クリスマスの贈り物 3 | 壺中之天地 ~ シンイの世界にて

壺中之天地 ~ シンイの世界にて

韓国ドラマ【信義】の二次小説を書いています

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その日の夕刻、ヨンが帰宅すると、待ち構えたかのようにウンスが飛び出してきた。

見たことのない妙ちきりんな赤い帽子を頭にすっぽり被っている。

 

「お帰りなさい!!」

 

「イムジャ、遅くなりました。

何か手伝うことは…」

 

「いいから、いいから、あなたは居間で座ってて!」

 

ヨンから荷物を受け取ると、ヨンを居間へと押しやる。

 

「イムジャ、何ですその…被り物は」

 

「サンタ帽よ。

クリスマスと言えばこれを被らなきゃ!

あなたの分もあるわよ」

 

「俺にもそれを被れと?」

 

「当たり前じゃない!」

 

居間の中はあちらこちらに蝋燭が灯され、部屋の壁や天井にも赤や緑の布が色とりどりに吊るされている。

卓の上には、雉の丸焼きや野菜の和物などいつもより沢山の料理が用意され、その真ん中にはとっておきの酒がでんと置かれていた。

きっと今までも天界で、こんなふうに祝ってきたのだろう。

一生懸命再現しようとウンスが張り切ったのがわかる。

 

ヨンは懐からきらりと光るものを取り出した。

銀細工の花と珊瑚が散りばめられた簪だ。

以前からウンスに似合うだろうと目を付けていたが、思ったより値が張り手が出せずにいた物だった。

クリスマスには贈り物をするというから、きっと喜んでくれるだろう。

ヨンは彼女がそれを着けた姿を想像して微笑み、そしてもう一度懐へしまった。

 

 

 

 

 

 

「どうよ、これ。カンペキじゃない?」

 

クリスマスケーキのようにデコレーションした餅を眺めながら、ウンスは、満足気な笑みを浮かべた。

チキンは雉になったし、ケーキは餅だ。ツリーもシャンパンもないけれど、それが一体何だというのだ。

要は誰と過ごすかが一番大事なのだと、今のウンスは分かっている。

 

ウンスはそのクリスマスケーキもどきを居間へ運ぶと、ヨンの前に座った。

 

「あ〜、やっぱり被ってない!」

 

ウンスは夫の前にある赤い帽子を手に取る。

 

「いや俺は…」

 

微妙な表情をしているヨンの頭に、ウンスは強引に帽子を乗せた。

 

「うん、素敵よ…!あなた、間違いなく高麗一サンタ帽が似合う男だわ」

 

褒めれば褒めるほど顰めっ面になっていく。

現代の男と違い、くそ真面目で硬派なところが可愛い。もちろんそんなことを言えば彼は憤慨するだろうが。

 

ウンスは二つの湯呑みに酒を注ぐと、ひとつを彼に渡した。

 

「はい、乾杯しましょ!

メリークリスマス!」

 

かちりと湯呑みを合わせ、乾杯をする。

いつもより少し飾り付けした部屋で、いつもより少し豪華な食事をするだけのクリスマスパーティだったが、ウンスは十分満たされていた。

目の前のヨンもまんざらではなさそうで、いつもの何倍も表情が豊かだ。

 

 

「ねえ、ちょっと待ってて」

 

ウンスは隣の部屋へ入ると、箪笥の抽斗を開け包みをとり出した。

それをヨンに差し出す。

 

「あなたにプレゼントよ」

 

「…俺に?」

 

「ええ…開けて」

 

ヨンは紐を解き包みを開けた。

 

「剣穂…?」

 

驚いたように、ぽそりとヨンが呟く。

 

「ええ、そう。

あなたのあの剣に映えそうだと思って…御守りの意味もあるらしいのよ」

 

ウンスはヨンの顔をじっと見つめた。

さっきまでと打って変わって表情が強張っている。

 

「あんまり…嬉しくなかった…?」

 

ウンスが不安そうに尋ねると、ヨンがはっとしたように顔を上げた。

 

「…いえ、そのようなことは…!

ただ驚いたゆえ…」

 

「ほんと?じゃあ使ってくれる?」

 

「…ええ」

 

何となく歯切れの悪い返事に、ウンスの胸にざわざわとした漣が立つ。

 

押し付けがましかっただろうか?

彼の中ではもう武士に戻りたいなんて、これっぽっちも思ってないのかもしれない…。

 

「ごめん、あまり深く考えないで。

ただ何かあなたにあげたくて。

何がいいのか、分からなかったの。

私は今の生活で満足してるわ…ほんとよ?」

 

「イムジャ…。

そうではないのです。

ただ少々…障りが」

 

「障り?って?」

 

視線を泳がせながら話すヨンにウンスは、尋ねた。