【過去記事はこちらから】
卵胎生メダカ(グッピー)に於けるCamallanus(カマラヌス)の駆除と抑制…①
https://ameblo.jp/fairlady-sp310/entry-12496096519.html
卵胎生メダカ(グッピー)に於けるCamallanus(カマラヌス)の駆除と抑制…②
https://ameblo.jp/fairlady-sp310/entry-12498512106.html
卵胎生メダカ(グッピー)に於けるCamallanus(カマラヌス)の駆除と抑制…③
https://ameblo.jp/fairlady-sp310/entry-12499623634.html
************************************
25年前、初めてCamallanusの被害を受けた私たちは、
『これは狂犬病等の悪疫に類する性質の疾病だろう』
と考えた。
つまり、
1)日本原産のパラサイトでない以上、入れなければ広がらない
2)治療方法が無い以上、罹患した魚は全滅して終息する
3)自然水系に出さなければ定着することもない
こういう性質のものだと考えた。当時の先生方も大方同じ見方をなさっていた。
しかし、25年が経過して、私たちは当時の考えが完全に間違っていたことを理解した。否、させられた。
1)について言えば
→商品価値が低い大量生産物の卵胎生メダカ類に付着して入国してくる。 現地でも規制法令が無かった為
【タダ同然で入手できるアホみたいに安い夢の商品】
として、バイヤーはとらえた。
水物輸入は航空運賃が高額になるので、本命の輸入魚(高額な一点物に匹敵する種族)の輸送費を負担してくれる「夢の商品」として、感染組は大挙して上陸した。
2)について言えば
→罹患から斃死までのスパンが比較的長い為、死因をごまかせることにバイヤーはほどなく気が付いた。ましてや、死因のわかりにくい熱帯魚、【死んで当たり前の安物組】という認識が、全滅前に感染拡大を招いた。
一言でいえば、売る側も買う側も、極度に公衆衛生に関するリテラシーが低かった。今も昔も、それに鈍感であることが「よし」とされる風潮があり、しゃにむに対策しようとする人間が嫌われる業界だった。
3)については、言うまでもない。
いらなくなった熱帯魚の自然水系への大量投棄は、もはや夏の風物詩である。
この夏、どれほどのCamallanusに感染した熱帯魚が野に放たれてしまったのか、想像をすると気持ち悪くなるだけなので、考えない方がいいとすら思う。Camallanusは卵胎生メダカ類だけでなく、すべての淡水魚に等しく感染する。卵胎生メダカに目立つのは、卵精巣と総排泄口の距離や位置関係で、感染しやすく、尚且つ、体の外に見えやすいからであって、金魚の生殖巣に感染していることも確認しているし、その他の種族(特に魚食性の高いもの)にも普通に確認されている。
加えて、
4)ブリーダーの悪意
この視点は完全に欠如していたように思われる。
少なくともグッピーに関して言えば、
「親と同じ姿の子供が年何回も簡単に繁殖できる」
この事実は飼育者人口を増やして、多彩なバリエーションを産み出せる要因であり、加えて「専業者を経済的に行き詰まらせる」一大要因でもあった。
有名な話として「エルドラド」というグッピーは、日本に紹介された当初、1ペア200万円で販売された。それが僅か7~8年で1ペア3000円以下の品種になり、10年後、@298円で投げ売りされるようにすらなった。
【雌魚を不妊化できるものなら】
自家繁殖して販売をする愛好家で、これを考えたことが一度もない人間はどれほどいただろう?
ごく一部の業界人の中には、
Camallanusを雌魚を不妊化できる「便利な虫」「夢の虫」と考えてしまった者も居た。
それがごくごく一部の不届き者だったのか、ある程度まとまった数いたのかはわからない。
だが、確かに連中は、実在した。
疾病の鎮圧には一定のルールと手順、「克服したい」と願う関係者すべての思い、これが整わなければできるものではない。
殊、感染症は、僅かに開いた「穴」を見逃さない。
どんな微かなチャンスであれ、恣意的に与えられたものがあれば、彼らは貪欲に繁殖・感染を繰り返し、突破口としてしまう。
1000パターンの感染機会を遮断しても、1001個めが見落とされたら、すべてが無に帰してしまうことも少なくは無い。
魚より対処しやすい筈の豚コレラでさえ、野に放たれたものについては全く制御できていないのが現状なのだ。
疾病の上を行く気迫で人間が対処し続けなければ、絶対に鎮圧できるものではない。
25年前、私たちは若く、幼い考えで、業界を見誤った。
今にして、何故あんなにも無条件に他人の善意を信じてしまったのか、一寸腹立たしくもある。
疾病は観賞魚業界について言えば、
業界人・飼育者の克服すべき共通の敵
ではなく、
夢の商材であったり、顧客の水槽を空にしてくれる便利なものとして受け止められることの方が多い。
以前のブログ記事からの繰り返しになるが、
金魚の初期死因の殆どが、「鰓病」を含む感染症によるものである。
市場から入れた当初、機械的にスメルチを使えば、販売前の斃死魚は80%以上削減できる。と、この業界内のある人に言ったところ、
「ばか言わないでくれ」「冗談じゃない」
「そんなになったら、金魚が売れなくなるじゃないか」
「私たちをつぶす気か」
「金魚の流通が減ったらどうするんだ」
等、激しい反発を受けた。
彼らは恣意的に感染させることは無かったが、
「わざとほっぽらかす」
ことをした、し続けた。
そして2019年、各大手金魚屋・問屋さんの店頭がどのような状況になっているかは、飼育者の皆様方、よくよくご存知の筈である。
金魚が死ねば沢山流通する筈だったのに、どうしてか流通量は激減し、生産地も激しいダメージを受けてしまっている。
一つだけ我々が提唱し続けた防疫手順として
「混ぜるな危険」
これだけは定着した。なぜならば、それを徹底させれば水槽が売れるから。
お客様に迷惑をかけたくない、とか、斃死率を減らしたい、とか。
そういう善良な考えからではなかったであろうことを付け加えておきたい。
過去の出来事を俯瞰したとき、様々な関係者の複雑怪奇な感情の動き等、いきなり一言で表現できてしまうことがある。
要約すると、これら業界人の考えや行いは、
アホの所業
これ以外の何物でもなかった。
かなり本気で、そう思う。
なんか、もう、いつまでもそうしていればいいんじゃない?という言葉すら出てきてしまう。
そういう考えの人とは、何を話しても交わらないし、実りもない。
気づいた人から切り替えていけばいいし、十分に成果は出せている。
むしろそうなればあちら様は関わり自体避けてくるので、ある意味ではラッキーですらある。
25年経過してもCamallanusが出ていることに、私たちは心の底から驚愕した。
最近では、殺処分の為にお客様のグッピーを茹でて水槽を空にすることを推奨する小売り(空になった水槽は、自分たちで売る魚で埋め尽くすつもり)も居るとのことで、「佃煮屋さん」と陰口をたたかれているそうだ。
もう、何か、どこからつっこめばいいのかわからなさすぎて、見聞きしなかったことにしたほうが早いんじゃないかとか、考えてしまいそうになる。
そろそろ、金魚関係者には自分の池からマンソン条虫孤虫症をもらうか、自前のエロモナスに感染して生死の境をさまよう人が出てくるのではないかと危惧するのだが、末端の飼育者様方に迷惑をかけないよう…、もうこの一点だけで構わないので、そういうリテラシーを供給サイドの業界人全てが共有することが出来るようになればいいと、心から願い、祈らずにはいられない。
それが観賞魚業界を守り、永続性をあたえる唯一の方便だと、改めても実感した次第である。
文責:水棲疾病基盤研究所