普段は受験に興味がない人でも、この時期になると自分の受験を思い出したりして、受験への関心が増す時期です。
私は全く見ていませんが世間では「下剋上受験」などというドラマが流行っているようですし。
そこで今日は、中学入試関連の話を少々。
受験につきものの「数字」といえば「偏差値」ですが、今日は「倍率」についてです。
この時期になると色々なメディアで入試倍率が公表されます。
しかしこの数値を安易に拾って踊らされないようにしてほしいのです。
特に当事者である受験生の親御さんには。
まず、この時期発表される数値は入試前のものですので「応募倍率」です。
つまり(出願者数)÷(募集人数)ですね。
例として募集が100人の学校に300人出願されれば応募倍率は
300÷100=3倍
です。
しかし、入試当日には実際には受験しない生徒が必ずいますので受験者数が少し減ります。
たとえば出願した300人中2割にあたる60人が受験しなければその時点で倍率は
240÷100=2.4倍
まで減ります。
また、第一志望率の高い一部のトップ校を除き、かなりの数の生徒さんは合格しても入学しません。よって私学側としては入学者数が減りすぎるのを防ぐため、多めに合格を出します。これを俗に「歩留まりを読む」といいます。受験における「歩留まり」とは「入学手続き率」のことです。
さて入試が終わり、さきほどの例で、240人の受験者のうち150名が合格になったとします。募集人数より50人多く合格を出したことになりますね。
するとこの時点で実際の倍率は
(受験者数)÷(合格者数)
=240÷150
=1.6倍
となります。
しかしこの学校は、歩留まり率を高く読みすぎていた(とします)。
つまり「150名中100名は手続きしてくれるだろう」と思っていたのに実際には90名しか入学手続きをしなかったとします。
すると募集定員割れになってしまいますのであと10名追加合格を出さないといけません。
いわゆる補欠繰上げ合格ですね。
この時点で合格者数は150+10=160名になっていますので、実質的な結果倍率は
(受験者数)÷(合格総数)
=240÷160
=1.5倍
まで下がりました。
こうして、当初「3倍」に見えた倍率が1.5倍まで下がるわけです。
以上は数をわかりやすくした例です。
実際には、中堅校ではもっと多くの合格者数を出します。
最近では中堅などと決して呼べない高難度の学校になってしまいましたが、小田急線沿いの男子校「東京都市大付属中」を例にとってみましょう。
同校のホームページによれば2016年度の2月1日入試では
募集人数120名に対して応募が1149名、受験者が1076名、合格者数が604名でした。
応募倍率は 1149÷120≒9.6倍
実質倍率は 1076÷604≒1.8倍
となります。
素人感覚では、だいぶ開きがあって驚かれるかもしれません。
しかし実際には応募倍率と実質倍率がこれくらい開くことは、頻繁にあるのです。
以上、「入試が初めてでわからないことだらけ!」というような方には少しは参考になったと思いますが、いかがでしょうか。
いずれにせよ、現時点で倍率を見て焦ったりするのはマイナスでしかありません。
逆も然りです。
つまり倍率が低いからと安心するのもマイナスだということです。
倍率は見ない!
これが一番です。
(倍率分析は学習塾と学校側の仕事です)
その学校に入学するにふさわしい実力を持っていれば合格し、持っていなければ不合格となる。
これが入試の常です。
一生懸命何年もかけて勉強してきた日々を、単なる倍率の数字ごときで踏みにじらないでくださいね。
中学受験生の皆さんの健闘を心より祈っております。
それではまた!
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