イタリア共和国憲法第92条において、「イタリア大統領は、首相の任命および首相の提案に基づく各大臣の任命を行う」とあります。
その選任手続に関しては明示されていないことから、イタリアの大統領は首相任命権を実質的に行使し得ると解されています。
通常は首相候補者が有権者に明示された上で総選挙が行われるため、大統領が任命すべきものは明らかです。
ところが今年3月のイタリア総選挙では過半数を獲得した政党がなく、得票率33%でトップの「五つ星運動」と得票率17%の「同盟」が連立交渉を行いましたが、物別れに終わりました。
このような場合大統領は、自らの主導でその後の対応を模索することになるのです。
今回「五つ星運動」と「同盟」は連立を組み、ジュセッペ・コンテ氏を首相候補といたしましたが、親EUである大統領はコンテ氏が示したEU懐疑派の閣僚人事を拒否。
マッタレッラ大統領は28日、国際通貨基金(IMF)元高官のカルロ・コッタレッリ氏を次期首相候補に指名し、組閣を命じることとなりました。
最初から大統領が気に入った人を首相に任命したらいいのでは?となりますが、新内閣が正式に発足するためには10日以内に上下両院の信任を得る必要があります。
そしてそこに立ちはだかるのが「五つ星運動」と「同盟」。
おそらく今のままでは、特に上院が通らないと思われます。
このようにイタリアの政局不安が金融市場にも影を落としていますが、以前にもありましたね。
特にイタリア国債10年物利回りが7%を越えた2011年にも、同様の動きが見られました。
このときはギリシャ危機に端を発し、ユーロ域内債務残高第2位であったイタリアに目が付けられました。
イタリア国債をムーディーズやフィッチが軒並み格下げ。
当時元凶とさえ言われていたベルルスコーニ首相が内閣信任で生き残り、さらに暫定内閣や大連立政権樹立には反対、総選挙も2月までは行わない意向を示したことにより国債利回りが急騰。
このときはドイツ債との利回り格差が4%台後半まで広がったため、話題となりました。
さて前置きが長くなりましたが、現在も同様の事態となっており、先行きが懸念されています。
特に前回とは違い米国は引き締め途上であるため、米債との利回り格差にも注目が集まります。
(米伊格差とは、米10年債利回り-伊10年債利回り)
リーマンショック時に金は大きく売られたものの、その後はほぼ米伊利回り格差に連動しています。
ここ数年は欧米の金融政策の違いから米債利回りの方がやや高い状況が続きましたが、ひょっとすると2014年10月以来の逆転劇が見られるかもしれません。
そうなると、安全資産として金の価値が認められるかもしれませんね。
※イタリア債利回りが急騰しており米債を逆転しそうな勢いでしたので、白金記事と入れ替えました。
→逆転しました。
→再逆転しました。
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谷本 憲彦
商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、農産物、オプション)、証券一種外務員