私たちは親潮系の魚が大好物です。
黒潮系の魚も食べますが、どうにも親しみが薄く、色や形が食欲をそそりません。
同じ魚のはずなのですが、悲しいかな、慣れ親しんだ形のもの以外あまり食べたくないのです。
それはきっと西日本の方々も同様で、
親潮系の魚は回遊魚以外、あまりなじみがなく、食べ物に見えない、という方も大勢いらっしゃると思います。
ピンと来ない方は、プレコの南蛮漬けや、ディスカスの煮付け、ネオンテトラの佃煮などを想像して戴ければ、御理解戴けると思います。
ある意味土着の気持ちで、これが食品の魚だ!と、もしかしたらDNAに刻まれているのかもしれません。

舟が来て、カゴいっぱいの親潮系の近海魚を水揚げする。
丸々肥えて青光りする魚体を見て、刺身にしようか煮付けも旨い、天ぷらも最高だ・・・などと考える。
私たちにとってそれは至福の原風景であったように思います。

原発事故が発生したとき、一部のお客様から海の魚の安全性についてお問い合わせがあり、
非常に残念ながら・・・、と控えめなお話を致しました。
皆様一様に口を揃えて、それは広くはいわないほうがいい、風評被害に繋がる・・・。と。
あの時の気持ちを何と言ったらいいのか?
遠慮と、気遣いと、思いやり?果ては世間体、戸惑いと悲しさ・・・。
そういったものがないまぜになり、喉に砂が詰まったような心持ちになったのをはっきりと覚えています。

海水魚に於いて、体内への放射性物質の移行は、2つの側面より起こります。
一つは餌から。
もう一つは海水そのものから、です。

餌の件は、最近クローズアップされてきましたので、報道等で御存知の方も多いかと思われます。
放射性物質を含んだプランクトンを小魚が食べ、中間捕食者が食べ、大型魚が食べ・・・、
それはイメージに難くない食物連鎖の現象です。
問題は、海水中から直接取り込まれてしまうこと、この点に尽きます。
筋肉(私たちが普段食べている魚の身の部分です)を動かすには、ナトリウムカリウムポンプ、というものが必要です。
単純にいうと、ナトリウムを排泄して、カリウムを取り込む、その果てしない連続で俊敏な動作が可能になります。
セシウムはカリウムと間違って取り込まれてしまう傾向があります。
極端なことを申し上げると、
福島第一原発の汚染水が排出された海域に魚が滞在していれば、即ち絶食していてもセシウムの蓄積は起こります。
つまり、「ただちに」危険だったのです。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000012bpc-att/2r98520000018kif.pdf
此方のP4をご参照下さい。
これは、メジナという魚の体にどうやって放射性物質が蓄積されてゆくのか?を実験した結果です。
①のグラフは、放射性物質の入っていない海水で、汚染餌を与えた結果です。これがイメージしやすい生物濃縮のグラフになります。
②のグラフが、絶食させて汚染水中で飼育した結果です。餌由来の放射性物質は無いものとして、①のグラフよりも吸収スピードが速く、高い値になります。
③のグラフが、汚染水中で汚染餌を与えた結果です。これが実際の汚染海域での蓄積結果に近いものになります。
着目すべきが④のグラフです。
これは30日間の実験結果ですが、①と②を単純に足した数値がこれになります。
④と③の間にある隙間が、排泄行為によって体外へ出された放射性物質の量になります。
これが何を意味しているのかと申しますと、
30日程度の時間では、海水は汚染されただけ、汚染餌は食べただけ、ガンガン魚の体の中に放射性物質は蓄積されて、殆ど排泄されることが無いということなのです。

餌のプランクトンに放射性物質が蓄積してきたから危険、なのではありません。
汚染水の放出が始まった初日から危険でした。


【追記】見ればみるほどpdfファイルは腹が立ちます。INとOUTの勘定は無視して、やっぱり「直ちに」ですか!この言葉どんだけ好きなんですか!「直ちに」の時間定義を教えて貰いたいですね。

私は即座には無理であったとしても、国が親潮系の漁師さん達に何らかの補償や救済策を講じるものだと信じておりました。
いえ、信じたかったです。
しかし、このザマです!

$勝美商店チダイズムさまより。放射性物質の海への拡散マップ

漁業で復興とはどういうことなのでしょうか?
政府は、漁師さん達やそれを食べる消費者のことをどう考えているのでしょうか?
一生分の稼ぎを国及び東電が即座に補填してしかるべきであり、今、船を出させること自体、漁師さんたちの為にもならないことだと思います。

良く聞く言葉が、「俺は別に何食ったっていいよ」と開き直る方が多くいらっしゃいますが、
これらのことを知らされた上でそういうお考えをお持ちなのでしょうか?

勿論暫定基準値の範囲内なのでしょうし、騒ぐ方がおかしいのかもしれません。

私たちにとって魚とは親潮系の魚です。
無償にめちゃ食いしたくなる時があり、こらえがたい時もあります。

放射性セシウムは、カリウムを多く含む食品を一緒にとることで、人体への吸収を最低限のものにすることは一応可能と言われます。
http://vitamine.jp/minera/kari01.html
このあたりが付け合せに最高ですね。
野菜が嫌いな方は、カリウム豊富などくだみ茶など飲みながら戴くと良いと思います。
私たちは、最低限そうやって食べてゆこうと思います。

こういうことを何故国は率先して言わないのでしょうか?
成人であれば、覚悟の上でカリウム含有量の多い食品をつけあわせにすることで、リスクを低下させることは可能です。
今国のやっていることは、いたずらに恐怖を煽り、漁師さん達を苦しめる行為ではないのでしょうか?

現に「風評被害」(この言葉非常に疑問です)で、値のついていない魚も多くあります。

ここからは私たち業界内のお話です。

値のつかない魚がどうなるか?
用途は多様ですが、一部は、
皆様よく御存知のフィッシュミール、日本語で「魚粉」と呼ばれる形で魚の筋肉・特に内臓が、たっぷりとペット用飼料になります。
魚粉については今に始まったことではなく、昔から海の汚染度により、その有害物質の含有率等、しっちゃかめっちゃかでありました。時代によってはそれが食用に出来ないほどのPCB/ダイオキシンであったり、カドミウム、有機水銀等、今でも検出があるものです。今年からはそこに放射性物質が加わります。
ただし、愛玩動物の最上位?にあります犬猫フードへの添加については、各メーカー様、かなり改善されているようですが、
末端ペット(金魚・熱帯魚・海水魚)等への添加は、コストを下げる為に最最低グレードの魚粉が使われているのが実態です。(当然一部商品にはちゃんとしたものがあります)
水産試験場などで使われている魚粉は、国の基準があり、それをクリアしたものを一応使っているので、まあ比較的安全だとは思うのですが、これからの時代はどうなのでしょうか?

ここで飼育者各位が考えて戴きたいことは、餌についてしっかりとした認識を持ち、人間と同じく愛魚に悪いものは食べさせないようにしましょう、ということです。

観賞魚、特に金魚などは、とにかく高蛋白、とにかく早く大きく太らせるを目標に作られた餌が多く御座います。
むしろ、そんなものが99、9999・・・・・パーセントで、正常な飼育者は何を食べさせれば良いかわからないような現状です。
しかし、それが売れるのも事実です。
何故売れるのか?
それは、笑っちゃうほど簡単で、お魚の健康に悪い物でも
メーカーが非常に良い餌のように説明・記載しているからとても需要があるんです。
見せ掛けの蛋白が高ければ高いほど健康に大きく太く育つ、という金魚飼育者の思い込みに付け込んだ飼料は花盛りです。
(ただし、愛魚の将来・寿命などどうでも良く、品評会で勝てれば良い。と言う飼育者は論外です。)

不思議ながら、この業界では、ことここにいたっても何も対策や対応を講じておりません。
話題すら出てきません。
長くなりますので、観賞魚としての魚への放射性物質の害は分けて書きます。

何度も繰り返すようですが、自分の身は自分で守る。
一人一人が立ち上がる。
本当に小さなことでも良いので、実行してゆくことが必要ではないでしょうか?

こういう事を書いてしまうと、じゃあいったい何を食べたらいいんだ?ということになってしまうと思いますが、
それは、政府と東電に聞いて下さい。
私たちもわかりません・・・。
ただ、自分たちは親潮系の魚は好物なので、自己責任でカリウム含有量の多いものとつけあわせて食べようとは思います。