Setting Sons / The Jam
1.Girl on the Phone
2.Thick as Thieves
3.Private Hell
4.Little Boy Soldiers
5.Wasteland
6.Burning Sky
7.Smithers-Jones
8.Saturday's Kids
9.Eton Rifles
10.(Love Is Like A) Heat Wave
みんな合いも変わらずの無駄口を叩きながら
据え置きの灰皿の回りにたむろしていた。
この前出した写真がそろそろ出来上がる頃だ。
「オレ、写真を貰ってくるわ」
くたくたのコートを手に取るとドアを開けて出て行こうとした。
「ちょっと待って、私も行く」
そう言う声を背中で聞きながら振り向かずそのまま外にでた。
今日は良く晴れていて風も無く2月とは思えない暖かさだった。
学習塾のビルの横の駐車場を右に曲がりパン屋の横を通り過ぎると
1コ下のYが皿洗いのバイトしているホテル有る。
そろそろかな、いつもの行事が始まる気配がした。
歩きながらコートのポケットの中に手を突っ込み
ロングホープの白い箱とライターを出した。
Fの親父さんに貰ったジッポは古いもので、
ヒンジの部分に相当ガタがきていた。
「ちょっと、待ってよ」
いつもどおりの地点に到着するといつもどおりに
年頃の女の子とは思えないデカい声が聞こえて来た。
10メートルくらい後なのは振り向かなくてもわかる。
足を止めてタバコに火を点けていると
「一緒に歩く時は相手に合わせるのが礼儀でしょ」
いつもどおり礼儀作法の講習が横に到着したのを確認して、
火のついたタバコを咥えたままで歩き出した。
コッチが1歩に対して向こうは2歩必要な為に
結果として起こる仕方が無い現象なのだ。
ホテルの前の信号が青かったのでまっすぐ道を渡った。
後ろからついて来る足音を耳で確認しながら左の信号を渡ると
半年前からバイトをしているレストランの横に差し掛かった。
そのまま通り過ぎようとすると中からMさんが飛び出てきた。
「おいっ、すぐに入ってくれ。」
「ん?忙しいんですか?」
「いや、話し相手が居ないんだ。」
聞こえなかった振りをして一度止めた足を動かして、
Mさんの「裏切り者~」と叫ぶ声と
トコトコと間隔の狭い足音を後ろに聞きながら歩き出した。
レストランから100メートルほど駅に近い
地下街に続く通用路の様な汚くて狭い階段を下り
50円で出来るピンボール・マシーンが1台置いてある
踊り場の部分を利用した小さなゲームセンターの横を通り
階段の上り口に有る灰皿の前で止まり
もう一度大きく吸い込んでタバコを捨てた。
それから足音がすぐ後ろまで来た事を確認して、また歩き出した。
右に曲がって少し行った所にある本屋のすぐ横の写真屋で
コダクローム社の白黒フィルムで写した写真を受け取り
「今更モノクロで写す人はあなたたちくらいよ」
の声に軽く笑い返し中身を確認してお金を払った。
現像したフィルムと紙焼きされた写真の入った紙袋を
「ほいっ」と彼女に手渡して、来た道を戻りだした。
ポケットの中のライターをカチャカチャと鳴らしながら
The JamのPrivate Hellを口ずさんだ。
写真を見ながら歩いているせいだろう
ただでさえ遅い足音が一段と遅く離れていく。
仕方が無い、もう少しユックリ歩いてやるか。
アーティスト: The Jam
タイトル: Setting Sons [Bonus Tracks]