2020年録音。ヘイス・レーナース指揮のベルリン放送合唱団、ベルリン・ドイツ交響楽団によるイタリアの合唱作品集。ヴェルディの聖歌四篇を中心に、「主の祈り」、ロッシーニの「おお救いのいけにえ」、ヴォルフ・フェラーリ、ボッシ、プッチーニの作品をまとめています。ヴェルディの聖歌四篇は有名な作品です。ロッシーニの曲も「小荘厳ミサ」からの曲です。これもヴェルディに準じて演奏の機会があります。歌劇の国、イタリア。歌劇の中でも宗教的な場面は様々なところで登場します。ヴェルディのレクイエムの中でも歌劇のような劇的な音楽は多く散りばめられています。ディエス・イレを劇的に展開した例として筆頭にあがるものでしょう。イタリアには歌劇にとどまらない歴史がありました。ヴェルディが宗教曲のモデルとしたものの一つがパレストリーナです。ベートーヴェンがミサ・ソレムニス作曲の際にも研究の対象とした後期ルネサンス、ローマで活躍した教会音楽の父です。ローマはカトリックの中心であり、信仰をめぐっての音楽を生み出す中心でもありました。劇場では歌劇が人を惹きつけ、興行的に成功を収めるかが問われます。劇場の依頼を初め、採算面が問われます。ヴェルディが聖歌四篇は異なる作曲の年次も異なるものをまとめたものですが、こうした劇場に寄らない自分自身の欲求から生まれました。歌劇をものにする以前の修学期にいくつかの宗教曲が書かれましたが、多くは散逸しています。レクイエムも聖歌四篇も八十歳を超えて、成功、野心といったものからも遠い。心にかなった作品を手がけるという心境にあったのです。パレストリーナの話が出るのは、ここで用いられている対位法も若き日に修得したものでした。リゴレットの四重唱や、晩年のフォルスタッフを結ぶフーガを代表とする複数の声部を織り交ぜる音楽。聖歌四篇の静的な部分ではこうした対位法の駆使が見られるのです。

 

ロッシーニも若き日に歌劇を書く技術を見にしてすぐに独り立ちしました。ウィリアム・テルを最後に歌劇からは遠ざかります。小ミサやスターバト・マーテルは歌劇から遠ざかって三十年以上を経ての作品でした。こうしたところに信仰がのぞく。イタリア音楽らしく旋律が特徴的です。

 

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