豊四季から移転して、何とか無事に年を越せました。
ひとえに皆様の御支援のお陰様であると、心より御礼申し上げます。
原発事故発生当初から、弊店ではチェルノブイリ事故当時の反省を教訓とし、
放射性物質の防御に努めて参りました。
徹底的にソヴィエトの資料、ロシアの資料を参照し、可能な限り何も起こさないよう、何も起こらないよう尽力致しましたが、最終的に観賞魚飼育に於ける放射性物質への対策という点については、事故当時参照可能であった資料から推定できたことはあまりにも小さく、或いは皆無に等しく、全くのブラックボックス状態からの手探りを続けざるを得ませんでした。
従いまして、全ては「推定」でしかありません。これらの出来事を「確定」させるには、実証実験の反復が必要になります。
しかしながら、昨年下半期にお寄せ戴いたお客様からのご相談の中に、私共が豊四季では克服出来ず、流山で対策を行って劇的な改善を見た事象に類似するものがあまりにも多く有り、一度まとめてご報告をしなければならないと考えました。
この先原発事故は起こらないのか?
もう二度とこんなことにはならないのか?
この地震国でこれだけの数の原発があるのですから、こういう事態は期間の長短こそあれども、何度でも繰り返し起こるのだろうと私は考えます。
ですので、これらの事象と対策は、今放射性物質と関係が無いエリアにお住まいの方々には、「その時」への備忘録として心にお留め戴けましたら幸いです。
●前提
常時0.3μsv/h超えのエリアは店舗外 南・東・北面。最も強い箇所が南東の角。逆に西面は比較的低い。
事務室:事務室だけ事故後半年は0.6μsv/h超えだったので立ち入らず。事務室の壁の裏に西面水槽壁。
東面水槽壁は震災時半分倒壊(→半年後までに新設)
店舗内は0.2μsv/h以下で概ね安定。
●事故後の処置
・換気扇全停止(2011 3/13夜までに)
・水道水の給水全遮断(2011 3/13~6月上旬迄)
・貯水槽にコバルジン散布(2011/3/13 以降毎月一回)
・給水経路に4段階でフィルターをつけて給水再開(2011 6月以降)
・フィルターは2ヶ月に1回交換
・換気扇再起動(2012 4月)
●飼育管理上で起こったこと
・2011/03~2011/07:新仔のハッチアウト率が微妙に低いように思われた。初めて見るタイプの奇形が有り、事故の影響を疑う。それ以外には目立ったことは無い。
・2011/07~2011/9:外池のメダカに稚魚が居ないのに気が付く。青水の出来が悪く、夏の水管理に非常に苦労する。
・2011/09~2011/11:5月の新仔の育成不良が目立つ。気温が下がり始めたのに水が駄目になりやすい。特に窓に接した水槽が駄目になる。
・2011/12:南面窓に接した水槽に硫化水素が沸く。墨田時代から累代していたバクテリア叢を入れていた西面水槽が駄目になっていることに気が付く。気温が下がりきっているのに窓に接している箇所で次々アンモニアが出る。水温一桁でアンモニア中毒が多発する。
・2012/01:店舗内の水槽のうち、1/3近くがバクテリアが居なくなっていることに気が付く。再度硫化水素が沸く。
・2012/02:南東水槽にバクテリアの移植を試みても、つかない。移植元まで駄目になり始めていることに気が付く。汚染物質の混入を疑い、フィルターを交換したりコバルジンを散布しても変わらない。硫化水素の沸いた槽は何度洗浄しても死菌水槽になってしまう。
・2012/03~04:NG水槽は空にして、バクテリアが居る水槽を大切にするようになる。駄目になった水槽には見たことのないタイプの菌叢が育っていることに気がつき始める。バクテリアのコントロールが効く水槽だけでは圧倒的に収容力が足りない。調整剤等フル活用で対応するが、コストがまるであわない。
・2012/04~06:新仔が全くハッチアウトしない事態が複数発生、奇形発生率は跳ね上がる。5月下旬、断水騒動。
・2012/07~09:青水が出来ない。外池にメダカが一尾も居なくなっていた。要注意水槽を外しているのでアンモニアは前年ほど沸かなかったが、油断(過密飼育)すると一気に沸くことがしばしば。
・2012/10:豊四季店舗を諦める。
●見落としていた点
・濾過バクテリアはベータプロテオバクテリア網に属し、放射性物質への感受性は極めて高い。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=08-04-01-09
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/08/08040109/01.gif
・感受性は大腸菌に類し、菌叢の中で真っ先に死滅するのが濾過バクテリアのグループであること。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/08/08040109/03.gif
・最も感受性の高いバチルスでさえ、有機物が混在する状態では放射性物質への感受性が高まること。
・埃の多い店舗外部にも関わらず、店内の線量が安定していたのは、水とガラスの遮蔽効果だけではなく、ブロアーから吸気された核種が水槽内フィルターに集塵される効果が高かったということ。(移転時、ブロアーを止めたときに判明)
・空中から投げ込み式フィルターまでの「距離」を勘定したとき、水槽の底面が空中にある状態ではγ線核種に対してほぼ距離ゼロであったということ。
放射性物質への対策は全てソヴィエト・ロシアの経験と方針に従いましたので、観賞魚飼育の習慣が根付いていない国であるということが念頭から抜けてしまっておりました。
後から考えれば、水棲菌には放射線への感受性がずば抜けて高いものが多く、この点は非常に悔やんでおります。
●水道水の問題
・事故後、お客様の相談が最も多かったのが、水を1/3程度でも換えると魚が調子悪くなるor斃死に至る、でした。
・2011/03/22にヨウ素が出て以来、水道局では従来の濾過方式を切り替え、人体を守る為に放射性物質を出さない濾過(含む化学濾過)が実践されているとのことです。セシウムは周期表ではアルカリ金属に属し、これを出さない濾過というものは、カリウム・カルシウム・マグネシウムも出ないということになります。
・純水に近い状態のものであるのならば、或いは調整次第で何とでもなるのですが(純水は魚には害毒になります)そこに強酸の塩素殺菌が加えられると、緩衝物の無い状態ですので、水の性質として飲用には耐えても、飼育水としてはそのまま中和しただけではかなり不適になります。
単に金魚を飼育する上で、常時空中からγ線が干渉する環境がどの程度影響したのかはわからないのですが、
・集塵による濾過装置の高度内部被曝
・濾過バクテリア叢の崩壊
・飼育水として不適な水道水の常時給水
この3つの要素が致命的な足かせになったと考えております。
他にも様々な悪い要素はありましたが、この3点だけはどうしても覆しかねる難題でした。
特にバクテリアと水道水は決定打で、本来バクテリアが駄目ならば水道水を割って換水を行うことで、健全な観賞魚飼育は行われます。
双方が駄目になる前提というものが頭の中に全く無く、濾過バクテリア叢の崩壊が濾過装置の内部被曝によってもたらされているという推測に基づくと、全く頷ける事象であると考えます。
非常に長くなってしまいましたので、その2で対策に移ります。
ひとまずお読み戴き、有難うございました。
ひとえに皆様の御支援のお陰様であると、心より御礼申し上げます。
原発事故発生当初から、弊店ではチェルノブイリ事故当時の反省を教訓とし、
放射性物質の防御に努めて参りました。
徹底的にソヴィエトの資料、ロシアの資料を参照し、可能な限り何も起こさないよう、何も起こらないよう尽力致しましたが、最終的に観賞魚飼育に於ける放射性物質への対策という点については、事故当時参照可能であった資料から推定できたことはあまりにも小さく、或いは皆無に等しく、全くのブラックボックス状態からの手探りを続けざるを得ませんでした。
従いまして、全ては「推定」でしかありません。これらの出来事を「確定」させるには、実証実験の反復が必要になります。
しかしながら、昨年下半期にお寄せ戴いたお客様からのご相談の中に、私共が豊四季では克服出来ず、流山で対策を行って劇的な改善を見た事象に類似するものがあまりにも多く有り、一度まとめてご報告をしなければならないと考えました。
この先原発事故は起こらないのか?
もう二度とこんなことにはならないのか?
この地震国でこれだけの数の原発があるのですから、こういう事態は期間の長短こそあれども、何度でも繰り返し起こるのだろうと私は考えます。
ですので、これらの事象と対策は、今放射性物質と関係が無いエリアにお住まいの方々には、「その時」への備忘録として心にお留め戴けましたら幸いです。
●前提
常時0.3μsv/h超えのエリアは店舗外 南・東・北面。最も強い箇所が南東の角。逆に西面は比較的低い。
事務室:事務室だけ事故後半年は0.6μsv/h超えだったので立ち入らず。事務室の壁の裏に西面水槽壁。
東面水槽壁は震災時半分倒壊(→半年後までに新設)
店舗内は0.2μsv/h以下で概ね安定。
●事故後の処置
・換気扇全停止(2011 3/13夜までに)
・水道水の給水全遮断(2011 3/13~6月上旬迄)
・貯水槽にコバルジン散布(2011/3/13 以降毎月一回)
・給水経路に4段階でフィルターをつけて給水再開(2011 6月以降)
・フィルターは2ヶ月に1回交換
・換気扇再起動(2012 4月)
●飼育管理上で起こったこと
・2011/03~2011/07:新仔のハッチアウト率が微妙に低いように思われた。初めて見るタイプの奇形が有り、事故の影響を疑う。それ以外には目立ったことは無い。
・2011/07~2011/9:外池のメダカに稚魚が居ないのに気が付く。青水の出来が悪く、夏の水管理に非常に苦労する。
・2011/09~2011/11:5月の新仔の育成不良が目立つ。気温が下がり始めたのに水が駄目になりやすい。特に窓に接した水槽が駄目になる。
・2011/12:南面窓に接した水槽に硫化水素が沸く。墨田時代から累代していたバクテリア叢を入れていた西面水槽が駄目になっていることに気が付く。気温が下がりきっているのに窓に接している箇所で次々アンモニアが出る。水温一桁でアンモニア中毒が多発する。
・2012/01:店舗内の水槽のうち、1/3近くがバクテリアが居なくなっていることに気が付く。再度硫化水素が沸く。
・2012/02:南東水槽にバクテリアの移植を試みても、つかない。移植元まで駄目になり始めていることに気が付く。汚染物質の混入を疑い、フィルターを交換したりコバルジンを散布しても変わらない。硫化水素の沸いた槽は何度洗浄しても死菌水槽になってしまう。
・2012/03~04:NG水槽は空にして、バクテリアが居る水槽を大切にするようになる。駄目になった水槽には見たことのないタイプの菌叢が育っていることに気がつき始める。バクテリアのコントロールが効く水槽だけでは圧倒的に収容力が足りない。調整剤等フル活用で対応するが、コストがまるであわない。
・2012/04~06:新仔が全くハッチアウトしない事態が複数発生、奇形発生率は跳ね上がる。5月下旬、断水騒動。
・2012/07~09:青水が出来ない。外池にメダカが一尾も居なくなっていた。要注意水槽を外しているのでアンモニアは前年ほど沸かなかったが、油断(過密飼育)すると一気に沸くことがしばしば。
・2012/10:豊四季店舗を諦める。
●見落としていた点
・濾過バクテリアはベータプロテオバクテリア網に属し、放射性物質への感受性は極めて高い。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=08-04-01-09
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/08/08040109/01.gif
・感受性は大腸菌に類し、菌叢の中で真っ先に死滅するのが濾過バクテリアのグループであること。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/08/08040109/03.gif
・最も感受性の高いバチルスでさえ、有機物が混在する状態では放射性物質への感受性が高まること。
・埃の多い店舗外部にも関わらず、店内の線量が安定していたのは、水とガラスの遮蔽効果だけではなく、ブロアーから吸気された核種が水槽内フィルターに集塵される効果が高かったということ。(移転時、ブロアーを止めたときに判明)
・空中から投げ込み式フィルターまでの「距離」を勘定したとき、水槽の底面が空中にある状態ではγ線核種に対してほぼ距離ゼロであったということ。
放射性物質への対策は全てソヴィエト・ロシアの経験と方針に従いましたので、観賞魚飼育の習慣が根付いていない国であるということが念頭から抜けてしまっておりました。
後から考えれば、水棲菌には放射線への感受性がずば抜けて高いものが多く、この点は非常に悔やんでおります。
●水道水の問題
・事故後、お客様の相談が最も多かったのが、水を1/3程度でも換えると魚が調子悪くなるor斃死に至る、でした。
・2011/03/22にヨウ素が出て以来、水道局では従来の濾過方式を切り替え、人体を守る為に放射性物質を出さない濾過(含む化学濾過)が実践されているとのことです。セシウムは周期表ではアルカリ金属に属し、これを出さない濾過というものは、カリウム・カルシウム・マグネシウムも出ないということになります。
・純水に近い状態のものであるのならば、或いは調整次第で何とでもなるのですが(純水は魚には害毒になります)そこに強酸の塩素殺菌が加えられると、緩衝物の無い状態ですので、水の性質として飲用には耐えても、飼育水としてはそのまま中和しただけではかなり不適になります。
単に金魚を飼育する上で、常時空中からγ線が干渉する環境がどの程度影響したのかはわからないのですが、
・集塵による濾過装置の高度内部被曝
・濾過バクテリア叢の崩壊
・飼育水として不適な水道水の常時給水
この3つの要素が致命的な足かせになったと考えております。
他にも様々な悪い要素はありましたが、この3点だけはどうしても覆しかねる難題でした。
特にバクテリアと水道水は決定打で、本来バクテリアが駄目ならば水道水を割って換水を行うことで、健全な観賞魚飼育は行われます。
双方が駄目になる前提というものが頭の中に全く無く、濾過バクテリア叢の崩壊が濾過装置の内部被曝によってもたらされているという推測に基づくと、全く頷ける事象であると考えます。
非常に長くなってしまいましたので、その2で対策に移ります。
ひとまずお読み戴き、有難うございました。