虹の生まれた場所3 | 楽々主義

楽々主義

徒然なる日々

次の日の早朝、僕は家を出た。
両親には置き手紙をしてきた。
別にあの村が嫌いじゃない。何かに困っているわけでもない。
だけど、僕は知ってしまった。
外の世界のことを。
僕は思い出してしまった。
まだ見ぬ夢のことを。

買い物で、いくらか他の町に出掛けたことはあるけれど、村に帰らないことはなかった。
旅行ぐらいしたことはあるけれど、家に帰らないことはなかった。
意気揚々と飛び出したものの、当てはない。
振り返ると、もう村は小さくなり始めていた。
『引き返すなら今だぞ。』
もう一人の僕がそう言ってくる。
途端に自分が今何を求めて歩いているのか、分からなくなりそうになった。
目を閉じる。
今でも思い出せる、あの旅人の声。
大丈夫だ。
再び目を開け、一歩ずつ前へ進む。

『どこへ行くんだ。』
どこからか急に声がして、体が固くなった。
辺りを見回しても、誰もいない。
不安が幻聴を呼んだのかと、耳をすました。
『こっちだよ。』
笑いの混じった声が聞こえた。
ふと上を見上げると、木の幹に腰かけた男の子がいた。
同い年ぐらいだろうか、緑色のマフラーをして、黄色い目だった。村の子ではない。
『君は。』
『俺っちかい。俺っちは、ドワーフのリッドだ。お前っちは。』
『ぼ、僕はリーフ村のリトス。今旅をしているんだ。さっき始まったばかりだけれど。』
『ああ、お前がカインっちとこの倅か。ジンターっちのおっさんが言ってたよ。○○に会った人間がいるってな。』
最後がよく聞き取れなかったけれど、どうやら僕のことを知っているらしい。ジンターという人は知らないけれど、カインは僕の父だ。
『そういう君は、この辺の人じゃなさそうだけど、一体どうしてそんなことを知ってるんだい。』
『おいおい、何を言ってるんだ。俺っちはこの山に住んでるんだぜ。リトスっちも、俺っちのこと知ってるはずだぜ。』