ファビオ・ルイージ、デンマーク国立交響楽団のニールセンの交響曲、協奏曲をまとめたセットから交響曲第四番、第五番をおさめた一枚です。第四交響曲が2022年、第五交響曲が2019年の録音です。デンマークのニールセン。イタリアの指揮者が構築する交響曲は骨格も逞しく、やはり北欧の交響曲そのものの味わいを保っています。特に第四交響曲は「不滅」の愛称で知られる人気作品です。この「不滅」は「滅ぼし得ざるもの​」という訳語が原語に近いらしい​。LP期のマルティノン盤の国内盤に「不滅」の文字がありました。これはベートーヴェンの第五交響曲を「運命」とするのと同様に強い効果があったのです。印象は大きく、作品を意味深いものとして聞くこととなりました。カラヤンの壮麗な演奏もありました。ブロムシュテット、ヤルヴィといった北欧作品を得意とする指揮者による交響曲全集が登場し、交響曲作家としてのニールセンも認知されるようになりました。ニールセン=交響曲作家という評価はデンマーク国外のことです。器楽に限らず歌劇も含めた様々な分野の作品を残しています。世界最古のオーケストラであるデンマーク王立管弦楽団の第二ヴァイオリンとして出発したニールセン。奏者としてオーケストラの中にあったことががニールセンの生活を支えました。オーケストラの楽員としての経験は管弦楽法にも大きな影響を及ぼしています。ニールセンの交響曲認知には北欧のオーケストラが力を付けてきたことがあげられます。北欧の作曲家、シベリウスにも起こったことです。北欧という共通の音楽語法を持ったオーケストラが自国の作品を取り上げるという特別な雰囲気をつくりだします。ニールセンの認知はシベリウスよりは遅れました。ニールセンの生きた時代も、こうした作曲家としての自立も困難な時代でもありました。作家単一楽章の交響曲で、普遍のものを構想する「不滅」交響曲は、劇性、強固な構成、副題にあるような観念といったニールセンらしさが盛り込まれたものとなりました。作曲家として主調を表記せず、多調性を採用。これまでの主調から、各楽章の形式、調性を構成していく伝統的なやり方とは離れたものです。前衛ではなく「不滅」という副題通り、ある種の普遍を志向しています。劇性には大きくティンパニの活躍が関わっています。三管に近い大編成の管弦楽は壮麗で、二十世紀作品としても純度の高い器楽曲となっていました。

 

ルイージは2017年よりデンマーク国立交響楽団の首席指揮者に就任。この北欧のオーケストラから作品への共感を引き出し、熱量が豊富な作品を巧みなアンサンブルで再生します。個々の楽器の魅力もあり、こうした成果は交響曲全体に及んでいます。

 

人気ブログランキング
人気ブログランキング