まず断っておこう。まだ読み切っていない。

町田康「ホサナ」。なにしろとにかく、強敵だ。

 

難解極まる語彙、支離滅裂な展開。不条理を混沌で煮込んで瓶詰めにしたような小説である。

「混沌」と言うと黒色を思い浮かべるであろう。私も打ち込みながらそう思った。しかし、この本に黒色という印象は抱かない。極彩色のネオンのような狂った色調である。

赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエロー、金、銀、紫、水色、オレンジ、ピンク色。あらゆる色相が瞬き嘶き、白黒二色の活字からは信じられない量の光彩が目をつん裂く。

その異様な筆致からしか摂取できない成分がある。まるで健康とは程遠い成分であるが、時に体が求めて仕方がない。だから彼の小説はやめられないのだ。

 

彼の小説を読んでいた頃、並行して読んでいた本があった。「車谷長吉の人生相談 人生の救い」という本である。

まぁ当時、いろいろ悩んでいた時期であったが、別にそれと関係なく興味本位で読んだのだが…

Q.「人生が辛いです」

A.「人生が辛いのは当たり前だし僕はもっと辛い」

不条理、というか理不尽というか、悩みなんてもっとでかい負の力をぶつけりゃ消えるんだよ!!という超ネガティブな脳筋思考に基づいた、まるで答えになっていない答えがひたすら続く。奇怪な、でも力に満ちた本だった。

車谷長吉氏は、常にズボンのチャックを開けているらしい。曰く「愚か者のダンディズム」であるという。まるで意味がわからないが、側から見たら意味不明なことでも当人が意味を見出しているのならそれは意味ある行為なのだということなのであろうか。

 

少なくとも、今日も酒は美味い。

それだけで、今日までを生きた俺の人生には意味があるのだろう。