1967年全米1位(この曲を蹴落として1位となったのが "All You Need Is Love")、カナダで2位。Robby Krieger によると、Jim Morrison から「何か普遍的な曲を書いてくれ」というリクエストを受けたので、火、水、空気、土の四元素の中からテーマを選ぶこととし、Rolling Stones の "Play With Fire" が好きだったことから「fire」について書いたとのことです。元々はフォーク調の曲だったものが、Ray Manzarek がイントロのオルガンのリフを思いついたことで「火がついて」、現在のような曲調に進化。そして、当初シングルカットの予定はなかったのですが、ラジオ局にリクエストが殺到したため、急遽シングルカットされることとなり、その際、アルバムバージョン(7分6秒)のままでは長すぎるということで、シングルバージョンは2分52秒に短縮されました。しかし、結局のところ、ラジオ局はアルバムバージョンの方を好んでオンエアし続けたということです(実際、私も、シングルバージョンを聴いたことはほとんどない)。なお、オルガンとギターのソロは、John Coltrane の "Olé" と "My Favorite Things" をベースにしたもの。また、Jim Morrison は、この曲が嫌いで、ライヴで歌うのも嫌だったようです(自分が曲作りにおいてわずかな役割しか果たせなかった曲でバンドが人気を獲得したことが面白くなかった模様)。

 

 

この曲に関して、Doors がエド・サリバン・ショーに出演した際の有名なエピソードがあります。この曲の「Girl, we couldn't get much higher」という歌詞(端的に、「higher」 という言葉)は薬物の使用を思わせるとして、番組のプロデューサーが「higher」を「better」と変えるように要請したのですが、Jim Morrison は(これを無視して?)原詩のまま歌ったため、怒り心頭に発した Ed Sullivan は演奏終了後 Jim Morrison との握手を拒否し、Doors は以後エド・サリバン・ショーからお呼びがかからなかったというものです。

 

このエピソードは、Oliver Stone の映画『The Doors』(主役の Jim Morrison を演じた Val Kilmer が激似ということで話題となりましたね)では次のように描かれています。

 

 

実際のエド・サリバン・ショーの映像はこちら。

 

 

映画では、Val Kilmer 演ずる Jim Morrison が、「higher」の部分を挑発するかのように強調して歌っていましたが、実際には Jim Morrison は淡々と(意図的のようにも聴こえるが)歌っています(ただ、2分過ぎの「Try to set the night on fire」という歌詞の「fire」を強調して歌っているところは映画を彷彿とさせる・・・あ、逆か。映画のシーンはこれを参考にしたのかな?)。 Jim Morrison は緊張したため普段どおりに元の歌詞のまま歌ってしまったと釈明していますが、Ray Manzarek はわざとやったのだ(つまり確信犯)と述べています。映画は基本的に後者の説に立ちながら、盛り上げるために演出したということでしょう。

 

ところで、映画のシーンでも触れられているように、Rolling Stones にも同じようなエピソードがあります。彼らがエド・サリバン・ショーに出演して "Let's Spend The Night Together" を演奏した際に、このあからさまな歌詞(「××××しよう」・・・奇しくも英語でも日本語でも「four-letter word」・・・という意味)の「the night」を 「some time」に変えるように要請されたのです。Mick Jaggar 以外のメンバーはこれに応じて「some time」と歌ったのですが、Mick のみゴニョゴニョと誤魔化していました(「the night」と歌っているように聞こえる・・・少なくとも「some time」とは歌っていない)。[抹消した箇所は、2016年11月に本記事を執筆した当時、エド・サリバン・ショーでのパフォーマンスの映像をYouTube上で見つけられなかったため、20年以上前にNHKで同番組を観たときの記憶を頼りに記述したものですが、今回その映像をYouTubeで見つけて視聴したところ、Mick もしっかり「some time」と歌っていたので、訂正します(きちんと確認せずにあやふやな記憶のみで書いてはいけないという自戒の念を込めてあえて抹消線を付した形で元の文を残しておきます)。Mick のことだからそのような不当な要請に唯々諾々と従うことなくきっと反抗しただろうという思い込みから記憶を改変してしまったようですが、買い被りでした(←20年以上前に観たとき単に聞き取れなかっただけのくせに、なにをエラそうに)。]

 

こちらがその映像。

 

 

たしかに「some time」って歌ってるな(Mick のことを云々するより、これを聞き取れなかった自分のリスニング能力を恥じるべきやな)。なお、これをもって、Doors と比べて Stones はヘタレだと難ずる向きもありますが、アメリカは Stones のホームグランドではないので、そこまで要求するのは少々酷なような気もします(←一応気を遣ってる(笑))。