去年言葉をかわさないままさよならした彼がNYに来た。

今は他のギークな彼に夢中だったから、正直会うのがめんどうだった。

でも、あいかわらずの彼のテンポ。

スローな語りかけ。

ゆっくりとやさしい笑顔。

時折強くなるまっすぐな視線、

広い肩幅にぴんと張った背筋。

綺麗な鼻筋。

美しく鍛え上げられた体。

彼のペースに、いつのまにかまた惹きこまれそう。

他の男に夢中な時だから、心に余裕もあるし、彼に対して何も期待がない分居心地が良い。

こうしてたまに会うには、彼はとても魅力的だ。

未だに何も言ってはくれないけど、一緒にいる時にとても大切に扱ってくれる彼の態度が彼の言葉なんだろう。

今夢中な彼の話もせず、新しい恋人が出来たのかも聞かず、ただ一緒にいてゆったりと会話する。

聞きたいことや言いたいことはたくさんあるのに、彼の空気がそれをさせない。

まだ私を信じているのかもしれない。別れ話をしたわけではないし、ただ離れてるだけだと。

もどかしいゆえに暖かい私達の関係。

もしかしたら永遠にこうしてゆったりと続いていくのかもしれない。

手もつながないままで。




今まで色んな男に抱きしめられたけど。

硬すぎたり、細すぎたり、大きすぎたり。

彼は他の男のように私を抱きしめない。彼のは抱っことしか言いようが無い。

でも、彼の抱っこは私の体とぴたりとはまる。

彼の洗い立ての白いシャツはいい匂い。

初めて会った時に、まさか2人がこうなるなんて思いもよらなかった。

徐々に本当にゆっくり、お互いをさぐりあっているうちに。

だんだんと欲情して彼に抱かれたくて仕方がなくなっていた私は、半場強引に。

そんな私を嬉しそうに彼は迎えた。

だって、彼も餓えていたから。でも、劣等感と過去の傷で彼はずっと我慢をしていたから。

その時に、今まで時間をかけて探していた男はこの人だったのかも?

と思わずにはいられないほど、二人はしっくり溶け合いすぐに夢中になった。

でも、今までとはちがうタイプの男にはまった自分が怖くて、わざと距離を置いてみたり。

何事も無かったかのように皆の前で彼を知らん振りしたり。

なのに彼に冷たくされると、ポーカーフェイスを保てず。

誰にも見せたことの無い自分を、彼には見せてしまう。。

彼の前では小さな女の子みたいに、甘えたり駄々をこねたり、涙ぐんだり。

そんな時、彼はちょっと迷惑そうに。でもそっと腕を回してあやすように抱っこくれる。

少し年下なのにまるでお父さんのように。

白くきれいな手を私の腰にまわし、ちょっと上を向いてる高い鼻を私の頬にすり寄せる。

広すぎない肩幅にぴたりとはまる私の首筋、大きすぎない胸板に圧迫されない私の胸、少しぽこりと出た筋肉の無いおなかにくっつく私の太もも。

時折私をみつめるやさしいブルーの瞳。

呼吸の速度が同じ彼に抱かれ、初めて息が合うという言葉の意味がわかった。

これからどうなるか未来のことは考えず、ただ飽きるまで。

彼に抱っこしていてもらいたい。







を、会話の途中でなぜか妄想?空想?した瞬間、

彼も同じことを「一瞬」考えたのがわかった。

彼の表情と態度から。

私達はとても似ている。

誕生日も1日ちがいで、苗字も1字ちがい。

恋愛感も似ていて、とても話が合う。

今までとにかくいろんな人に、一番お似合いのカップルだの、付き合ってるのかと思っただの

言われ、まったくそういう関係では無いのだと説明してきてたけど。

なんだか同じような境遇の、お互いの恋人の話をしていたらなぜかふいに

彼とキスがしたくなったんだ。

もちろんしなかったけど、

彼にはきっと私が考えたことがわかった。

ただただ一緒にいて、楽しくて、気楽で笑顔が絶えなくて。。。。

そんな人と一緒にいるのが一番だよね!

と、言って浮かんだのが目の前の私達だった。

今は他に好きな人が、、、実はそれほど好きではないからめんどくさい相手がいて。

だからってお互いを逃げ場にしたくはないから。

ごまかさず、今はこのままで。

男女の友情、兄妹愛、全ては擬似だけど。

それを二人とも知っていて、とっくにきずいてるけど。

しばらくは。。。たぶん一生このまま。

私達なりの一番居心地のいい関係のまま。