妹と二人 | 但野正雄タダノマサヲのブログ

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             妹と二人




      エッセイ タダノマサヲノムネノウチ







小学校二年の秋 母さんと僕と妹の三人して


北海道から 母さんの実家のある福島に


引っ越しをした


なぜ引っ越しをしたかと言うと 大人になってから


解ったのだが 石炭が石油に替わる過渡期にあり


石炭産業が斜陽になりつつある時で いつ閉山に


なるかも知れないので先手を打ったのだろう


 


実家には母さんの兄である 長男夫婦が


ばあちゃんと暮らしていたので


僕たちは隣町にある町営住宅に移り住んだ




父さんは北海道に残り 炭鉱夫の仕事をして


福島の家族にお金を送るという いわゆる


出稼ぎの状態になった


妹の父親である父さんの実家も


北海道にあったのだが


妹だけならまだしも 再婚のしかも僕と言う


子供がいたので 父さんと母さん二人が


相談して ばあちゃんの家の近くに住む


と言う事になったのだろう




北海道に住んでいる時に 引っ越しと転校は


何度も経験しているので 福島での生活は


これと言って困るような事は無かった


ただ一つあげるとすれば 言葉である


炭鉱の街は主に北海道の内陸部にあるので


言葉が標準語に近く 比較的に穏やかなのだ


必然僕も 当時は東京弁に近い言葉を


話していたと思う




福島県のそれも言葉が荒っぽい浜道りに


ばあちゃんの住む実家はあるので


 「でしょう」を「だべ」、 「そうだね」を


「んだ」、 「行こう」を「いぐべ」、など


前者の丁寧な言葉を話す僕を 上級生 同級生


下級生と 自分たちが訛ってるにも拘わらず


はやし立てるのだ


彼らたちからすれば 僕は妙な言葉使いをする


異端者なのだ




僕はこの攻撃に対抗すべく早くも一か月余りで


福島のズーズー弁をマスターした




福島に引っ越して二か月ほどが経ち 生活も


安定して来た頃の事


或る日母さんが買い物に出かけ 妹と二人の時


妹が 「兄ちゃん、寒い」と僕に訴えた




もとより僕も寒かったので 押し入れに仕舞って


ある電気炬燵を引っ張り出した


北海道に住んでいた時は暖房に


ダルマストーブを使っていたので 炬燵の


組み立て方が良く解らない


記憶を辿ると 解っていたのだが 炬燵の脚が


別の所に仕舞ってあり とにかく僕と妹は


面倒くさいのと寒いので 炬燵の熱線が出る


方を上にして そこに布団を掛け


コンセントを差し込み 妹と向かい合わせに


座った


電源を入れしばらくすると 布団の中は


だんだん暖かくなって来た


僕と妹は 「あったかいね!!」と言い合いながら


あどけない話でもしていたのだろう




「母さん遅いね!」と妹が言ったあたりで


どこからか 焦げ臭い匂いが漂ってきた


はっとして布団をひっくり返すと 赤外線を出す


赤い電球に当たっていた部分が丸く焦げて


煙が出ている


僕は急いで台所にあるボウルに水を入れ


煙が出ている場所にある綿をボウルに入れる


ボウルの中がいっぱいになると 流しに運んで


それを何度も繰り返したのだが 燃え広がる


速度が意外に早く 考えあぐねた僕はとうとう


布団を丸め風呂場に運び 水を張ってある


浴槽に入れた


ブクブクと白い泡が水面からたくさん出て


火はやっと消えてくれた




一段落してしばらくすると 母さんが買い物から


帰ってきた


僕は風呂の浴槽に水浸しになった布団を


見つけられる前に 母さんに告白した


黙っていようがいまいが すぐにばれてしまう


事なので 布団を燃やしてしまった事を


正直に言ったのだ




僕の判断は間違ってはいなかった


母さんは風呂の浴槽のなかで水をいっぱいに


吸い込んで パンパンに膨らんだ布団を見て


目を丸くはしていたけど


僕を怒らなかったもの





小学校五年の夏 炭鉱夫の父さんが


出稼ぎから戻った時に珍しく当時は高かった


バナナをお土産に買ってきた


一房に十本も付いていて 僕に三本 妹に三本


父さんと母さんは二本ずつ食べたのだろう


未だ少し青かったので 僕は後で食べようと


ベニヤで作ったようなちっぽけな机の引き出しに


バナナを入れた


幼いなりに熟してから食べようと思ったのだろう




三日ほど経った夕食の後 引き出しを開けると


そこに入っているはずのバナナが無い


引き出しの奥の方を覗いても見つからない


がっかりしながら 「誰が食ったんだよー!!」


と僕は叫んだ すると父さんが鬼の形相で


「また買ってやるから!!」と大きな声で


どなった 


僕は父さんの唸り声に縮こまるより無かった


妹はちゃぶ台の前に座った父さんに抱っこ


をされて すました顔をしている


僕の心は激しく傷ついた


そして恥ずかしい事に僕はバナナ三本で


妹を憎んでしまった





それも束の間で 保育園に迎えに行き


自転車の後ろに妹を乗せ走り出すと


五歳の妹は僕の背中にしがみつき


頬をつけ 「兄ちゃん、アリガト」と言うのだ


可愛くない訳が無い





あれから何十年も経ち 母さんと父さんが


亡くなってしまった今でも


青いバナナを見るとその時の思い出を


昨日の事のように感じる時がある





毎年、夏の夜の十一時頃恒例のように僕は


福島に住む妹に電話をする


すると妹は 「兄ちゃん、ほたるの墓みたでしょ


縁起でもない!!」と言った後 「ワハハ!!」


と笑う





妹は四人の子供たちのお母さんになり


僕より先に孫が出来


「ばあちゃん」と呼ばれる人になった









50から100程の書きかけの作品が頭の中を


駆け巡っています いいね!! ペタ コメント


及びメッセージのお返事が 遅れていますが


これも創作のためと どうかご理解ください

                   読者諸兄様へ



最後までお読みいただきありがとうございます。




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