ぼくのメジャースプーン | 楽々主義

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徒然なる日々

美しさに彩られた物語だっていう話。

辻村深月さんの
『ぼくのメジャースプーン』
を、読み終えた。

ぼくとふみちゃんを襲った事件は、どうしようもなく身勝手で、猥雑で、残酷なものだった。
小学校で起きた凄惨な事件は、彼女から全てを奪っていった。ぼくにできることはただ一つ。
犯人に唯一立ち向かえる力。たった一度、ほんの僅かな望みに賭けた、一人の少年の闘い。儚くも美しい無垢で無知な無謀ともいえる秘策とは。迎える結末の先に待つものは一体。。。

これはまた、傑作の一つ。
辻村深月らしさが詰まった、
人肌で、地に足の着いたファンタジー。

もしも自分なら。。。
そう思わずにはいられない。

正しさとは、
過ちとは、
悪とは、
善とは何か。
問えど答えなどなく。
結果、導き出すのは、
自分の心と向き合って、
自分が信ずるものでしかなく。

悪意とは、
ある日突然降りかかる。
落ち度や非など、お構い無しに。
まるで呼吸をするかの如く、
無意識に浴びせられる、
無情や無慈悲。

現実とは常にそう。

そんな悪意に晒されて尚、
それに立ち向かうのは、
義務感ではなく、
義侠や、偽善でもなく、
ただただ、一つの思い。
繋ぎ止めたいの願うのは、
エゴなのか。
自分のためなのか。
『人は人のために涙を流せない』
そうだとしても、
誰かを愛しいと思う気持ちは、
間違いなのか。
探し続けることしかできない、
解答のない問題に、
抗うことは無意味なのか。

人それぞれに大切なものは違う。
自分にとって、幸せなことが、
結果、誰かの幸せに繋がる。

いやはや、
こんなにも切なくて、苦しくて、
だけど温かい物語は、
そうそうお目にはかかれない。

好み云々、
物語としてどうだこうだ、
設定だ、プロットだと、
細かい理屈はあるのかもしれない。
けれども、
とにかくこの小説は、
紛れもなく、
『いい本だ。』
そう思える一冊だ。

全てが万事ハッピーエンドとは、
ならないエピローグ。
しかしながら、
きっと彼らは幸せになるだろう。
そんな風に、
その後を想像させてくれる、
実に素晴らしい話だった。

メジャースプーンのその後は、
なんと、
『名前探しの放課後』へ、
繋がっていくのです。

読者としては、
こんなプレゼントをもらえる作者に、
出逢えた幸福を噛み締めました。