お客様から「もぐもぐバスケット」のご提供を戴いて、
水中係留型新飼料「ВОСТОК3」の性能評価を行いました。
ヘルシーラブスターを含む従来の人工飼料を拒食した彼らにしては、かなり良い食いつきを見せたと自負しております。
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今回は治験魚である、台湾オイカワをご紹介致します。
台湾オイカワ(Opsariichthys evolans)は日本オイカワ(Opsariichthys platypus)と遺伝的に別種になります。
以前は同一として考えられていましたが、DNA解析により、別種であることが証明されました。
台湾には日本オイカワも日本統治時代に導入され、定着をしています。
これらはミトコンドリアRNAの解析により、琵琶湖産個体群の子孫であることも判明しています。

現在の台湾オイカワの分布は、台湾西部に偏っていることが知られておりますが、
非常に興味深いことに、オイカワに学名が付く1年前の1901年当時に作られた日本統治領域地図の領域外が、ほぼ現在の生息域と一致します。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/5d/Map_of_Taiwan_1901.jpg
当時台湾は農林水産業に力を入れる政策が採られたことは歴史的な事実であり、水産業の一環として鮎が琵琶湖から導入されました。
その時の種苗に日本オイカワが混入していたことが台湾への導入理由と見なされておりますが、
台湾オイカワと日本オイカワの棲み分け状況=日本統治の初期領域が境界線になっていることから考察をすると、
導入は1895年(明治28年)5月から1915年(大正4年)西来庵事件迄の間に完了していたのではないかと推測しても良いのではないかと思われます。

オイカワ属は以前「Zacco(ザッコ)属」とされ、その呼称は日本語の「雑魚(ザコ)」に由来します。
Zacco属は、長らく台湾/日本オイカワ、カワムツ、ヌマムツが属するとされていましたが、
現在カワムツ/ヌマムツはZacco属から外れてNipponocypris属に分類され、
http://nrifs.fra.affrc.go.jp/letters/letter02/d/d02.html
肝心の台湾/日本オイカワもZacco属ではなく、Opsariichthys属=ハスの仲間、となりました。

台湾では在来種を守る為に日本オイカワはどちらかというと邪魔者扱いされているようですが、
かつて政治として定着した彼らは、今度はその美しさから移入が進み、日本統治時代の琵琶湖系個体群以外の集団が出現するようになっているそうです。
人間の活動に随伴して移動&定着を繰り返すのはある意味この種の生き物の宿命ともいえる部分でもありますが、彼らは100年少々の間に随分目まぐるしい変遷を辿らされたように感じられます。
ですが、どのような名前になってもどのような分類になっても、日台どちらで生息をしていても、彼らは彼ら自身以外の何者でもないのだと、しみじみ感じた次第で御座います。
(文章:水棲疾病基盤研究所)

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おまけ↑