リストの交響詩を二台のピアノで再現する試みの第二集。ブダペスト・ピアノ・デュオ96年の録音です。タッソー-悲劇と勝利、英雄の嘆き、理想の三曲を収録。技術を突き詰めたようなところから出発する音楽です。一番、短いタッソーも二十分近い演奏時間を要します。終曲に至っては三十分近い。オリジナルである交響詩は全部で十三曲あります。交響詩集はいくつも制作されていますが、全曲をとりあげたものは限られています。全体として見ても交響詩「前奏曲」一曲が抜きん出てとりあげられています。それ以外の十二作品が取り上げられる機会は少ないのが実態です。交響詩はリストが創始した管弦楽分野です。標題付きの管弦楽曲であり、歌劇の序曲などに起源を持つものでしょう。一応、自由な形式ということになっています。拡大する楽想。それを展開させる器としての楽曲の形式です。そこに表題という楽想を補完するものがあるわけです。リストの場合、標題といっても文学などに想を借りたもので、直接的な描写は少ないのです。リストには様々な顔がありました。まず第一に挙げられるのがピアニストとしての顔です。作曲家の顔、指導者としての顔、指揮者、評論家としての顔といったものです。当時の新音楽を創造していたリスト。無調の試みを初め新しい響きも模索していました。ベートーヴェンの交響曲をピアノに移すといった試みもリストならではのものです。声楽の入った第九交響曲には難儀することになりました。背景には、ベートーヴェンの交響曲であっても演奏される場は限られたものであったことです。ワーグナーの楽劇を触りだけでも実感できるようにピアノに移されました。ここで壮麗な効果を上げるニュルンベルクのマイスタージンガーの前奏曲といったものはとられていません。リストの顔の一つに啓蒙家がありました。優れた作品のために紹介の労をとるのです。

 

交響詩はピアニストとしてのリストが前面にくるものではありません。タッソーの場合は当初、ピアノ曲としてまとめられました。戯曲の劇伴との要請からの管弦楽編です。さらに何度も手を入れることになりました。大管弦楽を率い、導く管弦楽法も優れていたリスト。管弦楽に発想を移しても、ピアノを基本として発想を辿ることができるものです

 

人気ブログランキング
人気ブログランキング