お客様から嬉しいご報告を戴きました。

ブログアップの許可をいただきましたので、以下に時系列でご紹介差し上げます。

疾病の概要としては、白点のように始まるパラサイト症候群に、グラム陽性菌とおぼしきものが相乗りをし、体内に二次感染を起こしたものになります。
これは今年比較的多く出現しているタイプのものであり、単純な白点と思って処置をすると、一気に手遅れになる性質のものです。
そして、極めて難治性である場合が多くを占めます。

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発症4月6日
水温17度
発症の状況は写真の通り。


4月9日
水温17度前後
グラナータ32ml
ストラジ3ml
投入
4時間後
白い部分減少。


4月10日
水温18度
白い部分は減ったものの
元気がない。
摂食せず。
 4月10日午後
 横たわり、呼吸が荒い。※サバ尾個体のみ。開き尾個体は正常。
 カラシニコフ34ml投入。

 4月10日19時
 ストラジ6ml投入。


4月11日 夜
2L足し水。

4月12日
変化なし。
呼吸荒い。
動かない。

4月13日
横たわりながらもエアーの近くを移動している様子。
チェックするたびに、いる場所が違う。

4月14日 朝
横たわたまま。
呼吸の間隔が遅くなっている。

4月14日午後
水温19度
突然復活。


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一般的に魚類はグラム陰性型の細菌類についてはある程度の耐性があり、かなり重症になるまで症状として表に出てこないケースが比較的多くを占めます。
しかしながら、グラム陽性型の病原菌には耐性が少なく、いきなりこういった劇症が出現することも少なくはありません。
今回、切り替え前に横転が出ており、これはグラナータでグラム陰性菌が殺菌された為、グラム陽性菌の病勢が勢いを増したように推測されます。
これら症状はコステアや白点の末期、疾病による表皮粘膜異常などと酷似しておりますが、重要な要素として、今回資材の都合上、スメルチは使用しておりません。
グラナータ+ストラジ+カラシニコフ(新薬)の構成となっております。
この場合、コステア等パラサイトは悪質であればあるほど短時間での駆除をしきることは困難です。
なので結果論ですが、横倒しについては細菌感染症であったと推測され、なおかつカラシニコフに切り替えて成功しておりますのでグラム陽性型であったと弊店では結論付けております。
※グラム陽性ではないという意見もおそらくあるかと思われますが、解明には全ての同定を行わなければなりません。魚病学会に報告されるにはおそらく2年後で、この現在流行している疾病はおそらく黙っていても沈静化しているか、更に酷くなっています。
※臨床で症状を緩和ないし治療するには、同定は手段の一つであり必須の手段とはなりません。その努力を放棄する必要はありませんが、固執することは更に悪い状況を呼び込みます。なぜならば、生き物である以上治るか治らないか?生命があるうちに解決をしなければならないからです。

この病原菌の完全な同定については時間も経費もかかり、その間に疾病はどんどん進み、同定した頃には既に斃死に至っていることが多いものです。
従って、疾病の外観による分類と、消去法の消去順を確定することが第一として弊店は処置を施します。
今回はストラジの併用と共にグラナータの刺さり具合を見定めた後に新薬のカラシニコフを使用しております。そこで劇的に奏功しておりますので、予定通りこのままの仕様で販売となります。

この個体たちは「金魚すくい」の出身です。
金魚すくい自体には賛否あるのですが、今回はそれは置いておきます。
「金魚すくい」をする状況というものは、大概はお祭りの場であり、得てしてそこには「楽しい思い出」というかけがえの無い記憶が付随します。
今回助かった金魚は、飼育者様のご家族にとっては思い入れ深い大切な大切な一尾でありました。
金魚の救命に対し、高級であれば死なせられない等様々な判断基準が世の中にはあるように見受けられますが、例え金魚すくいの金魚であっても、それを生命として扱う人が居れば、その命は果てしなく重いものになり、その一尾を助けるために飼育者様は奔走致します。

死ななければ売れない、特に金魚すくいの金魚はパンパン死んでくれることが肝要と、バルバロイかトリバロイ並みの思想でこの業界は回っております。
しかし、その影で、連れて行かれた金魚の少なくとも半数近くの心ある飼育者様が泣かされ、
「すぐに死ぬからもう飼わない」と決断をされることとなります。

とにかく、この個体たちが助かって、私達は心底良かったと安堵しております。
これらを実現したのは、飼育者様ご本人であり、私どもはそのお手伝いをしたにすぎません。
飼育者様の生きてほしい、生かそうとした信念が成功を呼んだ事例であったとしみじみ感じております。



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