梅雨の時期に学んだある幼稚園の先生の言葉 | 自分らしく生きるヒント ~My Life My Style~

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保育士として7年就業。その後、教育サービス企業で教室運営指導や教務・研修を担当。現在は研修業務は休業。外資企業にて通訳兼アシスタント。
プライベートでは、古典芸能(歌舞伎・文楽・落語・講談など)鑑賞に殆どの時間を費やす。

梅雨らしい曇り空&雨の日が続きますね。


私には、この時期になると思い出す出来事があります。


短期大学生時代(保育科専攻)の幼稚園実習なるものがあったのですが

実習先の幼稚園が、「自由保育」のスタイルでした。

「自由保育」とは、幼稚園によって実施方法は異なるのですが、

私の実習先の幼稚園では、

年間カリキュラムや月ごとのテーマに基づいて、決められた物を作ったり、

決められたことをするのではなく、子どもの発想力や想像力、思考によって

自由に行っていく(時間配分は決まっていました)スタイルでした。


この「自由保育」は、先生の経験やスキル、先生同士のコミュニケーションの

良し悪しで、効果の度合いが変わってくるという難しいスタイルですが

とても勉強になったことを覚えています。


その一例として・・・


その日は年少組での実習だったのですが、その日も朝から雨でした。

「お始まり」と呼ばれる、一日の初めにクラスごとに出欠、月日、曜日、天気などを

クラス皆で確認する一斉活動の前に「自由遊び」がありました。


Kくんという男の子が「葉っぱの上のカエルさん、どうしたかな?見に行きたい」と

雨が降る(小雨ではなく、しっかり降っていました)園庭を見ていました。


私は、雨が結構降っていることを配慮し、

「雨が止んだら見に行こうか、今、出たら、ビショビショになっちゃうからね」と

止めました。


Kくんは、そこでダダをこねることもなく、ただただ、じっと雨の園庭を見つめて、

「雨、止まないかな~」、「カエルさん、どっか行っちゃったかな~」などなど

その場(テラスのような場所)から離れず・・・。

私は、「じゃあ、折り紙でカエルさん、作ろうか?」「カエルさんのお絵かきしようか?」

など、代替え案を出してみましたが、Kくんは外を眺めていました。


そのうち、自由遊びが終了してしまい、「お始まり」が始まってしまったことで

Kくんは諦めてしまいました。



その出来事を担任の先生とのフィードバックで話したところ、

最後まで私の話を聞いていた先生は・・・


見に行ってみればよかったのに・・・。


「は、は、はい?」

「でも、結構、雨が降っていたので、ぬれちゃうかと思いまして・・・」


えっ?もちろん、長靴履いて、傘さして・・・。

あっ、Kくん、レインコート持ってたよね? (えっ、そこ?)


「でも、ずっと外にいたら、ぬれるし・・・。他の子どもたちも出たいって言われたら困るし・・・」


雨の中を出ていって、想像してたよりぬれることがわかれば、

Kくん、また考えると思うよ。


私は、Kくんのカエルへの興味・関心より、「雨の日は屋内で遊ぶもの」という固定観念や

ある意味、自分の手間を優先していたように思いました。


確かに集団保育なかで、一人が外に出ると言ったら、「ぼくも」、「わたしも」と言い出す子が

出てくるかもしれません。 

(ちなみにこの幼稚園は、自由保育ということもあり、複数担任制であり、ペアクラス制度といって

両隣のクラスとの縦割り保育も行っているため、両隣の担任も自分のクラス以外の

クラスにも関わることがあります)


しかし、Kくんがテラスにいる時にも、誰も「外に行きたい」とは言っていませんでした。

その点も、「子どもはこうするものだ」という『固定観念』だったのだと思います。


また、実際に外に出てみることで「雨にぬれる」も体験することになります。

その体験によって、Kくんが「雨の日は、こうなるものだ。だったら、お部屋で遊ぼう」という

判断をしたかもしれません。 実はこの「判断」も後にKくんが物事を判断するための

練習でもあるわけです。


私は、Kくんの貴重な「自由遊び」の時間を奪ってしまったことになったのです


この幼稚園、全盛期には(私が実習している頃)、約570名の生徒が在園していました。

今では考えられない規模の大型幼稚園でした。

(現在は、幼保というスタイルに変わっていますが、それでも全盛期ほどの園児数はいないようです) それでも、一人一人の個性・興味・関心・特技を最大限に引き出すことを実践していた

幼稚園だったと思います。


現在は、どこの幼稚園も園児数も減り、ひとクラスの人数も少なくなっている分、

一人の園児に関わる割合も増えていると思います。


今こそ、マニュアル型の保育ではなく、一人一人の子どもの興味を引き出し、

子どもが自ら取り組もうとする気持ちを最大限に生かした保育ができるといいなと

思います。