好きな映画の一つに「有頂天ホテル」が挙げられる。

いわゆるグランド・ホテル形式をとる作品である。群像劇と言った方が通じは良いのだろうが、こちらの言い方のほうが好みなのだ。

同時にバラバラに勃発するそれぞれの話が順々につながり、ラストへ向けて一本の筋道を描き出す。この様式で描かれる作品の中、名作と呼ばれるべき一作と勝手に思っている。

他に好きな映画といえば「天使にラブ・ソングを…」「八つ墓村(1977年版)」「ダークナイト」「天国と地獄」「ウォッチメン」「スルース」あたりだろうか。

 

そんな中読んだ伊坂幸太郎「ラッシュライフ」。名著であると、深い充足感に噛み締めながら本を閉じた一作だ。

 

たしか、多分どっかのまとめサイトで見かけた「群像劇の名作」に対するレスポンスにあった「ラッシュライフは唸った」という複数の投稿に惹かれて読んだ。これが満点大当たり、バックスクリーン直撃の大ホームランであった。

 

読み終わるや否やすぐさまページを捲り、冒頭から再度読み始める経験もなかなかない。そして、「オッフwwwwww」などと電車で言っているのだ。なんとまぁお気楽なことか。

しかし、こういった作品は二度目に読む時が一番面白いのだ。すべてを知った上で答え合わせを進めるこの瞬間。手に持ったままだったピースのハメどころが見つかった瞬間、気づいていなかったボタンの掛け違えを直せた瞬間、その一瞬一瞬に魂が乗るからこそ楽しいところがある。

特にこの「ラッシュライフ」、最後まで読み進めても分からなかった、もとい描かれなかった、と思っていたことが、再度読み直したら「こんなところに。。。。」

この快感はそうそう塗り替えられる気がしない。

 

ピースがはまって完成したジグゾーパズルは、最後に全体を眺めて悦に入ることで完成を自覚する。

話のすべてを見通したときの絶頂感を、ぜひとも味わってもらいたいものである。

 

どうでもいいけどポニテの若く綺麗な白人女性って想像を掻き立てて心の中の変な動物が騒いじゃうね。