新手のアプローチ
テレビを点けたら耳慣れぬアナウンスが流れてきた。
――これから知っておきたいニュースを街の声を交えてお伝えします。――
街の声? 一瞬、何のことかと不審に思ったが、何のことはない、従来も時折やっていた街頭インタービュで、通行人を呼びとめ、意見を聞くというあの手法をさらに頻繁に取り入れようとしているのだと納得した。
視聴者のテレビ離れが話題になってから久しいが、最近では誰もが実感としてテレビに対して魅力を感じなくなっている。そのような視聴者のテレビ離れに危機感を抱いたテレビ局側が視聴者との距離を近づけようと思いついた手法なのだろう。局側はニュースの合間などで視聴者に対し、意見やメッセージの投稿を呼びかけている。つまり視聴者を巻き込んだ双方向性の情報発信を目指しているのだろう。
思惑とおり視聴者が戻ってきて、局側が活気付き、理解しやすく魅力的な番組作りに取り組んでくれれば、私のような孤立状態の高齢者にとって、外の世界へのゲートウエイとしてのテレビの果たす役割は貴重である。
だが、いささか懐疑的な視点でこの一連の動きを見ると、いくつか気になる点が浮上してくる。
この街の声として採用されるのはどのような方法で採用したのだろうか?実際に街頭インタービュを行い、アット ランダムに通行人を呼びとめ、マイクを向け、カメラに向かって意見を述べさせたのだろうか?また、そのようにして収録した街の声をあらかじめチェックせずに全員の意見を放送したのだろうか?
論議をよぶ話題、世論を二分
するような話題、そのような話題が次々と発生する世の中にあって、テレビ各局にはそれぞれ自局のカラーがあるのは当然だと思うが、メディアであるからには情報を発信する際にはあくまでも正確な情報を迅速に伝えるのは基本中の基本であり、かりにも自局のカラーを視聴者に感ずかれるような報道は許されない。
だが、街の声と称し、自局の意向に沿った街の人を事前に採用し、その選別した街の声を取り上げれば、自局の声を代弁させることが可能となるだろう。
視聴者はテレビ各局の放送を聞いているうちにそれとなく各局のカラーに気づき、習慣的に好みの局に固定して視聴する傾向があるように思う。
だが。万が一にもメディア側が街の声を意図的に利用し、視聴者を自局の意向に沿った方向にとミスリードするよな流れは絶対に避けねばならない。なんと言ってもメディアの影響力は侮れない。世の人々は流されやすい。それゆえに、偏った情報ほど恐ろしいものは無い。私のように戦前、戦中のいわゆるフェイク情報により、洗脳された苦い記憶がある者にとっては情報操作に対しては常に警戒を怠らず、自身の頭で考え、情報を精査し、無条件で情報を信じ込まないように、リテラシーを日ごろからブラシアップする必要があるのでは、と自戒の念をこめ、痛感している。