お客様から嬉しいご報告を戴きました。

 

金魚と遊ぶ.com 様

 江戸錦当歳が沈み病発症 金魚浮袋障害

 http://kingyotoasobu.com/ukibukuro-no1/

 http://kingyotoasobu.com/ukibukuro-annchi-3/

こういった御報告とその後のお知らせを戴くと、「克服できる」ことが金魚を普及する一つの手段・原動力となっていることを力強く実感できて、背中を押される思いが致します。

 

この場を借りて、金魚と遊ぶ.com 様にはお礼を申し上げます。

 

浮き&沈みは金魚を飼育していれば必ず経験するマイナートラブルの代表選手ですが、対処を間違えると転覆や深刻な空間失調症に移行し、致死的な経過を辿ってしまうことも多いものです。

 

関東では桜も満開になり、季節的にも春の闌・本番となりました。

気温の乱高下に伴い、急に増えたご相談内容に

・浮き

・沈み

・転覆

・遊泳異常(静止姿勢のよじれ・空間失調症)

が急激に増えてきております。

 

これらは一般的に「遊泳不良」と呼ばれるものとして認識されておりますが、それらの対処方法には曖昧なものも多く、初動の対処が予後を大きく左右するものであるにもかかわらず、原因について誤った言い伝えも多く伝えられている現状がございます。

それらについて、発生メカニズムとして今一度整理を試みようと思い、今回のブログ記事と致します。

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【鰾(ひょう):浮き袋】

金魚等フナの仲間のみならず、殆どの魚には「鰾(ひょう)」と呼ばれる浮き袋が体内に御座います。

この「鰾(ひょう)」は、金魚等フナの仲間の場合、

-内臓としては消化管(腸)と気道で連結され、

-制御については内耳と骨・神経で直結される

器官です。消化管から分岐して発達するので、筋肉細胞によって構成されています。

つまり、音など、外部から受けた刺激や平衡感覚によって、動作指令が発生し

筋肉細胞の働きによって収縮や拡張を繰り返す。

神経と筋肉細胞が円滑に動作することで、金魚は浮上・沈降、平衡のとれた均整な遊泳位置を保持し、美しい動作を実現するものであります。

 

【鰾(ひょう)の動作異常の原因】

★消化不良

金魚は消化不良を起こすと、浮き等、遊泳不良を発生させることは経験則としても周知されております。

消化不良は万病の元とすら呼ばれておりますが、それは、鰾が腸から分岐した器官、尚且つ、腸管内の環境が悪化すると、直接鰾の筋肉や気道にトラブルが発生する事象に由来します。多くの場合、腸管内の異常発酵によりガスが発生するので、気道に過剰な空気(ガス)が流入し、所謂「浮き」の症状が発生します。

事実として、遊泳異常の最も初期的な原因の一つは「消化不良」です。これは人間の場合と同じく、数日の餌切りを行って、一度腸管内を空にすることで自然治癒が期待できる可能性もあるものです。

また、水温の乱高下によって消化不良が発生してしまった場合は、強制的な水温変動の緩和(ヒーター等を使用して、一定以下に水温が落ちないようにすること)で解決する場合もございます。

餌切り・ヒーターの使用、双方を消化不良の改善の為に行うことは「自然治癒力頼み」の消極的な治療方法です。

何か原因を積極的に取り除いたり、強い力で矯正するようなものではなく、金魚が本来持っている腸内細菌叢を健全化させ、円滑な腸管の動作を取り戻すことを期待して行う「飼育環境の改善」作業の一部分として行われるべきものです。

無論、不適切な飼料を与えていた場合、この改善作業の一環には「餌の適切化」は欠かせない要素となります。加えて、飼育水が適切なものに収まっているか否か?今一度見直しを行わなければなりません。

これらが全て適切なものに収まり、下痢や便秘等、腸管内のトラブルも収束し、その上で尚、遊泳不良が継続する場合には、病期は初期を超え、次の段階に進んでしまった、と見做さなければなりません。

 

★筋肉の炎症(細菌感染症)

1)初期~中期(腫脹期)

腸内細菌叢の健全なバランスが崩壊して時間が経過すると、本来体内に侵入してはいけない性質の細菌が容易に腸管内に感染します。

人間の消化器系感染症をイメージして戴ければご理解いただきやすいと思われるのですが、細菌性の消化器疾病を患ったときに腹部異常感や血性の排泄物が発生する場合と同じく、金魚の腸管内でも同じような不具合が起こります。

この場合には、直ちに抗菌&消炎系の治療を開始しなければなりません。放置をすると、下手をすると腸管を酷く損傷し、腸管穿孔を起こしてしまう場合もあります。ここまでは人間と同じなのですが、更に厄介なことに、鰾(ひょう)は直接腸管と繋がっているので、容易に浮袋が炎症を起こします。多くは腫れてしまって縮むことが出来なくなりますので、浮きの中でも悪質な横転・反転が発生しやすくなります。簡単に言えば、横倒しになって浮き上がったっきりになった&ひっくり返ってお腹を水面に突き出してしまった、等です。初期の「浮き」とは明らかに一線を画しますから、誰の目にも明らかな「異常」が見て取れます。

この場合は、餌切り&ヒーターによる水温安定化などでは、ほぼ自然治癒は望めません。

2)後期~終末期(拘縮期)

細菌性の炎症を放置して腫脹期が終わると、筋肉細胞は変性し、拘縮(こうしゅく)という硬化して縮んだ状態を呈するようになります。死後解剖で鰾の著しい変形が認められるのは、この段階によります。細菌感染症がここに至るまでには年単位に近いかなりの長期間がかかります。

この段階に進行してしまうと、鰾(ひょう)自体を構成する筋肉細胞が変化してしまっておりますので、治療は困難を極めます。多くはこの段階で「沈み」が発生します。動作としては、浮袋が完全に機能不全を起こしておりますので、全身の筋肉を使って微かに跳ねるように動作し、魚本来の持つ滑らかな遊泳は一切行えなくなります。

拘縮してしまった筋肉細胞自体は戻すことはできませんが、細胞は長期間かけて「入れ替わり」を行います。ここに至っては治療は「不能」であると見なされるものであるにもかかわらず、稀に「治った」という事例が発生するのは、生命の持っている時間が筋肉細胞の寿命を追い越す場合があるからです。この状態では「生命を維持すること」が最大の焦点となります。

 

★筋肉の炎症(パラサイト性)

近年、粘液胞子虫と呼ばれるタイプ、及びそれら近縁種のパラサイトが猛威を振るっております。これらは腸管から筋肉に浸潤し、神経細胞を冒し、脳にまで至るものです。その上、浸潤を受けて穴だらけになった筋肉細胞には二次感染として細菌感染症が相乗りすることも極めて多く発生します。

以前は浮き&沈みと言えば細菌感染症による腫脹&拘縮を指しましたが、近年では細菌感染症の方がレアケースになりつつあります。

細菌感染症とパラサイト性炎症の鑑別は「発症から進行までの時間」で行います。

-細菌感染症の場合、腫脹し、拘縮に至る時間はかなり長く、お尻を浮かせた程度の「軽い浮き」から横倒し&反転に移行するには、どんなに早くても「日単位」の時間が必要です。(軽症の病識をしっかりと飼い主様がつかんでいることは重要です)また、拘縮して沈みに入るにはどんなに早くても「月単位」の時間がかかります。

-パラサイト性炎症は、発症から進行までが極めて速く、浮き&沈みは前駆段階をすっ飛ばして突如どちらかが発生し、短時間でいきなり終末的な外観を呈します。

更に、このタイプのパラサイトは、最終目標が脳及び脊髄の中枢神経細胞なので、罹患に伴って必ず「神経系の異常動作」が大小を問わず発生します。

この鑑別は比較的容易で、神経系に異常動作が発生しつつある個体の場合、

-ライトのON/OFF(光刺激)

遊泳位置の明らかな変化(上層→下層or下層→上層)

もしくは症状の緩和(明暗どちらかでいきなり症状が消失or緩和)

-水槽を叩いて刺激を与えた場合、

特定の鰭に力が入らないor入り過ぎる

左右どちらかへの決まった動作(ランダムになることはありますが、回数を重ねると必ずどちらかに明らかな偏りが発生します)

その他、小刻みな痙攣や周期的な異常動作等、健全な魚には絶対に見られないような器質的に異常な動きが神経系異常の兆候となります。

 

近年多くみられる「遊泳時平衡失調」「斃死時体躯をくの字に曲げた状態」の金魚達も、ほぼ全てがパラサイト性の筋肉炎症や神経障害と見て良い、と言っても過言ではないぐらいこれら疾病は蔓延しております。

一度でもそういった斃死を出した水槽の同居魚全てにこれらは感染済の可能性があり、長期間かけて浸潤すればするほど、難治性の深刻な症状が発生致します。

 

対処は

駆虫/抗菌/消炎

全部を同時進行で開始しなければなりません。どれ一つ欠けても十分な効果は出ません。

筋肉細胞に穴が開いて異常が出た程度で収めなければ、時間と共に神経細胞が食害で損傷を受けます。ある意味、古典的な細菌感染症ならば、大体が腫脹→拘縮のステップを踏んでくれるので、その間に対処をすれば戻りも早いのですが、神経細胞が損なわれると回復は極めて遅く、治療に超長期間がかかるようになってしまいます。その為、いきなり終末的な症状を呈した個体には「早く!」と急かすようなことを申し上げる場合も多く御座います。

症状には深刻なものが多く御座いますが、パラサイト性の炎症は正しく対処をすれば治癒可能です。場合によると、どこにすっ飛ぶかわからない細菌感染症よりも隣接組織に浸潤してくれるパラサイトの方が遥かにやりやすいと感じることもあるかもしれません。

 

いずれにせよ、正しく鑑別を行い、原因を見極めることは、病魚の回復には極めて重要な要素となります。

これ以前の問題として、

・換水用の水(水道水)が低CODであること

 http://ameblo.jp/fairlady-sp310/entry-12260010334.html

・濾過が出来ていること

 http://ameblo.jp/fairlady-sp310/entry-12260594603.html

は絶対条件となりますので、今一度お確かめをいただければとお願いを申し上げます。