その一方でホトケとボサツが降臨した
「明後日、○○(私の住む都道府県)に行くから、夜ご飯食べない?」
いつもながらの、急な、けれども嬉しいお誘い。
「行きます❗️あ、でも、実は先日、がんを宣告されちゃって。浮かない顔をしてるかもしれませんけど、それでよければ🤣」
敢えて暢気にリプ
「え。何の?」
「子宮の」
「あ、じゃ、大丈夫だよ」
敢えての軽いリプ
心遣いが粋
その夜、ホトケはご飯を食べ終えたあとに、お茶を飲みながら、こう言った。
昨日、家族会議をした。
全力でラスカルをサポートする事にした。
サポートが必要なときは遠慮せず、言え。
遠くないからな。
新幹線に乗ればスグ着くからな。
その横でボサツはいつものように(夜なのに)
サングラスをかけていた。
そして、時折、サングラスの下から頬に落ちる透明の液体をぬぐっていた。
「がんを宣告されて嗚咽した」
「家に帰ってからも涙がこぼれて仕方なかった」
様々な情報をサーチするたびに目にしたこのような「罹患者の涙」を私は経験していない。
涙は出なかった。
一人でどう対処するかを考えることで、
少しでも情報を得ることで一杯になっていて、
感情を爆発させるタイミングを見失っていたのかもしれない。
泣いたって仕方ない。
泣いたら心の防波堤が決壊する。
泣くよりも今、することがあるだろう。
そう思って涙の一粒も出なかった私が、
この日だけは二人を前に泣いた。
この二人がいてくれてよかった。
心からそう思った。