もう5年も昔。
たった5年かもしれないけれど、
まだ20そこそこしか生きていない私には、十分に昔のこと。
まだ制服が似合う私は、そこで偶然彼に出会ったの。
もう5年も昔。
だから、許してくれるよね。
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胸の奥の寂しさのように空気は冷たくて、
頭の中の虚しさのように世界は静か。
まるで私を反映しているみたいだけれど、
どうせこの町で私は一人きり。そう思って差し支えないかもね。
そんなことを考えながら学校への道とは反対方向に10分歩く。
手を温めていた缶のミルクティーが冷めたころにたどり着く。
そこが私の気まぐれな居場所だった。
そして。
そこが彼の唯一の居場所だった。

お互いの寂しさにつけ込み合っただけ。
お互いに不用意に近づきすぎただけ。
わかっていたのに。
それでも。
私は彼が大好きだったの。
隣にすわって一緒にいるだけ。
だけどたくさんのものをもらって、たくさんの気持ちを届けた。
コーヒーの飲み方。
美味しいケーキの食べ方。
苦手な微分と積分。
カメラと写真の楽しさ。
人の心の豊かさ。
私の知らない私。
キスの甘さ。
たった一口ケーキを食べるだけで、
あの人との思い出を100こ思い出せる。
そんな特別な味を、
私はもらったの。
いかにも秋の空っていう真っ赤な空は、私の気持ちの現れで。
乾いた空気の中に微かに感じる温みは、彼の優しさみたいで。
だれの悪戯なのか、だれのプレゼントなのかもわからない、
二人だけの甘い時間が確かにあったの。
確かにあったのに。
私はあなたに特別な味を教えることはできた?
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もう5年もたったけれど。
ここに私が来なくなって5年もたったけれど。
私の居場所はいつもここだった。
私の大好きな味はここにあった。
あなたはきっともう忘れているでしょう?
そうさせたのは私だもの。
秋雨のように、いつの間にか姿を消したのは私だもの。
許してくれる?忘れてくれる?
でも。
たとえあなたが許してくれなかったとしても…。
私の胸に大切にしまわせてほしいの。
私のだいすきな、トキメキの味。
