まさかこんな展開になるとは…。
珍しくヨンは狼狽していた。
ウンスからの贈り物が嬉しくないわけではない、もちろん。
だが、ヨンにはウンスに言ってない事があった。
「実は…」
「実は?」
彼女の大きな目が真剣に見つめてくるのを、視界に入れないようにしながら答える。
「今は…鬼剣が手許になく」
「えっ、嘘!いつもそこに…あれ?ない?どうしたの?」
ウンスが気付かないうちに事を収めるつもりだったのだが、どうやら無理なようだ。
「…質に…」
「質?!」
案の定ウンスは驚いて大声を出した。
「質って…うち、そんなにお金がなかったの?食べるものも買えないくらい?」
「いえ!決してそのようなことはありませぬ!」
ヨンも声をあげて否定する。
「じゃあ何で?
あれはあなたが命の次に大事にしていたものじゃない!
そんなものを質に入れるなんて、よっぽどお金が必要だったってことでしょ?」
「それは……まあ…」
ヨンは唇を噛んだ。
柔らかく美しい絹の布で、首を締められている…そんな気持ちになる。
「そう…わかったわ。
で、一体何に必要だったの?」
ここで黙るのは悪手だと分かっていても、今この流れであれを出せるはずがない。
あれを…あの簪を買うために質に入れたなど、どの口が言えるだろう。
たとえ、信頼出来るところに預けてあって、後から取り戻すつもりだったとしても、だ。
「言えないようなこと?」
ウンスは更に追い討ちをかけてくる。
だが、なんと言えば彼女が納得するのか咄嗟に思いつかない。
毎日魚ばかり相手にしていたせいで、こういう時の切り抜け方が鈍ったのだろうか。
ウンスの大きな目にさっきまでとは違う色が滲む。じっとりとした、疑いを孕んだ目だ。
「まさか…」
「まさか…何です?」
「妻に言えないお金といえば、どの世界も相場が決まってるわ。酒、女、博打よ…。
あなたに限ってそんなことはないと思ってたのに」
「なっ…!」
ヨンは言葉を失った。
一体ヨンのどこにそんな素振りがあったというのだ。
だが、ウンスにはとにかく思い込みが激しいところがある上、今は酒が入っている…。
嫌な予感しかしない。
「…イムジャ」
これ以上変な勘繰りをされてはたまらない。
ヨンは観念して、懐から簪を取り出しウンスの前に置いた。
「これは…?」
「俺も、あなたへあげたかったのです」
ウンスが簪を手に取った。
黙って食い入るように見つめている。
俯いたまま、もしや泣いているのかと不安になるほど、長い間沈黙が続いた。
「ヨン」
ウンスが簪を置き、顔を上げた。
おもむろに赤い帽子に手をかけ脱ぐと、髪がはらりと零れ出た。
「イムジャ…!!」
今度はヨンが目を見開く番だった。
なんとウンスの長い髪は、顎の辺りで切り揃えられ、まるで童のような頭になっていたのである。
今日はクリスマスイブ
日曜日ですが、お仕事の方もおられますよね
賑やかに過ごされる方も、私同様特にいつもと変わらない方も、良い夜を〜