2020年2月のMVP | 銀玉戦士のアトリエ

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☆2020年2月 月間MVP☆

 

👑🇰🇬ヴァレンティーナ・シェフチェンコ🇰🇬👑(UFC女子フライ級王者)

 

【UFC247 VS ケイトリン・チョケイジアン戦 dif3RTKO勝利】

 

UFC女子フライ級で突出した実力を誇り王者に君臨しているヴァレンティーナ・シェフチェンコが、自身3度目の王座防衛戦に挑む。

対するはUFC直近の戦績5勝1敗、ランキング1位の最強挑戦者であるケイトリン・チョケイジアンだ。

 

 

1R、アップライトに構えたサウスポースタイルで、やや後ろ脚に重心を置いて相手の出方を伺う王者シェフチェンコ。

シェフチェンコよりも身長が高い挑戦者チョケイジアンは、遠い間合いでサークリングしながらオーソドックス構えの前手を伸ばし、時折軽いローキックやミドルを繰り出す。

チョケイジアンが踏み出そうとした瞬間、すぐさまバックステップして自分の距離をキープするシェフチェンコ。

そのステップインに合わせてシェフチェンコは鋭いバックハンドブローをカウンターでヒットさせる。

長身で懐の深いチョケイジアンに対し、シェフチェンコはワンツーからローキックへと繋げるコンビネーションを当て、左リードに右ストレートのカウンターを合わせる。

チョケイジアンの右ミドルをキャッチしてからのTDに成功したシェフチェンコ。

ガードポジションからのトップキープから、ラウンド終盤に強烈な右エルボーのパウンドを打ち下ろし、チョケイジアンの瞼の上を切り裂いて出血させたところでラウンドを終了させる。

1Rは少ない手数ながらも確実に印象の残る打撃を当てた王者シェフチェンコのラウンドだ。

 

2R、鋭い左ミドルを当てる王者シェフチェンコ。

ボクシングベースのストライカーであるチョケイジアンはシェフチェンコを何とか切り崩そうと、フェイントからスイッチ、多彩な蹴りを放ち相手の裏を突こうとするが、シェフチェンコの組みを警戒してか踏み出す距離が遠く、攻撃も悉く見切られてしまう。

一方、左右のローキックを相手の前脚に当てて効かせていくシェフチェンコは、じわりとプレッシャーを掛けていき、チョケイジアンが制空権内に入ってきたところへ右ストレート、回し蹴り、更にはかかと落としを繰り出し鉄壁の結界を張る。

チョケイジアンの右ミドルを再びキャッチし、2度目のテイクダウンに成功したシェフチェンコ。

ムエタイの技が光る技術でグラウンドの展開に持ち込み、トップキープに成功したところで2Rも優勢に終える。

 

3R、チョケイジアンの右ミドルをまたもキャッチしたシェフチェンコ。

チョケイジアンにとっては悪手と思われる攻めだったが、ここでチョケイジアンは逆にシェフチェンコに組み付いて引き込もうとする。

だがシェフチェンコも強引に上から倒してテイクダウンを奪う。

サイドポジションを取って相手の左腕を両足太腿ででフックさせて固定し、動けなくするマットヒューズポジションの形を取ったシェフチェンコ。

ガード不能で身動きできない状態から、パウンドを連打したところでレフェリーストップ。

ランキング1位の挑戦者に対し、完全なる力の差を見せ付けてドミネイトしたヴァレンティーナ・シェフチェンコが、UFC女子フライ級通算3度目の王座防衛に成功した。

 

 

 

旧ソ連圏のキルギス共和国で生まれる。

母親の影響で5歳からテコンドーを習い、ボクシング、キックボクシング、レスリング、柔道、サンボとあらゆる格闘術を並行して習い始める。

その英才教育を生かして、10代後半の頃からMMA、ムエタイ、ボクシングと3つの打撃競技を渡り歩いた経歴を持ち、中でもキックボクシングの戦績は56勝2敗と驚異的な戦績を誇る。

2015年にUFCでバンタム級契約でデビューし、2016年7月には、あのロンダ・ラウジーをハイキックで沈めたホリー・ホルムと対戦。

元UFC王者でありながら、元ボクシング王者でもあったホルムのパンチに対し、右フックのカウンターで迎撃して完封するという打撃技術の高さを披露して金星を納めた。

2017年、現UFC女子バンタム級王者であるアマンダ・ヌネスに挑み、接戦の末に僅差の判定で敗れてからは、2018年にUFCで新設されたフライ級に階級を落とす。

バンタム級時代では相手選手とのフィジカル差に苦しんでいた印象だったが、本来の適性階級に移行した事で鬼のような強さを発揮できるようになったシェフチェンコは、同年12月に元ストロー級王者であるヨアナ・イェンジェンチックとタイトルマッチで対戦。

打撃巧者のヨアナをキックボクシングの技術と組み技でそれぞれ完封し、UFC女子フライ級王者に戴冠した。

  

ムエタイでも世界トップレベルの実力を生かし、スタンドではアップライトに構えたサウスポースタイルからの左ミドルを基点としつつ距離を掌握し、相手が踏み込んできたところへカウンターの右フックや左ストレート、テコンドー仕込みの回し蹴りや接近戦での膝蹴りで主導権を握り、必殺の左ハイキックでKOで仕留めるという「待ち」のカウンタースタイルを得意とする。

バンタム級時代は主に組みの場面でフィジカルの差で苦しんでいたが、階級を落とした事でアドバンテージが少なくなり、加えて彼女自身がグラウンドの技術を向上させ、寝技の攻防においても階級トップレベルの実力を発揮できるようになった事で、あらゆる展開において万能の強さを誇るようになったシェフチェンコ。

打撃の展開からレベルチェンジして、柔道・サンボ仕込みの華麗な投げ技を用いてテイクダウンを奪い、ケージレスリングから相手を逃さないグラウンドポジションからの強烈なパウンド、サブミッションといった様々な引き出しを駆使し支配する。

キャリア6つの一本勝ちがあり、フィジカルで上を取られるような展開になっても下のポジションから一本を取りに行ける柔術スキルの高さも、彼女のもう一つの持ち味だ。

ちなみに実姉のアントニーナ・シェフチェンコも、同じくUFC女子フライ級で活躍しており、姉妹仲睦まじい写真が度々SNS上でアップされている。

 

まさに攻守共に全局面隙の無い強さを誇り、UFC女子フライ級において無人の荒野を走り続ける絶対王者は、これからもオクタゴンで冷徹なまでの完封劇を見せ、試合が終われば華麗なる勝利の舞を踊り続けていく事だろう。