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日本フィナンシャルセキュリティーズ㈱
谷本 憲彦
商品アナリスト・東京商品取引所認定（貴金属、石油、ゴム、農産物、オプション)、証券一種外務員
＜昨日会員様に向けてお送りした内容です＞
日本時間先週金曜日21時半、米雇用統計が公表されました。
主な発表内容は、以下の通りです。
先月に続き、今回もさえない結果となった米雇用統計でした。
失業率、そして平均時給は事前予想を上回りましたが、「非農業部門雇用者数(NFP)」や「労働参加率」が予想を下回っています。
高まっていた次回6月FOMC会合での「早期テーパリング協議」期待は後退、為替市場ではドル安が進み、米債利回りも低下しています。
ユーロドルは5月14日以来となる1.21割れを試したものの、雇用統計発表により一転1.21台中盤から後半水準にまで戻しています。
雇用統計発表直前の米10年債利回りは1.63%でしたが、発表後は1.55%近辺へ急激に低下しています。
前日のADP雇用統計が予想を大きく上回る結果だっただけに、為替や債券市場では一気に反対売買が出たようです。
景気回復が期待された米市場において、今回の雇用統計は水を差す結果となりました。
しかし発表内容を確認すると、今回の雇用統計は「景気後退懸念」ではありません。
まず「平均時給」に関してですが、前月から比べ0.5%増えています。
通常の月と比べると増え方が半端なく大きいです。
さらに労働参加率が、前回61.7%をも下回っています。
時給は前月より大きく増えているものの、労働参加率は前回を下回る。
この結果が何を意味するのか。
それは、「低時給の仕事に、労働者が未だ返ってこない」ことを意味しています。
米国ではワクチン接種が進み、経済活動の再開が進んでいます。
その分人手が必要となりますが、パート・アルバイトなど時給の低い働き手にとっては、働くよりも「給付金をもらったほうが割に合う」ことになっています。
先週木曜日のカプラン・ダラス連銀総裁インタビューに、よく表れています。
労働市場の「パズル」、金融政策では解決できず
米ダラス地区連銀のカプラン総裁は3日、何百万人もの国民が失業しているにもかかわらず、雇用主が労働者の採用に苦慮する中、こうした労働市場の「パズル」を解く上で金融政策はあまり効果がないとした上で、連邦準備理事会(FRB)は「早め」に量的緩和の縮小(テーパリング)に関する議論を始めるべきと改めて主張した。
ライス大学が開催したバーチャルイベントで「もしあなたが対面型の職業に就いていたとしたら、復職にはさらに多くの誘発が必要だ」と指摘した。新型コロナウイルス禍に伴い支給される失業手当の上乗せ分を得ることで、労働者はより良い仕事に就くための時間を稼ぐことができ、結果として労働力の需要と供給に不均衡が生じていると分析。FRBにはそうした問題への対応力が十分に備わっていない半面、「失業手当がなくなれば、需給は均衡していく」と予想した。
全米の約半数の州では今月中に週300ドルの失業給付加算が終了し、残りの州でも9月中に終了する見通し。
また、住宅価格の歴史的な値上がりを踏まえ、「経済が新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を乗り切り、前進していることが明らかな状況で、住宅市場はFRBが現在提供している規模の支援を必要としていないと考えられ、住宅ローン担保証券(MBS)購入の有効性についての議論を早めに行うことが望ましい」と提案した。[3日ロイター]
記事中にあるように、9月には全米で失業給付加算が終了する見込み。
さらに、高騰する住宅価格に対しても言及されています。
今回の雇用統計はカプラン総裁の言葉を裏付けるもので、早期の「給付金打ち切り」や「住宅価格高騰を抑え込む」キッカケになると思われます。
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