アジア最大の格闘技団体、ONE CHAMPIONSHIPの公式SNS上で、「次にONE CHAMPIONSHIPに署名すべき選手は誰か?あなたがノミネートしたい選手や我こそはという選手はここにコメントして下さい」との呼び掛けに、現UFCファイターで元UFCヘビー級王者のスティぺ・ミオシッチが絵文字で反応した事で、海外のMMAヲタク界隈が一瞬ザワつきました。
ミオシッチは更に「(ヘビー級暫定タイトルマッチの)勝者を待つ事は出来ない。私はUFCヘビー級史上最多防衛記録を持っている。(VSフランシス・ガヌー)とは一勝一敗だ。だがダニエル・コーミエは私とトリロジーファイト(3戦目)を争ったのに何故私はガヌーと3戦目のタイトルマッチを戦えないんだ⁉️」と不満を漏らしたそうです。
この話題を目にした瞬間、海外MMAヲタクであるワタクシはUFCとONE CHAMPIONSHIPという両メジャー団体の色々な内幕がフォースを通じて見えてきたわけですが、今回の記事はそれについて詳しく説明していきましょうって内容です。
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まず、スティぺ・ミオシッチがONEの呼び掛けに反応した理由は、所属しているUFCへの揺さぶり以外他にはありません。
ミオシッチはUFCと現在契約している以上、独占契約形態であるUFCにおいてONE CHAMPIONSHIPで戦う事は出来ません。
にも関わらず反応したのは、現UFCヘビー級王者であり、今年3月のタイトルマッチで自身の持つヘビー級王座を奪われたフランシス・ガヌーとのトリロジーマッチをUFC側から却下された事への苛立ちがあるのでしょう。
現在のUFCヘビー級王座と上位ランカー達を取り巻く状況は、非常に複雑なものになっています。
まず現UFCヘビー級王者であるフランシス・ガヌーの相手として、かねてからファンの間でマッチアップが熱望されていた元UFCライトヘビー級絶対王者であるジョン・ジョーンズが第一候補としてノミネートされていましたが、UFC側に高額のファイトマネーを要求するジョン・ジョーンズ側と折り合いが付かず、交渉は現在も難航している状態です。
UFC側は、現王者フランシス・ガヌーの初防衛戦の相手としてデリック・ルイスをピックアップ。ガヌーが3月のミオシッチ戦でほぼノーダメージだったという事で当初は6月の対戦を提示していましたが、スパンが短いという事でガヌー側が却下、この対戦は8月開催のUFC265にズレ込んだわけですが、これも準備が間に合わないので9月にして欲しいとガヌー側が提案したところ、UFC側は何とデリック・ ルイスとシリル・ガーヌによるヘビー級暫定タイトルマッチを8月開催のUFC265のメインイベントにする事を決定しました。
ガヌーは3月にヘビー級王者に戴冠したわけですし、そこから僅か5ヶ月スパンでの暫定タイトル設置というのは異例の早さです。これにはファンの間から多くの批判が巻き起こりましたが、理由としては交渉をゴネているであろう王者ガヌーへの揺さぶりと、UFC265がデリック・ルイスの地元であるヒューストンで有観客興行として開催されるので、興行に箔を付けるために暫定タイトルマッチになったという意図があるのでしょう。
そうなると正規王者のガヌーとしては8月に決定する暫定王者との王座統一戦に挑まなければいけないですし、ジョン・ジョーンズとのスーパーファイトもまだ線が消えたわけではありません。
そうなってくると、ガヌーとのトリロジーマッチを熱望しているミオシッチとしては更に待たされるハメになってしまうわけです。
ミオシッチがマクレガー並に華やかな選手だったら、ガヌーとのトリロジーファイトをUFCとしても優先していたでしょうが、ミオシッチではPPV売り上げ的に大きく見込めないというのも、却下した理由の一つでしょう。
それと、前々回のミオシッチVSコーミエのトリロジーファイトを足掛け2年にも渡って行ったおかげで、他のヘビー級タイトルコンテンダー達にチャンスが回ってこなかったというのも理由としてありそうです。
またミオシッチ側としても、年齢が39歳を迎えた事から再び王座を獲得するためには時間があまり残されていないという事情もあって、タイトル挑戦を急いでいるのでしょう。
格闘技団体、特にメジャー所の団体のマッチメイカーともなると大変な仕事です。
格ゲーのように、好きなキャラ同士をカーソルで選んで対戦が100%成立してしまうのであれば、我々キモ格ヲタでも出来ちゃうわけです。
実際は、大舞台で大きなお金が動けば動く程、ファンが観たい夢のビッグカードというのは実現しずらいですし、自分の商品価値を維持していきたい選手側からしても、ギャラの賃上げ交渉や自分有利のマッチメイクを成立させるためにプロモーターや対戦相手側に対して色々とゴネまくるわけです。
勿論、選手双方が契約の合意に至らなければ対戦は実現しないですし、決まったとしても怪我などによってカードが流れる事だって普通にあるわけです。
特にUFCのような現役王者の立場でなくともスター選手が多く在籍しているようなメジャー団体だと、上位ランカー陣のマッチメイクの選択肢は自然と狭まっていきますし、その中で選手にゴネられたりすると、特に地味強の選手なんかは試合をするのを避けるトップ選手が多くなって、結果的に試合が組まれないという事態も発生するわけです。ボクシングにおけるリゴンドーとかリゴンドーとか権藤博みたいな不憫な立ち位置の選手です。
自分が営業マンの立場になって想像してみて下さい。
こんな、性格に二癖も三癖もあるセレブ達を相手に、数千億円単位のお金が動く世界的メガイベントの契約を取っていかなければならないわけです。
営業を経験した人ならば想像しただけで胃が痛くなるはずですw
話をミオシッチに戻しますが、彼のように団体離脱を仄めかしながらも団体側とギリギリの交渉を行って権利を勝ち取りに行くというパターンは、過去にUFCを始め海外メジャー格闘技団体では何度も見られていた光景です。
そういえば一昨年の7月にはBMFでお馴染みホルヘ・マスヴィタルが「ギャラ上げなきゃ試合に出ないぞ‼️」とゴネてファンをドギマギさせていましたが、現UFCウェルター級王者カマル・ウスマンのタイトルに挑戦する予定だったギルバート・バーンズの欠場が決まった瞬間、大会一週間前であるにも関わらずマスヴィタルが手の平をひっくり返して代役としてタイトル挑戦した時は、ファンは大いに沸いたものです。
結果的にこの大会が行われたUFC251のPPV売り上げは130万件を記録し、この時を待ってましたとばかりに芝居を打ってUFC側にギャラを釣り上げさせたマスヴィタルとしては、してやったりと思ったはずです。流石はBMFの面目躍如です。
なので、今回のミオシッチの件に関しても今後二転三転はあると思うので、ミオシッチファンの方はあまり本気には受け取らずにしばらく静観しておいたほうがいいでしょう。
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一方で、このタイミングで選手署名を呼び掛けているONE CHAMPIONSHIP陣営も、内幕は苦しい経営状況に追い込まれています。
コロナ禍によってONE CHAMPIONSHIPの拠点である東南アジアでは幾つかの大会中止、無観客試合を強いられる事となり、1大会に放送される試合数は6試合に減らされた上に、同じ会場で行われた他の試合を翌週、翌々週に分割で録画放送するという、まさしくコロナ禍でしか出来ないような経費削減案を強いられるようになりました。
世界最大のベンチャーキャピタルであるセコイアキャピタル等から300億円近い資金を調達し、海外進出に向けて当初は羽振りが良かったONEでしたが、コロナ禍を機に状況は一変、リストラ策としてスタッフの50%~80%を解雇するなどの緊縮財政を強いられるハメになってしまいました。
まぁ、何でもかんでもコロナのせいでONEはこうなってしまったというわけではないだろうと自分は考えていて、日本進出における南北カメレオンコンビやONEの広告塔的な選手である青木真也による上から目線の押し付けがましいプロモーションや、「世界で1億人が視聴していた」「タイ国内で80%の視聴率を記録した」等の数字を大きく盛って自分の団体を大きく見せていた胡散臭いプロモーションにも、大いに問題があったと思っています。自分は2019年のONE日本大会の頃から既に分かっていた事ではありますが。
最初に多額の広告費を投入し、MMAだけでなく立ち技、海外進出といっぺんに風呂敷を広げ過ぎた挙げ句、運営がカバーしきれなくて経営難に陥ってしまうというのは、一気に急成長を遂げたベンチャー企業にありがちなパターンです。あのRIZAPと同じですね。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/articles/20181115.html
ONEは6月以降、本来開催される大会が中止の憂き目に遭っていましたが、その原因の一つとして、ONEの投資筋であったシンガポール系ファンドが撤退して資金繰りが苦しくなったというのもあるようです。
そのONEは先日、約2ヶ月ぶりに興行を再開させましたが、これは新しい投資筋を獲得して資金繰りに成功したという事を意味しているでしょう。
ただ、コロナ禍という事もあり、未だに崖っぷちである状況に変わりはありません。
今回の選手署名の呼びかけも起死回生のための話題作りの一環としての狙いがありますが、仮にスティぺ・ミオシッチが本気でONEに移籍を希望していたとしても、UFCで1試合1億円以上のファイトマネーを貰っているミオシッチに対して、それ以上のファイトマネーの額を払えるとは、現状のONEの体力や費用対効果を考えるとそうは思えません。
それと、一昨年3月にオンラ・ンサンとのONEミドル級タイトルマッチを戦って以降、2年以上にも渡って試合を干されている長谷川賢を始め、コロナ禍という状況もあり試合が組まれず不満を漏らしているONE所属選手が多数おり、彼らからしてみれば、新規で選手を獲得する余裕があるんだったらさっさと試合組んでくれよという心境でしょう。
このように、問題が山積状態のONE CHAMPIONSHIP。
断捨離の経営改革を行った上で、本来の団体コンセプトである「東南アジアを主軸とした格闘技団体」という本流に回帰した上での立て直しが必要となってくるでしょう。
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いやぁ、メジャー格闘技団体のプロモーターは辛い。
選手からは突き上げられ、ファンからは常に叩かれる運命にあり、TV局や大株主や8😝3からは売り上げを求められるわけです。
自分だったら年間ギャラ1億円貰えるとしても就きたくないポジションですねw
何処もそうですが、格闘技団体の主催者にとってはまさに今が踏ん張り所です。