今日も今日とてビールが美味い。
飲まない!と心に決めたとしても、喉の渇きに人間は抗えない。
酒を求めている時の身体は実にわかりやすい。舌の付け根の、首根っこの辺りがじんわりと熱を帯びて仕方がなくなる。熱は当然乾きを呼ぶ。その乾きを癒せるのはビールしかいないのだ。
ふと思い出す。タバコを吸っていたころも、そんな不可思議な喪失感を埋めんがために吸っていた。
最近はなくなったと聞く、GAULOISESのブロンドライト、通称赤。香料に燻されたようなスモーキーな風味が大好きであった。カポラルに手を出せない臆病者の私ではあったが、あの味には随分と楽しませてもらったものだった。
タバコが吸いたい時は、脳に煙が足りていない気分になる。だから、吸い込む。口から、鼻から。あの紫煙をいっぱいに吸い込む。そうすることで、顔の中心を通って頭に煙が充満していくのだ。当然、頭の中は靄がかかったようになり、身体は酩酊にもにた前後不覚状態に陥る。それがいい。それがたまらないから、当時の私はタバコを好んだのだろう。
今は吸うことはない。しかして、たまに吸いたくなる。
今日みたいな日なら、吸ってもよいか。たまの、悪事。ちょっとした悪事だが、これがたまにしたくなる。
だから私は、今日もビールを飲むのである。