクに鍛えられた事でいつの間にか使えるようになっていた谷川黒魔術を駆使して色々と考察していこうかなと思っています。

 

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まず、UFC側はフランシス・ガヌーに、ブロック・レスナーを越えるUFCヘビー級史上最高の額である800万ドル(10億円)のギャラを提示したそうですが、これはUFC側からしてみたら相当にガヌー側に譲歩した額のように思えます。

 

前回のガーヌ戦でのタイトルマッチのギャラが基本給のみで約60万ドル(8000万円)。これにPPVボーナス等を加算すると何だかんだで2億円近くは稼いだ計算にはなりますが、それでもUFCという巨大組織のヘビー級チャンピオンが受け取るファイトマネーとしてはちょっと少ないかな?という額のように思えます。

 

その理由としてはガヌーのマネージメント会社が、UFCの親会社であるWME-IMGとライバル関係にあって、そういうしがらみもあって思うような契約交渉が出来ない、という経緯があったようですが、今回の契約交渉を迎えるに当たってガヌーは元のマネージメント会社を切って、新しいマネージメント会社を迎えて契約交渉に臨んだそうです。

 

その結果、UFC側は手の平をひっくり返したかのように高い契約金の額をガヌー側に提示したわけです。

とはいえ、800万ドルとは自分も驚きました。逆に査定額としてはかなり多い額なのでは?と思います。

 

 

UFCに限らず、ありとあらゆるメジャー格闘技団体の選手のギャラの査定額は大体

 

①実力と実績

②PPV売上げ、視聴率、動画再生数、集客度等で測られる人気・知名度

③地域(リージョン)における市場貢献度

 

で決まるわけです。

そして他のプロスポーツとは違って理不尽な事に、大体は①よりも②と③の大きさによって貰えるギャラの額もその分多くなるというのが、ファイトビジネスの特徴でもあります。

 

例えばK-1、MMAルールの通算成績合わせて1勝13敗、唯一の白星が角田信朗サン戦での勝利だけだったという大相撲第64代横綱、曙サンのK-1時代の1試合当たりのギャラは最高1億だか2億だかという話でしたが、やはりそれは元横綱としての圧倒的な知名度と、大晦日のサップ戦で瞬間最高視聴率45%を叩き出した貢献度があったからこその査定額なんだと思います。

 

他にもミクルとか俺😝たちの田中さん😝💖とか、この手のケースでは色んな選手の名前が思い浮かぶわけですが、こういう構造だからこそ実力は二の次でまずは目立ってナンボの選手ばかりが出てくるんだろうな、とも思います。

 

UFCの場合だとハビブ・ヌルマゴメドフの1試合600万ドルが最高額で、次いでコナー・マクレガーが1試合500万ドルのファイトマネーを貰っています。

これに各種ボーナスやスポンサー料を含めると更に稼いでいるわけです。

 

とはいえハビブは元UFCライト級王者、マクレガーは元UFC2階級制覇王者と、①の要素に当たる「実力と実績」という部分に関してちゃんと結果を残している選手なのですが、それだけだとここまでのファイトマネーは貰えないわけで、ハビブの場合だと400万人近いUFCロシア公式インスタフォロワー数を獲得した「市場貢献」、マクレガーの場合は言わずと知れた莫大なPPV売上げがあってこそのファイトマネーの査定額なんですね。

 

以上を踏まえた上で、じゃあガヌーがメインイベントの大会でどれだけPPVを売上げたのか、という事で昨年のUFCのPPV売上げのベスト4を見てみると・・・❓

 

 

1位と2位が(元)UFCミドル級王者イスラエル・アデサンヤがタイトルマッチを行った大会が同率で60万件、3位がチャールズ・オリベイラVSジャスティン・ゲイジーで40万件、4位がレオン・エドワーズVSカマル・ウスマンで36万件で、フランシス・ガヌーVSシリル・ガーヌが行われたUFC270はランキング入りしていません。

 

噂ではガヌーVSガーヌのUFC270のPPV売上げは30万件くらいだったみたいですが、悪くはない数字とはいえ、やはりマクレガークラスのPPVキングと比較するとかなり物足りない数字ではあります。

 

これはガヌーが不人気王者だと言うよりかは、チャンピオンとしてファンの記憶に残るような試合をまだ経験していないというのも原因の一つにあるのかなぁと思っています。

確かにガヌーのKOシーンは凄いんですけど、1Rであっさりと決まってしまう試合が多いので、余韻が残る前にKOしちゃうような試合が多いのもあります。

あとは何だかんだUFCではまだ「地金」を剥がすような壮絶な試合をやっていないので、それが期待出来る相手がヘビー級に転向したジョン・ジョーンズなのでは、と言われています。

むしろフランシス・ガヌーという選手のUFCでのスター街道を創り上げていくのはこれからなのでは❓と自分でも思っていたので、それを見越しての800万ドルの査定額だったはずなんでしょうけどね。。。

 

 

 

 

UFCではギャラアップのために団体離脱を仄めかしながらゴネる選手も度々居て、ジョン・ジョーンズやホルヘ・マスヴィダルもちょっと前にはそんな事がありましたが、今ではUFCと納得の行く交渉が出来たのかそういう不満も言わなくなりました。

マスヴィダルに至っては自身のプロモーション団体「iKON FC」がUFCファイトパスで生中継されるようになったので、関係は良好なのでしょう。

日本の格闘家だと表立ってそういう事を言う選手はまず見当たらないですし、もしかしたら見えない所ではプロモーター側とそういうギリギリの交渉をやっているのかもしれませんが、ちょっとこれは海外独自の価値観とも言うべきですし、選手の団体離脱表明は必ずしも額面通りには受け取れないケースもあります。

 

そもそもUFCファイターのギャラって世界中の全格闘技プロモーション(ボクシング除く)を含めてトップクラスの額ですし、そりゃあチャンピオンクラスと新人選手クラスで待遇面の差はあるものの、10年前と比較してもかなり良くなってると思うんですよね。

 

 

これは先月行われたUFC283のメインカードに出場した選手の、ボーナス込みでのファイトマネーの総額です。

注目すべきはフライ級タイトルマッチを戦ったデイブソン・フィゲレーロとブランドン・モレノのファイトマネーで、フィゲレーロは120万ドル、モレノは83万ドルと、いずれも日本円に換算して1億円超えの額です。

恐らくPPVボーナスが半分以上を占めているのでしょうが、ちょっと前までは不人気階級と言われ、階級廃止が検討されていたUFCフライ級がチャンピオンクラスでここまで稼げるようになったというのは、他のフライ級ファイター達にとっても明るい希望と言えるでしょう。

デメトリアス・ジョンソンもここまでファイトマネーを貰っていたらもしかしたらUFCを離脱しなかったかもしれません。

 

こちらは昨年12月に行われたUFCファイトナイト大会の主要選手のファイトマネー。

UFC歴12年ながらも、常時ランキングに入れるか入れないか位の定位置にいるベテランのアレックス・カサレスはジュリアン・エローサをKOで下して21万ドル(約2700万円)を稼いでいます。

ボーナス込みでありますが、他のメジャープロモーションに移籍したらカサレスクラスの選手にここまでの額は出せないと思うので、ある意味美味しいポジションと言えるかもしれません。

UFCは近年タイトル戦線から落ちたようなベテランがファイトスタイルが噛み合う選手と試合する、いわゆるレジェンドファイト路線の選手もチラホラと出てきていますが、それなりにお金が稼げてファンの注目を集めて試合で喜ばせる事が出来るという事で、下手にキャリア晩年を他団体で過ごすよりも良い場合もあったりします。

 

最後は昨年10月に行われたUFC280の主要選手のボーナス込みでのファイトマネー。

現ライト級王者イスラム・マカチェフが110万ドル、元王者チャールズ・オリベイラが145万ドル。

ショーン・オマリーは王者になっていないのに46万ドル‼️ベラル・モハメッドも何気に36万ドルも貰っています。

ただアメリカ社会は日本と違って超インフレ社会になっていますし、そういう経緯もあって選手のファイトマネーも必然的に上げざるを得ない感じになっていますし、生活レベルによってはこれだけ貰っていてもカツカツなのかもしれません。

ぱんちゃん容疑者なんか家賃15万くらいのアパートに住んで、パチンカスとか美容とかに月100万円もつぎ込んでいたっていうんだから、マクレガーやメイウェザー並に稼いでいるんならともかくぱんちゃん容疑者程度の収入でそんな散財生活してたら金なんてすぐに無くなっちゃうよ‼️だから投資詐欺に騙されて偽のサインなんか書いちゃうんだよ‼️って話なんですけどね(笑)。

 

結局、ひろゆきみたいにお金稼いでも生活レベルは上げない‼️ってスタンスの生き方が一番賢いんだと思います。人生においてはマイホームの購入とか子育てとか親の介護とか、どうしても大金を出さなければいけない局面が出てきますからね。いざって時のためにお金は貯金しておくのが無難です。

 

 

 

こうして見てみるとトップはおろか中堅クラスの選手でもそれなりに稼げるのがUFCファイター。

ジョルジュ・サンピエールやアンデウソン・シウバが全盛の10年前だと、彼らの基本ファイトマネーも50万ドルくらいだったので、その時代と比較すると今のUFC王者クラスの選手は100万ドル超えのファイトマネーも珍しいものではなくなりました。

ただそれでも、1試合に50億円〜100億円以上のファイトマネーを稼ぎ出すプロボクシングのごくごく一部のスター選手と比較すると、UFCは稼げない舞台だ、ギャラ渋ってるだろ、という批判もあるようですが、600人以上の所属選手と350人以上の従業員を抱えるUFCで、一人の選手に対してそこまでのギャラはまず出せないでしょう。

仮にそれをやってしまったら他の選手も追従して「俺も、俺も」とギャラの大幅アップを要求してくるでしょうし、選手のファイトマネーを大幅に釣り上げてしまうと赤字を垂れ流して経営難に陥りかねない、というのは、過去の格闘技界の歴史が証明しています。

 

https://ameblo.jp/fanroad-gindama/entry-12764104262.html?frm=theme

 

以前のエントリーでも書きましたが、UFCでスターになった選手が更に稼ぎたいのであれば、UFCを飛び出して、自主興行を開催してYouTuberとエキシビジョンマッチやったほうが一番手っ取り早いです(笑)。

 

 

UFCの底辺の選手へのギャラアップに関しては、一応ファイトマネーの最低給は100万円ですし、他団体を見回してみるとベラトールのプレリムの選手の中には10万、20万円のギャラで戦っている選手もザラではないですし(まぁ戦績もそれなりではありますが)、日本のキックボクシングやボクシング興行に出場している選手はチケットを手売りしてそこから雀の涙のようなファイトマネーを得ているのが実情です。

 

前にも言いましたけど、年間140試合を戦うプロ野球選手と違い、格闘家は年間平均して2〜4試合くらいしか試合に出れないので、基本稼げないスポーツではあります。

もちろん団体側には選手にファイトマネーを多く支払ってあげて欲しいですし、ファイトマネー一本でも食っていけるだけの環境を整えてあげて欲しいところですけど、団体を未来永劫存続させていくという義務もありますし、その辺りの兼ね合いは難しいところです。

それこそ、ボクシングみたくごくごく一部のトップ選手のギャラを爆上げするんだったらその分を底辺ファイター達の収入に回すべきなんですけどね。

 

 

 

 

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これはフランシス・ガヌーが1月23日、彼がUFCからの離脱表明をしてから約1週間後にインスタに投稿した画像です。

「On This Day」とありますが、これはUFC270のメインイベントでガヌーがシリル・ガーヌを相手に防衛に成功したのがちょうど1年前だった、という事ですね。

UFCを離脱して、もう未練が無いのであればわざわざこんな投稿をする必要は無いはずなのですが、何か思い残す事があるんでしょうね。

 

奇しくもこの投稿をアップした前日が、ブラジルでUFC283が行われた日でした。

ガヌーがこの大会をTVで見ていたかどうかは分かりませんが、もし見ていたとするのであれば、メインイベントのライトヘビー級王座決定戦の激闘を見て、練習仲間だったブランドン・モレノの王座戴冠劇を見て、最大級のリスペクトを持って讃えられたジョゼ・アルドらブラジルのレジェンド選手達の姿を見て、心に響くものが無かったと言ったら、同業者として彼らと少なからず面識があったであろうファイターとして嘘になります。

 

ガヌーはボクシングに転向してタイソン・フューリーとの対戦を希望しているそうです。

ボクシングファンの側からしてみたらぶっちゃけふざけんなよって話ですよね(笑)。

元々ガヌーにとって勝ち目が限りなく薄い試合とはいえ、ボクシング行くのかMMA続けるのかそれともUFCに戻るのか迷っている中途半端な気持ちで、プロボクシングデビュー戦でいきなりフューリーと対戦したところで結果は見えていますし、フューリーだけでなく全てのヘビー級ボクサー達に対しても失礼な話です。

 

なんか、ガヌーの所属ジムの会長のランディ・クートゥアとか、MMAジャーナリストのアリエル・ヘルワニといった、アンチUFC勢がガヌーに裏でゴニョゴニョ吹き掛けているような感じがしてならないんですけど、どうなんですかねぇ。

 

結局、最終的に自分の進路を決断するのはフランシス・ガヌー本人です。

「迷える巨人」が全てを吹っ切って、再び戦いの螺旋に戻ってくる日を願っています。