☆2022年6月 月間MVP☆
🇵🇱マテウス・ガムロット🇵🇱(UFCライト級)
【UFC FIGHT NIGHT VSアーマン・ツァルキアン戦 dif5R判定勝利】
ポーランド最大のMMA団体「KSW」でライト級とフェザー級の二冠王者となり、 UFCでも3勝1敗でライト級のランキング入りを果たしたマテウス・ガムロットが、 UFCのトッププロスペクトの一人であるアルメニア生まれの25歳、レスリングとコンバットサンボをベースに持つアーマン・ツァルキアンとのランカー対決に挑む。
1R、両者オーソドックスに構える。
ジャブのフェイントの後から、ツァルキアンがタックルを仕掛けるも、ガムロットはこれを切る。
右ミドル、右ボディと当てるツァルキアン。高身長のガムロットも懐の深い構えで左リードジャブを伸ばしていくが、ツァルキアンはガムロットの右のローキックをキャッチしてテイクダウンに成功する。
しかし、下から足関節を狙う振りをしてスイープで上を取る事に成功したガムロット。グラウンドでも両者速いスクランブルの攻防が繰り広げられる。
そこからツァルキアンが立ち上がり、膝蹴りを当ててスタンドの攻防に戻る。
パンチのみならず右ミドル、ハイキック、内外ローキックと左右に蹴り分けるツァルキアン。ガムロットはツァルキアンの左ミドルの蹴り足をキャッチし、こかしてTDを狙うも、ツァルキアンに足を外されてしまう。
ラウンド終盤、今度はガムロットがタックルを仕掛けてゆくが、ツァルキアンがディフェンスし首をがぶったところでラウンド終了。
このラウンドはツァルキアンか。
2R、時折サウスポーにスイッチするようになったガムロットに対し、ツァルキアンの強烈な右ミドルがヒットする。ミドルの音がその威力を物語っている。
ワンツーを打ち込み、カーフキックをキャッチしたツァルキアン。
続いてタックルを仕掛けるも距離は遠く、ガムロットはスイープして立ち上がる。
再度サウスポーに構えたガムロットに再び強烈な右ミドルをヒットさせたツァルキアン。
ガムロットがオーソドックス構えに戻すと今度は左ミドルをヒットさせ、下がりながら左フックカウンターをヒットさせてラウンド終了。
2Rもツァルキアンだろう。
3R、再びサウスポーに構えるガムロットに、ツァルキアンの右ミドルが2発ヒットする。
相手の頭が下がったところへ右ストレートを当て、タックルも切っていくが、懐が深く前傾姿勢でリーチが長く見えるガムロットの伸びのあるリードジャブ、ワンツーも当たり始め、続けてTDに成功する。
立ち上がってバックを取られてもリストコントロールで外そうとするツァルキアンだが、ガムロットはそこから組み伏せて再度TDを奪う。
再びスタンドに戻り、ラウンド終盤、ツァルキアンの強烈なバックスピンキックがボディに決まる。
右ストレート、そのフェイントからの右ミドル、左ミドルをヒットさせるツァルキアン。
ツァルキアンの打撃か、ガムロットのテイクダウンどちらを取ってもおかしくないラウンドだ。
4R、左に回って左ジャブ、左ハイキックをヒットさせるツァルキアン。
しかしツァルキアンはややこのラウンドに入って攻め疲れも見え始め、ガムロットが右ストレートをヒットさせツァルキアンを少しぐらつかせる。
しかしツァルキアンはサウスポーにスイッチし左ミドルを当てると、すかさずバックハンドブローを放ちダウンを奪う。
直後にグラウンドに移行するツァルキアンだが、ガムロットもバックを取って優位なポジションへと移行する。
スタンドに戻り、ツァルキアンの左に右のカウンターを被せるガムロット。ツァルキアンも再び強烈な右ミドルをヒットさせるが、それを喰らいながらも打ち終わりにタックルを仕掛けテイクダウンに成功したガムロットが、バックに回ってリアネイキドチョークを仕掛けるが、これをツァルキアンが外したところでラウンド終了。
このラウンドも甲乙つけ難いが、アブダビコンバットのヨーロッパ選手権とレスリングの国内ジュニア選手権を制覇したガムロットのグラウンドがやや評価される内容だ。
5R、ガムロットが右ストレートを伸ばすが、前脚重心気味のガムロットに対し、ツァルキアンはカーフキックを当ててバランスを崩させる。
しかし運動量の落ちないガムロットはここで低空タックルを仕掛けTDに成功する。
再びバックを取られた状態から立ち上がるツァルキアン。ツァルキアンは4Rにダウンを奪った技であるバックハンドブローを放つも、このタイミングでガムロットがタックルを仕掛けるが、ツァルキアンもこれを切る。
絶妙のタイミングでもテイクダウンを切られるガムロット、それでも右ストレートを当て、ラスト1分でTDを狙うが、ツァルキアンがディフェンスし首をがぶって細かくパウンドを打ったところでラウンド終了。
判定は・・・ツァルキアンの勝利とも取れる試合だったが、3-0でマテウス・ガムロットが勝利を納める。
様々な見方があるだろうが、 UFCライト級ランキング11位と12位の対決とはいえ、まるでタイトルマッチに匹敵する打投極を織り交ぜたハイレベルな試合を、25分間ノンストップで両選手がやってのけた事に異論は無いだろう。
元々はレスリングを習い、ポーランドではジュニアレスリング代表に選出されて国内選手権で優勝する。
2011年からMMAの練習を初め、並行してグラップリングの大会に出場し、柔術世界大会アブダビコンバットの欧州選手権で優勝する。
2012年にプロMMAデビューし、地元ポーランドで最大6万人の観衆を集めるMMA団体「KSW」を主戦場に活躍。
2016年にKSWライト級王者となり、2018年にはフェザー級に階級を落とし、後にRIZINで活躍するクレベル・コイケを打撃で完封し、フェザー級王座を獲得し二階級制覇を達成する。
無敗のレコードでUFCに参戦するも、 UFCデビュー戦で初黒星を喫するが、そこからジェレミー・スティーブンス、ディエゴ・フェレイラ、そしてアーマン・ツァルキアンを撃破し、実力を証明してみせた。
レスリングと柔術がベースで、北米MMAでも近年は使い手があまり居なくなった、ローシングルと呼ばれる低く体勢を沈めてからのタックルでテイクダウンを決め、グラウンドでは強烈なパウンドや、足関節やアームロックといった多彩なサブミッションで一本勝ちを狙う。
スタンドでは低重心の構えからのある伸びのあるリードジャブ、ワンツーを主武器に、構えのスイッチをこなしつつ、得意技である右ストレートは低く踏み込んで打ち下ろしの角度から放たれるため、ガムロットの低空タックル対応で重心とガードを下げた相手選手からすれば効きやすい角度で右ストレートが打ち抜かれる。
将来のUFC王者候補と呼ばれているプロスペクトのツァルキアンを判定で下し、激戦区UFCライト級でランカーと呼ぶに相応しい実力を証明したポーランドの寝技職人は、その勢いもそのままに上位陣をも飲み込んでいくだろう。