「なるほど…イムジャの予想通りでしたか」
その日の夜、帰宅したヨンはウンスから話の一部始終を聞いた。
おおよその推理は聞いていたが、この件はウンスでなければきっと分からなかっただろう。
その煙草という薬草は、典医寺という高水準の医員や薬員でさえ知らなかったわけだし、マンボですらどこかで聞いたような、と言う程度だった。
「ええ。
私もまさかこの時代に、しかも高麗に煙草があるなんて思わなかったわ」
「その薬草の入手先だが、調べているうちに思いがけない名前が上がってきました」
「え?誰?」
「ヤンサという男を覚えていますか」
「もしかしてキ・チョルのところにいた?」
「ええ。
あの男はキ・チョルのために、あらゆる珍しい薬草を異国より取り寄せていたようです。
煙草もその一つで、ところが仕入れた後にキチョルが死んだため、肝心の買い手がいなくなってしまった。
高価な薬草とはいえ、知らない薬草を買う者はなかなか現れず困っていたところ、変わった薬草や茶を集めているというオム医員に出会ったそうです」
「へえ…まさかこんなところでキ・チョルの名前が出てくるなんてびっくりね。
昔あの屋敷の薬剤室を見せてもらったけど、典医寺よりはるかに立派だった。
チャン先生が見たら喜ぶかな、と思ったくらいよ」
「王家を凌ぐ財力でした故」
「ほんとよね。屋敷の中、贅を極めるって感じだったもの。
ねえ、そういえば、キ・チョルの財産ってその後どうなったの?」
「没収という形で国庫に入ったはずです」
「やっぱりね〜。
一体どれくらいあったのかしら。
金銀財宝ぎっしり詰まった蔵とかありそう。
眩しくて目が眩むわね…ああ、押収現場に立ち会いたかった!」
ウンスは目を輝かせたが、正直ヨンはその頃のことはほとんど記憶にない。
ウンスを失い、絶望の中にいたからだ。
正直キチョルの財産などどうでも良かったし、そもそも財宝というものにさほど興味もない。
だが、彼の能天気な妻はどうも違うようだ。
「イムジャはまことに光るものがお好きのようだ」
「人をカラスみたいに言わないでくれる?
単なる野次馬的な興味じゃない。
そりゃあまあ…嫌いじゃないわよ?」
蔵に詰まった宝の山ってなんかワクワクするでしょう?一度は見てみたいわぁ…
ウンスはそう言って夢見がちに瞳を輝かせたが、実際は、キ・チョルの屋敷には思った程の財宝は残っていなかったとヨンは後に聞いていた。
散財し尽くしたのか、羽振りがいいのは見せかけだけだったのか…。
どこかに隠し財産があるのでは、という噂が拭えないのはそのせいだ。
そんな事を知ればすぐにでも探しに行きかねない好奇心旺盛の妻には、決して教えられないが。
「あなたがそう言うなら、チェ家の蔵も手入れすることにしましょう。
これから少しずつ入れていけば、いつかは一杯になるのでは」
「え?チェ家にも蔵があったっけ?」
「ええ。今は単なる物置になっているはずです」
「へえ…
ね、それ、明日開けていい?
なんかお宝出てくるかもよ?」
「どうぞお好きなように」
そう言えば王様から賜った品々がどこかにあったはずだ、そんな事を思い出しながら、
いやその前に新しく錠前を変えねばならないな、とも思い立つ。
そういうのも案外楽しいかもしれない。
ーーヨンや、父の遺言を忘れたのか?ーー
空からそんな声が聞こえてくるような気がして、ヨンは上を見上げた。
(父上、俺の財宝はこの妻ひとりです故…ご安心を)
ヨンはそっと心の中で独りごちた。
ゴールデンウィークですね
みなさまいかがお過ごしでしょうか
私は後半の4日間を休みをとる予定なのですが、
そのために今日は休日返上、なんなら今週はその4日分の仕事を詰め込んだので
へとへと…
いつも言ってるけど
連休なんて○○食らえ!
今年もそんな気分です
さて、そんな荒んだ私もヨンとウンスのほっこり会話に癒されたくて
一話増やしてしまいました
しかし、案外この会話、重要だったりするんですよね…
次回はいよいよ最終回の予定
侍医とオム医員、ウンスとアニ
仲良くなれるかな〜
まだこれから書くので、ちょっと待っててくださいね
コメントのお返事、やっと返せました
本当に嬉しく、有り難く読ませていただいています
ありがとうございます