お世話になっております。
この2~3日、大変体調が悪く、一部お電話には出ることができましたが、大多数の方のお電話やメール、猫ちゃんへの御支援へのお礼等、全てが滞ってしまっております。
現在熱は大分下がり、明日から徐々にですが通常業務に強制的に戻りたいと思います。
皆様にはご連絡・ご注文、ご支援の品、お電話や魚病相談等お寄せいただいた皆様、並びに弊店の商品を扱って戴いている店舗様方には大変ご迷惑をおかけいたしました。
大変申し訳御座いません。
明日から通常業務に戻る予定でおります。
順次ご返信等させていただきます。
何卒ご容赦いただけますよう、お願い申し上げます。
平成29年3月27日、東京拘置所で関根元死刑囚が、癌にもならずに大往生の如くに病死した。
享年75歳。
言わずと知れた、埼玉愛犬家連続殺人事件の主犯であり、この事件は
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として映画化もされた。
犬が魚にすり替わってはいるが、最も忠実に描かれていると定評のある作品である。
私がこの映画を見て吹き出してしまったのは、やくざの子分が「たかが魚に500万だ?ふざけてんのかコノヤロー!」と叫ぶシーンである。「ふっ、どしろうとめ」と笑ってしまった私も、同じ穴の貉やもしれない。
埼玉愛犬家連続殺人事件wiki https://goo.gl/Q3Fy4q
埼玉愛犬家連続殺人事件まとめ【関根元/風間博子】 https://goo.gl/2MFop7
話がそれたが、故関根死刑囚は旧アフリカケンネルの創業者である。
普通の人間にはアフリカケンネルなど関係のあるものではない、と思われるかもしれない。
しかし、少なくとも
シベリアンハスキー/アラスカンマラミュート/ローデシアンリッジバッグ
この3犬種を過去飼育していたor現在飼育している人には大いに関係がある施設でもある。
これら犬種について平成7年にかかる年代の犬が記載されている血統書をお持ちであれば、是非一度チェックしていただきたいのだが、先祖のどこかで必ず故関根死刑囚の犬(アフリカケンネル出身)が紛れ込んでいる筈である。かくいう私のところにも、祖父母級でアフリカケンネル出身犬が3頭紛れ込んだ血統書が、10年前に死んだ愛犬の遺品として保管されている。
この3犬種については日本に導入したのが故関根死刑囚であったので、致し方ない。事実、業界では、彼は人格破綻者として知られていても、それを凌駕する犬に関するずば抜けた才能があったとして超有名人であった。「愛犬の友」という雑誌の総ページにして1/3程度はアフリカケンネル系の広告記事で埋め尽くされていた。
私達がこの事件に関して最初に感じた疑問は、
「普通にやっていれば業界の大御所・レジェンドで終われた筈なのに、どうしてこんなことをしてまで金儲けを?」
という点であった。ただ、それは事件を読んでいくうちになんとなく理解ができた。金はいくらあってもまだ足りないとかそういう話であって、どこでもあり得るこの世の地獄の話である、と。
次に感じた疑問は、
「何故このような大悪党が75歳まで3食保障されて、電気水道ガス通信費の支払いに窮することもなく、慢性疾病に全身痛めつけられることもなく、拘置所の中とはいえ畳の上で大往生できたのか?」という素朴なものである。
この事件に関わって実際に起こった出来事を追ったとき、ある一つの事実に気が付いた。
それは「結果としての動物愛護」という厳然たる事実である。
故関根死刑囚は「硝酸ストリキニーネ」という犬用の毒薬を用いて、判明しているだけで4人の被害者を長時間かけて苦悶死させた。死に至るまでの時間の長さと苦痛の酷さは繰り返しマスコミでも流布され、彼の残虐性は遺体の処理方法まで加わって、殊更広く喧伝された。
「硝酸ストリキニーネ」とは、当時保健所や獣医で一般的に用いられていた薬殺用の毒薬で、比較的容易に入手できたものである。
この薬が多用された理由は、作用の特徴にあると言われている。
ストリキニーネの毒性:http://www.drugsinfo.jp/2007/08/17-073000
投与された側は意識清明なまま、全身の筋肉を引き攣らせて自発的な動作ができなくなる。30分程度で強烈な苦悶の内に死に至るのだが、暴れたり叫んだりすることができない為、大量に殺処分を行わねばならないときに、動物の反撃を防いで見た目として「静か」に行うことが出来る。
現在は考えられないことであるが、この事件が起こった当時、「硝酸ストリキニーネ」は日本中に大量にある「動物を殺す毒」であった。
余談ではあるが、硝酸ストリキニーネ以前、昭和40年代は金属バット(戦後は木のバット)で一頭一頭撲殺する方式が正式とされていた。この方法は時間がかかる上に、犬猫の反撃を起こさせてしまい、多くの保健所職員が外傷を負っていたと言われている。
【参考】
殺されてゆくペットたち http://d.hatena.ne.jp/kingfish/20060724
ドリームボックス―殺されてゆくペットたち http://amzn.asia/2Hf6QoJ
平成7年1月5日、埼玉県警は関根元と風間博子を逮捕した。
捜査が進むにつれ、ワイドショーは「愛犬家連続殺人事件」でもちきりとなり、お茶の間に硝酸ストリキニーネの作用機序や毒性が広く喧伝され、それがもたらす恐るべき苦悶死(清明な意識のまま全身の筋肉が硬直し、心臓が止まるまで激しい痙攣に苦しめられる)が事細やかにセンセーショナルに報道された。
そして、
動物の殺処分方法に関する指針
平成7年7月4日 総理府告示第40号 総理大臣:村山富市
・【改正】平成12年12月1日 環境省告示第59号
・【改正】平成19年11月12日環境省告示第105号
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/shobun.pdf
逮捕から僅か半年足らずで、この法律が告示される。
簡単に言えば「国の方針として残虐な殺し方は禁止するので、毒薬は使わないように」ということである。この告示を機に、全国の保健所での殺処分は「炭酸ガス注入方式」に統一され、硝酸ストリキニーネは回収され、入手困難な過去の遺物となった。
裁判の最中、関根ははっきりと硝酸ストリキニーネのもたらす苦悶死について、どれほど酷い苦痛があるか、それが長時間継続するかについて認識していた、と言っている。
結果として、だが。
関根死刑囚は殺処分される犬猫を硝酸ストリキニーネのもたらす苦悶死から未来永劫解放した、と言っても過言ではない。
関根死刑囚の恩恵を受け、炭酸ガスで殺処分された犬猫の数は、
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/h26_dog-cat37.pdf
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/h23_dog-cat3.pdf
平成7年から平成28年迄、22年間で799万8798頭となっている。
炭酸ガスとて安らかな死ではないが、死に至るまで意識が保たれることもなく、全身の筋肉が激痛を起こすこともなく、救いの無い苦悶に長時間苛まれるような事態は少ない。
799万8798頭の犬猫の苦悶死を考えたとき、故関根元死刑囚が今地獄に居るか天国に居るか、答えることは非常に難しい。難しく考えなければ、秤は確実に一方にしか傾かない。
人間が4人殺され、2人の犯人が死刑判決を受けなければ、今でも硝酸ストリキニーネは殺処分の主流であり続けた可能性がある、と考えるのは考えすぎだろうか?
逆を言えば、何百万の署名を積んでも、どれほどの愛護団体が絶叫をしても成し遂げられなかったことを関根元は人殺しをすることで実現してしまった、と言える。動物愛護に関する最大の功績を遺してしまっている上に、事実として彼以上に捨てられた犬猫の殺処分に関する福祉を実現した人間は未だ登場していないように見受けられてしまう。
そして、甚だ絶望的なことに、これほどの重大事件が起こらなければ、国は動かなかった、という事実にも直面させられる。
愛護団体が何を訴えても、連続殺人事件だの、死刑囚だのが絡まなければ、動物愛護に関わる法律は何一つ前に動かないし、改善も無いと。
いずれにしてもこれはとんでもない話である。
故関根元死刑囚の恩恵などという領域について考えなければならない世の中はどうかしているし、間違えていると断じる。
法を犯す人間が登場しなければ自発的に何も変えられないとしたら、法治国家の意味もない。
業界としての話に今一度戻す。
埼玉愛犬家連続殺人事件は、特異な人間が起こした恐ろしい事件、と表面上は総括され、多くの業界人が自分とは無縁であると感じているように見受けられる。
しかし、商材として動物の命を扱う業者には故関根死刑囚的な性質を持った人間が少なからず、居る。そして、金銭への飽くなき執着と、命を踏みにじるメンタリティ、無責任さを持つ人間に至っては少なからずどころか非常に多く見受けられる。
商材は次々と乗り換えられ、世界の珍獣は漁り尽くされ、欲望はとどまるところを知らない。今年は特にコツメカワウソが「推し」だったようで、うんざりするほど無責任な「可愛い」が至る所に喧伝された。珍獣の老病死など、誰が責任をもって行えるのだろうか?珍獣を愛する唯一の方法は、人間が未来永劫その動物に関わらないこと、生息域の自然環境を守ることのみだというのに、ペット化の推奨とは無責任にもほどがある。
ペット業界が斜陽産業となり久しいが、自分達の内側にある「関根的な部分」について直視をし、直ちにそれを自発的に糺さなければ、抜本的な建て直しなど出来よう筈もなく、本当の意味の動物愛護など夢のまた夢と思わずにはいられない。
故関根死刑囚のやったことについて、「最悪に駄目なもの(毒殺)をかなり駄目(炭酸ガス)にしただけ」と断じられる世の中になれるよう、つまり、殺処分が社会として否定される世の中になるよう、心より祈る次第である。