「どうしたのです!その頭は…髪は…」
「売ったの」
「売った?」
「私も少しお金が足りなくて」
困っていたら、店の主人がウンスの赤みがかった髪を見て、売れると教えてくれたのだと彼女は言った。
赤い髪をした天女の噂から、特に妓楼で赤く染めた付け毛が流行っているのだという。
なんていう事だろう…。
あまりの衝撃に、ヨンの顔から血の気が引いた。
髪は女子にとって命ではないのか。
それを売るなど…
ヨンは己の身が切られたかのような痛みを覚え、身体を震わせた。
その時だ。
「…ふふ…」
突如ウンスが笑い出した。
自嘲しているのかと思いきや、それはどんどん大きくなり、しまいには大口を開けてあはは…と笑い出す。
ヨンは呆気にとられてそれを見つめた。
「いやだ〜私たちったら……息が合いすぎ〜!これってあの賢者の贈り物そのものじゃない…」
あはは、とウンスはひとしきり笑うと、怪訝な顔をしているヨンに話しだした。
「天界に私たちみたいなお話があるのよね」
ウンスはヨンに、とある夫婦の物語を話して聞かせた。
その夫婦は貧しかったが、二つ宝物を持っていた。
妻の自慢の髪と、夫が先祖から受け継いだ黄金の時計。
ある年のクリスマス、その夫婦はお互いに贈り物をあげたいと思ったが金がなく、何とか金を工面しようと、妻は髪を売ってその時計に付ける鎖を買った。
一方夫は黄金の時計を売って髪飾りを買った。
クリスマスの日、二人はそれを知り愕然とする。
二人の贈り物はなんの役にも立たない代物になってしまったからだ。
「…それでその夫婦はその後如何したのです?」
黙って聞いていたヨンが尋ねた。
「さあ、その後のことはないわ」
「ない?」
「ええ。頑張って時計を取り戻したかもしれないし、取り戻せなかったかもしれない。
もちろん妻の髪は伸びたでしょうけど」
「きっと取り戻したのでは」
「そう思いたいわ。
でも、この話はそこが大事なんじゃなくて、例え役に立たなくても、この夫婦のしたことはまさに賢者の行いだ、っていうそういうお話なの」
「賢者…」
他人から見れば賢者に見えるのかもしれない。
だが、当の本人には悔いしか残らないだろう。
少なくともヨンにとってはそうだ。
どうしても納得出来なくて険しい表情を浮かべていると、ウンスが宥める様な優しい口調で言った。
「ねえヨン。難しく考えるのはやめましょう。
私の髪はいずれ伸びるし、あなたの剣を取り戻す方法は、また明日考えればいいわよ。
今日はクリスマスよ。笑って、楽しく終わりたいの。
それとも」
短い髪の女はお嫌い?
ウンスはそう言って首を傾げ、見惚れるほど綺麗に笑った。
その瞬間、ヨンの頭の中は彼女の笑顔で満たされ何も考えられなくなった。
ヨンはウンスに言われた通りもう難しく考えるのはやめて、ただ感情のままに力いっぱい彼女を抱きしめた。
いつの間にか、外は雪がちらつき始めていた。
だが二人は朝までそのことに気づかないだろう。
二人の目には、お互いしか見えていないからーー
チェ・ヨンの剣は、確かに命の次に大切にしていたものだった。
だが、彼には命より大切なひとがいる。
【クリスマスの贈り物】終
間に合いました!
頑張りました!
楽しんでいただけましたでしょうか?
こんな設定のお話も新鮮〜って思っていただけましたら幸いです
何か一言、ご感想、心に残った場面など教えて頂けましたらとっても嬉しいです
で、時間が出来ましたら、一日限定後書き書こうと思ってます!
未公開シーンなんかも入れて…
お楽しみに〜
このとっても忙しい時期に読んで下さった方、いいねを押して下さった方、
コメントまで下さった方…
本当に本当にありがとうございました
ではではみなさま
Merry Xmas
そして今年一年ありがとうございました〜
良いお年を…
くぅ