1980年 12月 クリスマス・イブ | ここから見に来て。[旧Quem tudo quer, tudo perde.]

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ここは音楽のBlogでした。実際には節操無く何でも有りましたが、アメブロと相性が悪いようなので、他に書く事にしました。出来ればそちらを、よろしくお願いします。


Double Fantasy / John Lennon And Yoko Ono

Side1
(1)Starting over (2)Kiss kiss kiss (3)Cleanup time (4)Give me something
(5)I'm losing you (6)I'm moving on (7)Beautiful boy
Side2
(1)Watching the wheels (2)I'm your angel (3)Woman (4)Beautiful boys
(5)Dear Yoko (6)Every man has a woman who loves him (7)Hard times are over

1980年


ビルのフロアーを壁で仕切っただけのShopの1つ、
室内のオープン・カフェ風とでもいう感じの喫茶店の
一番通行路に近い席にみんなは、たむろしていた。

お代わり自由のコーヒーを飲む連中を恨みながら
私は斜め向かいのレコード・ショップに大声で呼ばれ
店員の真似事のような状態だった。

少し前に店の常連のテクノカットの女の子を紹介されて、
それから盛んにどうだと質問される。
ボーイッシュだけど細身で顔立ちの整った美形の女の子だ。

こんなにも美人の相手なんて仕方がわからないと
ずっと断っている最中だった。
何処か価値観なんて言葉が気になりだしている時だった。

回りに集まる連中は変にワガママで身勝手なヤツばかりだ。
お互いに自分の欠けているものを求めるように
いつのまにか集まるようになっていた。

誰一人相手の存在価値を否定する事は無かった。
そこに居るのも居ないのも自由で、
それぞれがお互いに何処か憧れても居た。


あの日から時間の流れが濁りだしているようだ。
あわただしいはずの年末に
私たちは取り残されたようになっている。

別に笑わなくなったわけでも無いし
未来を悲観的に受け止め挫折し
何もする気が無くなったわけでは無い。

確かにあの日から出てこなくなったヤツも居る。
誰も口にはしないが、
誰もが大切なものを失った事は確かな事だった。


まだ元ビートルズのメンバーが現役で、
それぞれがソロを出している時代だった。
私の回りではレノンのファンが圧倒的に多かった。

私はビートルズに魅力を感じた事が無かった。
それは私個人の好みでは無かったと言うだけで、
ビートルズを否定する気は全く無かった。

私はビートルズのファンは嫌いだった。
何かにつけ人の音楽の趣味に口を出し
好きなものを聴く事をやたらと否定された。

自分の好きなものを自由に聴く事を
なぜ否定するのかわからなかった。
音楽なんて好き嫌いで聴けば良いだけなのに。


テーブルについてコーヒーだけを頼んだ。
天井に埋め込まれたスピーカーから
そろそろ聴き厭きだしたクリスマス・ソングが流れている。

明日の事や最近聴いた曲の事や正月の過ごし方が、
何も話さない事の辛さを埋めるように
それぞれの口から出てプカプカと浮かんでいた。

どこかしらそんな事はどうでも良くて、
それぞれ用事は有るのにここに座っている事が、
あくまでも確実に目の前に有る事実だった。

みんな誰かと居る事よりもここに来る事を選んだ。
誰も声をかけた訳でもないのに
今日もいつもと同じ事をしようとしていた。


今日もいつもと同じ様に時間は過ぎ、席を立ち
それぞれの方向に向かう為に外へ出た。
既に真っ暗になっていた街に寒い風が吹いていた。

地下鉄に向かうやつ、国鉄の駅の方向に歩くやつ、
市バスに乗るやつと手を振ってバラバラになった。
私は地下鉄1駅分を歩くことにした。

この駅の周辺から隣の駅へ向かう道筋は、
オフィスが多いせいか自動車の音だけが響き、
いつも喧騒から一歩ひいた感じがする道筋だ。

一人になると色々と考え出す。
歩きながら女の子の事や休みの事や
どうでも良いような事で頭の中がいっぱいだった。

いつもバスに乗るパチンコ屋の少し手前にある
ゲーム・センターの角を曲がり
いつもどおりに餃子屋の横をまっすぐ歩いていく。

顔見知りの呼び込みのお兄さんに
声をかけるなと言う気持ちを込めて笑顔を見せ、
二階から声をかける女の子は無視して通り過ぎた。

イットウ缶に材木の切れ端を突っ込み、
暖をとっている人の横をすり抜け、
集合ビルの階段を地下に降りていった。

真っ暗な地下のドアの向こうから
くぐもったデカい音でI'm losing youが聴こえてきた。
扉を開けると音はもっとデカく響いてきた。

暗がりの中でマスターと数人の客が年越しの話をしていた。
新年の最初の曲はStarting overらしい。
どうでもいいけど、クリスマス・イブだった。

アーティスト: John Lennon & Yoko Ono
タイトル: Double Fantasy (Bonus Tracks) (Rmst)