Young Prospect~ジャスティン・ゲイジー~ | 銀玉戦士のアトリエ

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ジャスティン・ゲイジー(UFCライト級・元WSOFライト級王者)

生年月日 1988年11月14日(28歳)

プロMMA戦績 17勝0敗

 

 

 

「北米第3のMMA団体」WSOFが新体制へと移行するにあたって、マゴメッド・ビブラトフ、マルロン・モラエス、デイビット・ブランチと、旧WSOF体制で王者だった選手が、今年に入ってからフリーエージェントを経て、続々とUFC入りを果たしている。

 

WSOFライト級王者として君臨してきたジャスティン・ゲイジーも、同じくその実績を提げて先日UFCとの正式契約を成立した一人だ。

 

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1歳からレスリングを始めたジャスティン・ゲイジーは、学生時代に数々の輝かしい戦績を残し、大学ではNCAAデビジョン1としてオールアメリカンに選出されている。

北米MMAではレスリングをバックボーンとした選手を多く輩出しており、ダニエル・コーミエ、クリス・ワイドマン、ジョニー・ヘンドリックスら、大学時代にレスリングオールアメリカンに選出され、MMAに転向した選手の中には、後にUFC王者にまで登り詰めている者も居る。

まさに、MMAのエリート街道の下地を歩んできたと言っても過言ではないゲイジーは、彼らの後を追うかのように、2011年にMMAデビューを果たす。

ローカルで無敗のレコードを記録し、2013年にWSOF入りしたゲイジーは、初戦でHERO'S元ミドル級王者だったJZ・カルバンを、持ち前のパワーで圧倒。ドクターストップで1RTKO勝利を納める。

その後2連勝を重ね、2014年1月にWSOFライト級王者決定戦に挑んだゲイジーは、リチャード・パティシュノックをパンチ連打からの右エルボーで僅か68秒で沈め、見事王者に戴冠した。

 

ジャスティン・ゲイジーの持ち味は、何と言っても、見る者を魅了してやまないその荒々しいファイトスタイルだ。

いきなり相手の間合いにベタ足でズカズカと踏み込み、大振りのパンチを振り回し、時に被弾しながらも驚異のタフネスで打撃を打ち返す。

競技レベルが洗練された現代MMAにおいて、その法則を無視するかのような中量級版ボブ・サップとも言うべきゲイジーのスタイルが通用しているのは、一見すると何とも不思議なように思える。

それを可能にしているのは、レスリングで培ってきた技術と、強靭な肉体から繰り出される破壊力抜群の打撃にある。

 

MMAでは、スタンド状態で相手に組み付いてからの打撃・・・いわゆる「クリンチ打撃」が認められている。

レスリングやムエタイをバックボーンとしているMMAファイターの中には、グレコローマンスタイルや首相撲で培われた組み力の強さを生かし、相手をロックした状態で打撃を当てるのを得意としている選手も多い。

ゲイジーも同じく、組みやケージ際で相手を押さえ付けてガードを無効化させ、これもレスリング仕込みの体幹の強さと筋力によって発揮される破壊力抜群の打撃を当てることで、数々のKO劇を演じている。

 

そして、MMAでは珍しい、ガードを上げて打撃をブロックするオランダ式キックボクシングスタンスで構える事で、相手の攻撃をブロックしつつ、同時にプレスを掛けていって可動域を潰していく事でケージ際に追い込み、逃げられなくなったところで得意のクリンチ打撃で仕留めてゆく。

ゲイジーの高いレスリング力とテイクダウンディフェンスがあってこそなせる業だ。

また、現代MMAの生命線とでも言うべきフットワークを殺す強烈なローキックも、ゲイジーの大きな武器だ。4度目のWSOFライト級王座防衛戦となったブライアン・フォスター戦では、ローキック連打でフォスターを負傷TKOに追い込み、僅か103秒で王座防衛に成功している。

 

 

ダニエル・コーミエ、ジョニー・ヘンドリックスが得意とするアメリカンレスリング仕込みのクリンチ打撃と、ロビン・ファン・ロスマレン、マラット・グレゴリアンが得意とする伝統のダッチムエタイスタイルの融合・・・それが、ゲイジーの荒々しいファイトスタイルに隠された強さの秘訣だ。

そのスタイルでもって、WSOFライト級王座を5度防衛したゲイジー。

だが、WSOFでの最後の試合となったルイス・ブスカペ戦では、調子に乗ってガードを下げていたところへ、ブスカペのスナッピーな打撃を次々と被弾してしまい、劣勢に追い込まれてしまった。

OFGでは覗き見ガードの隙間にパンチが入りやすいブロッキングスタイルの盲点と、荒削りな打撃スタイルゆえの弱点を、ベテランのブスカペに突かれた格好となったゲイジー。

それでもゲイジーは持ち前のタフネスで試合を盛り返し、ブスカペを負傷TKOによるドクターストップに追い込んで、辛くも5度目の防衛戦を制したわけだが、UFC入りを熱望し、王者になる事を目標としていたゲイジーにとって、黄色信号が点灯した試合であった事は確かだった。

 

先日、UFCとの正式契約を結び、「ヤバイ奴と戦いたい」と抱負を語っていたゲイジーだが、UFCファイターともなればプレリムクラスの選手だとしても、ブスカペ戦で露呈したゲイジーの弱点を突いてくるだろう。

UFCはWSOFと違い、勢いだけでは勝たせてくれない世界だ。素材は超一級品だけに、打撃・寝技共にしっかりとした技術を身に付けていけば、UFCでも王者になれるだけのポテンシャルは秘めているのだが、逆にかつてのボブ・サップのように、この手のタイプは下手に技術を覚えると弱体化してしまう懸念がある。

 

良い意味での荒削りな部分は残しつつ、洗練すべき部分が伸びてくれたら最高なのだが、こればっかりはゲイジーのファイトスタイル同様、読めない要素だ。

打撃のディフェンス力の向上は勿論だが、グラウンドの展開を増やし、トップキープ+パウンドの時間を多く作る事で、無駄な被弾を減らしていく事も必要になってくるだろう。

 

コロラドの喧嘩スタイルはUFCの舞台でも存分に発揮され、やがてはUFCライト級現王者コナー・マクレガーさえも粉砕してしまうのか。

ジャスティン・ゲイジーによる、世界の頂点を目指すための戦いが今、始まる。