WOWOWエキサイトマッチ 感想 | 銀玉戦士のアトリエ

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昨日のUFCではメインイベントでヤイール・ロドリゲスVSブライアン・オルテガが行われましたが、アンダーカードで行われたマット・シュネルVSスムダルジが、 UFCフライ級史上1、2を争う逆転に次ぐ逆転の激闘だったので、ファイトパス加入者は是非とも観て貰いたいものであります。一度は廃止されかけたUFCフライ級の試合で会場が大いに盛り上がっていたのは良い光景でしたね。

 

 

さて、今回は当ブログ初となるプロボクシングをレビューしたエントリー記事。「WOWOWエキサイトマッチ」です。

 

 

「エキサイトマッチ~世界プロボクシング」は、WOWOWが開局した1991年から現在(2022年)まで、32年間続く同局の長寿番組です。

まだインターネットというものが存在していなかった1980年代、海外で行われるボクシングの世界戦や、世界的スター選手の試合を観られる手段というのは非常に限られていて、当時のボクシングマニア達はマーヴィン・ハグラーやロベルト・デュランといった海外のスター選手の試合が収録されたビデオテープを購入しては貪るように観ていたそうです。

そんなボクシングマニア達にとって、1991年から放送開始した「エキサイトマッチ」は海外の有名プロボクサーの試合を毎週TVで放送してくれるという非常に有り難い番組だったようで、マイク・タイソン、ナジーム・ハメド、フリオ・セサール・チャベスら90年代を代表するようなスター選手、RIZINが誇る世界的スーパースター、フロイド・メイウェザー、「アジアの英雄」マニー・パッキャオらの試合をリアルタイムで生放送した事で、日本における海外ボクシングスター選手の認知度と、ファン層の拡大に貢献しました。

 

WOWOWではご存知の通りUFCも放送されている事から、エキサイトマッチとUFCの両方を観ているボクシングファン、およびMMAファンも多いようで、旧K-1とPRIDEの「元プロボクサー噛ませマッチ」のせいで新興格闘技に対してあまり良い印象を持っていなかったボクシングファンが、 UFCの試合はレベルが高くて面白いと認識を改めてくれたのが嬉しかったです(笑)。

 

 

今回は、7月18日分放送の試合をエントリーしています。

 

 

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🏟WBO中南米ライトフライ級王座決定戦🏟

⚪️👑🇻🇪アンヘリノ・コルドバVSアクセル・アラゴン・ベガ🇲🇽⚫️(10R判定勝利)

 

 

アンヘリノ・コルドバはベネズエラ出身の選手。対するアクセル・アラゴン・ベガは2021年に現WBAスーパー・ライトフライ級王者の京口紘人に挑戦し、5RTKOで敗れています。

 

序盤から重心を低く構え、クラウチングスタイルで距離を詰めていってロープ際で左右フックやボディブローでグイグイ攻め立ててゆくベガ。対するコルドバはジャブとフットワークを使って距離を取り、前のめりに打ってゆくベガに時折左右のカウンターを当てていきます。

 

解説の西岡利晃サンが「コルドバのジャブにスナッピーさが無く、打った後の戻りで腕が下がるので打ち終わりを狙われやすい」と評していましたが、コルドバは序盤はベガの圧力に押され気味でアウトボクシングが機能していないように見えました。異様に狭いリングもインファイター有利に機能したように思えます。

 

ただベガもこれといった決定打を打ててないせいか中盤辺りから明らかに手数が出なくなる場面が増えていきます。ガンガン攻める場面と手数が出ない場面がはっきりと分かれているので、恐らくはスタミナをセーブしているんだと思われますが、ベガが手を出さない場面ではコルドバはここぞとばかりにコンビネーションを打って手数を稼いでいきます。

 

中盤以降はコルドバが盛り返し、ベガが距離を詰めて打ってきたらクリンチで流れを寸断し、試合を支配していきます。

前半ベガ、後半コルドバといった流れで微妙な判定ではありましたが、ジャッジは3者がコルドバを支持。アンヘリノ・コルドバがWBO中南米ライトフライ級王者となりました。

 

ベガは序盤から積極的なインファイトを仕掛けていきましたが、パンチがやや手打ち気味で明確に効かせる攻撃が打てなかったのが失速の原因でしょうか。この階級で体重の乗った重いパンチ、コンビネーションでインファイトで仕留められるローマン・ゴンザレスの強さが改めて理解できます。

 

勝ったコルドバは綺麗なアウトボクシングは行使できませんでしたが、クリンチで凌いで体力を温存しつつ、ベガの失速を見計らってすかさずコンビネーションを出していったのが良かったと思います。

 

 

 

 

 

🏟WBO世界ライトフライ級タイトルマッチ🏟

⚪️👑🇵🇷ジョナサン・ゴンザレスVSマーク・アンソニー・バルガ🇵🇭⚫️(12R判定勝利)

 

 

 

現WBO世界ライトフライ級王者ジョナサン・ゴンザレスはプエルトリコ出身の選手。

2019年には当時WBO世界フライ級王者だった田中恒成に挑み、両者ダウンの応酬の末に7RTKOで敗れています。

一方の挑戦者マーク・アンソニー・バルガは、あのマニー・パッキャオを生んだフィリピン出身の選手です。

 

両者サウスポーに構え、ガードをしっかりと固めながらスナッピーにジャブを打ち、僅かなガードの隙間の瞬間にパンチを当てていくという、キビキビとした攻防が序盤は繰り広げられます。

 

ハンドスピードの速い挑戦者バルガ。ワンツーや、ゴンザレスの打ち終わりを狙っての左ストレートのカウンターが光ります。

 

ゴンザレスはローブローを受けますが、下がりながらも右フックや近い距離でのボディを打っていく展開。5Rまではややバルガが圧力を掛けて攻めていく展開でした。

 

しかし6Rからは逆にゴンザレスが圧力を掛けて攻め立ててゆく展開。近付いてボディ打ちで削っていき、ここから両者のフィジカル差が如実に出てきます。

 

解説の西岡利晃サンは「ゴンザレスはローブロー喰らったので、5Rまではダメージの回復を務めるために下がっていたが、6R以降から回復したので圧力を掛けていった」との見立てをしていましたが、腑に落ちる解説だなと思いました。

 

ゴンザレスに攻め立てられたバルガは後半ラウンドになるとクリンチで凌ぐ展開がやたら目立つようになります。あまりにクリンチを多用するので観ているオイラも後半は意識が飛んでいました。解説のジョー小泉サンも「バルガは手数が足りない、ボディブローが足りない、ジャブが足りない」とえらくご立腹のようでした。

会場は後楽園ホール規模の小さな会場で行われ、半分くらい空席が見られていましたが、この展開に更に席を立つお客さんもチラホラ。軽量級が認知されにくいアメリカのボクシング界の現状が窺えます。

 

ちなみに現地(フロリダ)解説は、以前UFCの現地実況者で現在はベラトールの実況を務めているマイク・ゴールドバーグと、ボクシングレジェンドのロイ・ジョーンズ、ベアナックルボクシングでコナー・マクレガーのチームメイトのアーテム・ロボフさんに敗れたポール・マリナッジが務めていました。あのマクレガーのバスアタックのそもそもの発端となったロボフさんは、現在は現役を引退しています。

 

そうそう、判定は3者フルマークで、王者ジョナサン・ゴンザレスが防衛に成功しました。

 

 

 

 

 

 

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2010年代までは「海外ボクシングを観るならWOWOW一択」しかなく、ボクシングファンから安定の支持を得ていたエキサイトマッチでしたが、ネット動画が発達していった事によって、逆に1ヶ月、2ヶ月遅れの試合放送が多いエキサイトマッチよりも先に、他の動画媒体で海外のビッグマッチを観るボクシングファンが多くなりました。

 

DAZNの参入によって、カネロ・アルバレスやライアン・ガルシアのようなDAZNと専属契約を結んでいるスター選手(カネロは後にDAZNとの契約終了)の試合を放送しなくなったのも痛手です。WOWOWオンデマンドではテレンス・クロフォードやワシル・ロマチェンコらの試合を先行で生配信していますが、メイウェザーやパッキャオクラスの試合の事前の盛り上がりには及んでいないという事で、オンデマンドのみの生配信に留まっているのが苦しいところです。

 

今回レビューした放送回も、当初WOWOWのカタログには中量級のジャーモル・チャーロの試合が放送される予定でしたが、結果的にライトフライ級の2試合が放送されました。

ディレイとはいえ放映権料が高かったのか。軽量級を軽視するわけではありませんが、登場した選手が京口、田中と以前戦って敗れた選手だったという事もあり、やはりラインナップの型落ち感が否めません。

 

エキサイトマッチの番組終了直前に8月に放送される試合のラインナップが紹介されていましたが、4月にたまアリで行われた村田VSゴロフキンと、6月に行われた井上VSドネア2が入っていました。AmazonPRIMEで生中継された試合を何で今頃になってWOWOWで放送するんですかね?ちょっと前だったらこの2試合もWOWOWが独占放映権を獲得して生中継していたと思いますが、時代も変わったものです。

 

エキサイトマッチもネタ切れならば無理して毎週は放送せず、逆に月1か2でTV生放送枠の試合を増やしていったほうがいいと思います。

 

BS、CS放送全般に言える事ですが、最近はネットストリーミングにシェアが押され気味の傾向にあります。とはいえ、BS、CS放送は画面が途中で止まらず、通信制限を気にする事もなく、TV画面で高画質で観れるというメリットがあります。

 

90年代、00年代海外ボクシング黄金期の現地ラスベガスの熱量を日本に輸入し、旧K-1、DREAM消滅後、ABEMA TV立ち上げによるネットストリーミング全盛以前の「格闘技冬の時代」をUFCと共に支えていたWOWOWエキサイトマッチだけに、復活を願いたいものです。