アメリカ大統領は行政権を持つ一方で、立法に関する権限については制約があります。
先日執り行われた一般教書演説でよく分かりましたが、これも数少ない大統領が持つ立法権で、連邦議会への勧告権と言われています。
議会に法律の制定を要請するわけです。
勧告権とともに大統領に与えられている権限が、拒否権です。
1.議会が法案を制定、大統領に送付
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2.大統領が署名するか、10日経つと法案成立
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3.承認しない場合は、署名をせずに議会へ10日以内に差し戻す(拒否権)
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4.法案を修正し大統領に再送付する、もしくは上下両院3分の2以上の多数で再可決して大統領の署名なしで法律にする
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5.会期内に終わらなければ廃案
メキシコ国境の壁建設費確保のためトランプ米大統領が出した「国家非常事態宣言」について、FOXニュースの番組に出演したミラー大統領補佐官(政策担当)は17日、米議会が宣言の不承認を決議した場合、トランプ氏が拒否権を発動するとの見通しを示した。
意外でしたが、もしトランプ大統領が拒否権を発動すると、政権発足後初となります。
一方で週末報道にありましたが、ニューサム・カリフォルニア州知事やジェームズ・NY州司法長官は、法的措置に言及しています。
民主党のペロシ下院議長とシューマー上院院内総務も非常事態宣言を批判しており、法定闘争を挑む公算が大きそうです。
トランプ大統領は非常事態宣言をしたものの、壁建設の実現にはまだ時間が掛かりそうです。
ではトランプ政権は壁を作れないのか?となりますが、次のことが指摘されています。
・議会で承認された13億7,500万ドルで55マイル分の壁が作れる
・麻薬カルテルや他の犯罪活動の起訴によって没収された資金から、6億100万ドルの資金を供給する
・麻薬密売と戦うために、軍建設資金から壁の建設費として25億ドルの資金を供給する
トランプ大統領は壁建設のため57億ドルを要求していましたが、議会で承認された13億7,500万ドルと薬物関連基金の6億100万ドルについては非常事態宣言なしで利用できるようです。
その分で壁を建設しながら、訴訟への対応をしていく計画なのでしょう。
ロイターにも「トランプ大統領は取引(ディール)よりも闘争を選んだ」のように書かれていますが、「闘争」の裏では着々と壁建設の計画は進んでいるようです。
参考までに
・アメリカとメキシコの国境は約1,951マイル
・建設費用はフェンスなら930万ドル、壁なら1,780万ドル(1マイル当たり)
・ちなみに1マイルは約1.6キロメートル
どれくらいの距離の壁を作ろうとしているのか、どれくらいの費用が掛かるのか。
北海道から沖縄までが、ちょうど3,000キロメートルだそうです…。
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谷本 憲彦
商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、農産物、オプション)、証券一種外務員